夏商戦の「ツートップ」戦略(ソニー、サムスン)に続き、冬商戦ではソニー、富士通、シャープのスマホを「スリートップ」と謳って大々的に売り出すと報じられていたNTTドコモ(以下、ドコモ)。

しかし、10月10日に行なわれたドコモの新製品発表会では、スリートップというキャッチフレーズが一切使われなかった。

これはもちろん、9月20日からドコモが販売を開始したiPhoneの影響だ。ケータイジャーナリストの石川温(つつむ)氏がこう語る。

「今、ドコモの主軸にして最も重要な機種はiPhoneです。そうした状況で、Android機だけを対象にスリートップと表現するのは無理がありますからね」

キャリアからの明確なプッシュがなければ、それでなくても日本では旗色が悪いAndroid機メーカーはますます苦境に立たされる。事実、ツートップからの除外がきっかけで、NECカシオやパナソニックはスマホ事業からの撤退を余儀なくされた。このままAndroid機冷遇が続けば、近いうちに国産スマホメーカー全滅という最悪の事態さえ待ち受けているのではないのか……。

が、その見立てはどうやら早計らしい。

まずドコモは、事前に報じられていた3社のスマホをやはり冬商戦で厚遇しているのだ。

「『ドコモのおすすめスマートフォン』という呼び方ではありますが、販売奨励金を重点投入して他機種より値引き率を高くしており、キャリアとしてバックアップしています」(石川氏)

つまり、主軸こそiPhoneであるものの、Android機内では実質的なスリートップ戦略を行なっているわけだ。

さらにはメーカーの側も、各キャリアへの対応を大きく見直してきている。携帯電話ライターの佐野正弘氏が語る。

「ツートップ戦略の際、もはやドコモはメーカーの国内外を問わず、推す端末をドライに取捨選択する姿勢を明らかにしました。これに危機感を抱いた各社は覚悟を決め、ドコモだけに頼らないビジネスモデルに舵を切ったのです」

例えば、これまでドコモに少し遅れる形でKDDI(au)へ最新鋭機を投入してきていたソニーとサムスンは、今年の冬モデルでは逆にauへ先にフラッグシップ機を投入したのである。こうしたことは反逆行為になるからメーカーはまずやらなかったし、ドコモの側もそれを絶対に許さなかった。

「ですが、今や、生き残りをかけた各メーカーの全方位外交が始まっているのです」(佐野氏)

そして、Android勢にとって致命傷だとみられていたドコモのiPhone導入は、むしろ追い風となりそうなのだという。

「国内大手3キャリアがいずれもiPhoneを扱うようになり、各キャリアとも他社との差別化を図りにくくなりました。iPhone1機種に賭けているソフトバンクモバイルは別として、ドコモとauはこれから通信品質やサービスに加え、Android機の品ぞろえで個性を出していく必要があります」(前出・石川氏)

ことにチャンスを迎えているのが国産メーカーだ。

「携帯端末にさほどの知識はないけどスマホが欲しい、という日本のライトユーザーの間で、国内メーカーに対するニーズは依然として高い。その上、このところのiPhoneはモデルチェンジしても驚きを与えられなくなっていて、世界的に見れば勢いは下落傾向。もし、ここで画期的なスマホを提案できれば、日本でも海外でも一気にシェアを拡大できる好機なのです」(前出・佐野氏)

災い転じて福となす。国産メーカーから、iPhoneに取って代わる次世代端末が発表される日も遠くない?