パソコンのキーボードには、ほとんど使ったことのないキーがある。
[Scroll Lock]キーと[Pause]キーだ。
ご丁寧にランプまで付いているので、きっと重要なキーに違いない。この2つのキーは、そもそも何のためにあるのか。不思議なキーの正体に迫ってみよう。

●[Scroll Lock]キーは"昔の名残"のキー、Excelでは便利なこともある?
Windowsパソコンのキーボードには、[Scroll Lock]キーが用意されている。ランプまで付いているので重要そうに見えるが、じつは、完全に昔の名残だけで残ったキーで、現在では、ほとんど役に立たない。

MS-DOSの時代、アプリケーションによっては、画面スクロールを制御する機能が割り付けられていたが、現在では、[Scroll Lock]キーを使うアプリケーションはほとんどない。ただし、唯一、Excelだけは、[Scroll Lock]キーでアクティブセルを固定することができる。

通常、カーソルキーや[Page Up]/[Page Down]キーを押すと、アクティブセルが動いて、その位置に合わせてシートが自動的にスクロールしていく。しかし、[Scroll Lock]キーをロックすると、アクティブセルの位置は固定され、シートだけがスクロールするようになる。ちょうど、マウスホイールを回転させたときと同じ動きをすると思えばいい。

ただし、今、書いたように、マウスホイールを使えば同じ動きは可能なので、あえて[Scroll Lock]キーをロックしてスクロールする意味は、ほとんどない。

というわけで、現状では[Scroll Lock]キーを使う意味はほとんどないので、なくても、たぶん、99.99%の人は困らない。ただ、[Scroll Lock]キーがあるので困った、という話も聞かないので、積極的になくそうという話にもならないのだろう。
実に不思議なキーである。


【画面1】Excelでは、[Scroll Lock]キーをロックするとアクティブセルを固定した状態でスクロールできる。また、ステータスバーの左端に「SCROLLLOCK」と表示される。


●同じく[Pause]キーも……
同じく、[Pause]キーも、現在ではほとんど使われていないキーだ。
MS-DOSの時代は、画面スクロールを途中で停止したり、プログラム実行を中断したりするのに使用されたが、いまでは、利用価値はほとんどない。

[Windows]+[Pause]キーでWindowsのシステム情報を表示できるが、それが便利かといわれると、まぁ、そうですか、という程度で、なくても別に困らない。
というわけで、[Pause]キーもまた、不思議なキーなのである。


【画面2】[Windows]+[Pause]キーでWindowsのシステム情報を表示できる。


しかし、これだけ浮き沈みの激しいITの世界で、ほとんど役に立たないのに生き残っているというのも面白い。
いかに目立たないで生き残るか、という高等戦術のようにさえ見える。役に立たないものが存在してもいいじゃないか、というメッセージなのか? ちょっと憧れる。


井上健語(フリーランスライター)