●AndroidスマートフォンなのにmicroSDカードが使えない!?
ここ数年、AndroidスマートフォンなのにmicroSDカードスロットがなく、microSDカードを使えない機種が増えてきています。

主に10万円以上するようなハイエンドスマートフォンがその対象ですが、中には7月28日に発売が予定されているGoogle製「Pixel 6a」のように、
ミッドレンジの価格帯のスマートフォンでもmicroSDカードが使えない機種も出始めています。

データのバックアップや写真・動画の保存先など、さまざまなメリットがあるmicroSDカードスロットは、なぜ廃止されつつあるのでしょうか。


Pixel 6シリーズの3機種はすべてmicroSDカードを使用できない



●カメラ機能の進化がmicroSDカードスロットを廃止させた
最大の理由はカメラの動画撮影機能の性能向上です。

microSDカードに限らず、ストレージにはデータ転送速度(書き込み速度/読み込み速度)というものがあります。
数年前までのスマートフォンは、フルHD(1920×1080ドット)/60fpsでの動画撮影ができれば十分といった性能でした。

しかしながら、その後急速にカメラ機能が進化し、
・4K(3840×2160ドット)/60fpsのような高解像度撮影
・フルHD/240fpsのような高フレームレートによる高速撮影
このような撮影が可能となってきました。

こういった高度な撮影で必要になってくるのが撮影データの書き込み速度です。
従来の3倍や4倍といったデータ容量を書き込めるだけのデータ転送速度が求められる中、microSDカードによっては条件を満たせないものが増えているのです。

ユーザーもmicroSDカードの購入の際に容量やデータ転送速度を正しく判断する必要が出てきたことで、
・知識がない人はどれを買ってよいか分からない
・適当に買ってみたものの書き込み速度が遅くて高解像度撮影ができない
・4K動画用と書かれたmicroSDカードを買ったのに実際は使用できなかった
このようなトラブルも急増してきました。

そのため、メーカーはデータ転送速度や書き込み動作を保証できる内蔵ストレージのみに限定することで、
知識のない人や詳しくない人でも安心して利用できる方式へとシフトしてきたのです。


商品説明に書かれている言葉を理解するのも大変という人も少なくない(amazon.co.jpより引用



●スマートフォンの中は寿司詰め状態!
もう1つの大きな理由は、スマートフォン内部のスペース確保です。

「増え続ける機能と進化し続ける性能をスマートフォンサイズにどうやって収めるか」

この問題は、年々要求が厳しくなっています。
例えば通信に使われるSIMカード(USIM)は、

・標準規格 → micro規格 → nano規格

このように徐々に小型化され、ついには物理的なSIMカードを必要としないeSIMへと進化しました。これは本体内部のスペースをできる限り確保し、そこに別の機能やより大容量のバッテリーを搭載するためです。

通信の要であるSIMカードでさえこのような経緯を辿っている以上、microSDカードスロットが廃止されるのは時間の問題であったと言えます。


スマートフォンの内部スペースの容積は限られている。そこに何をどれだけ詰め込むのかがメーカーの腕の見せどころでもある



●Androidスマートフォンユーザーはバックアップ方法などの確認を
このほかにも、

・部品価格の高騰などから部品点数を減らしコストダウンを図る必要があった
・写真や動画のバックアップ先としてオンラインストレージサービスの利用を促したい
・より高速な内蔵ストレージの利用でユーザーにスマートフォン本来の性能を体感してもらいたい
・microSDカードの接触不良トラブルやデータ破損トラブルを無くしたい(基本的に外部ストレージ関連のトラブルはメーカーが保証できない)

このような、メーカーとしての利害や戦略、ユーザーメリットに配慮した選択も大きく関わっています。

ユーザーとしても、安価なmicroSDカードでいくらでもストレージ容量を増やせるメリットは捨てがたいものです。
しかしながら一方では、microSDカードを利用しなければ、前述したように数多くのmicroSDカード関連のトラブルを回避できるというメリットもあります。

元々microSDカードスロットがないApple製スマートフォン「iPhone」シリーズのユーザーであればあまり気にならないことですが、Androidスマートフォンユーザーにとっては大きな問題です。

今後、Androidスマートフォンユーザーは、

・microSDカードスロットがない機種へのデータ移行はどうやるのか
・バックアップや写真の保存先をどうするのか

こういった対策や手順をしっかりと確認しておく必要がありそうです。




執筆 秋吉 健