広島東洋カープ黒田博樹帰還に向け“決断”を下したようだ。

 黒田は在籍するニューヨーク・ヤンキースがプレーオフに進めなかったため、一足早いオフを迎えた。同時に日米記者団が注目したのが去就問題である。
 「来年2月で40歳になる黒田は近年、単年契約を交わしてきました。『現役最後は古巣の広島で』と考えていることは、米国メディアも聞かされています」(現地特派記者)

 そんな黒田は日米記者団に対し、こう答えた。
 「オファーがないと始まらないことなんで…。でも、オファーがあっても、自分なりにいろいろ考えないといけないこともありますし、それは去年以上にというか、例年以上に難しい」

 今さらだが、黒田は人情に厚い男である。メジャー挑戦が明らかになった'06年シーズン、「チームとファンのために投げる」と、渡米を1年遅らせた。米球界で名声を得た今日も「広島帰還=恩返し」の気持ちはむしろ強まっているという。
 「黒田の発言は興味深いものです。まず、『オファーがあってから』と言っているので、シーズンが終了した今もヤンキースが残留交渉を始めていないことがわかりました。『自分なりに考える』と言った点は、ヤンキースが残留交渉したとしても即答せず、広島帰還と天秤に掛けるという意味でしょう」(前出・特派記者)

 エースのサバシア、田中将大が故障離脱し、崩壊寸前のヤンキース投手陣を救ったのは黒田だ。当然、首脳陣も感謝しているが、年齢にシビアな球団である。来季40歳を迎える黒田に17億3000万円(今季)は提示できないだろう。
 「オフになると広島は毎年のように渡米し、黒田と会ってきました」(関係者)

 古巣の思いに応えたい気持ちも強い。しかし、帰還が遅れた理由は広島側にもあったらしい。
 「黒田は野村謙二郎監督と折り合いがあまり良くない。しかし、今オフの広島はチーム改造を行うので、黒田は絶対必要な戦力なんです」(同)

 野村監督は2年連続でのCS進出を果たしたが、5年に及ぶ長期政権で体調を崩しているとの情報もある。昨季、辞任を申し出たが、松田元オーナーがそれを認めなかった。だが、これ以上の続投は難しいというのが周囲の一致した意見だ。
 「緒方孝市・野手総合コーチへの禅譲なら、黒田は帰還に二の足を踏みません。広島の渉外は“野村退任”を伝え、大黒柱として黒田を迎え入れます」(同)

 黒田は将来の監督候補。ようやく三顧の礼が実りそうだ。