[画像] ザックジャパン、同じ課題で敗戦

【橋本明(ノヴィサド)の視点/セルビアに完敗した日本。“花試合”の雰囲気もあったが、またも露呈したのはこれまでと変わらぬ課題だった……】


この一戦にかける両者の温度差は大きかった。ザックジャパンにとっては、ワールドカップに向けた貴重な強化試合。だが、ブラジル行きの切符を逃しているセルビアにとっては、現役引退が決まっているスタンコビッチの代表最多出場記録を更新し、英雄に箔を付けさせること以外に意味の少ない“花試合”だった。

試合開始から9分後には突如レフェリーがプレーを中断。両チームがセンターラインに沿って列を作り、ピッチを去るスタンコビッチを全員で見送るというイベントまで設けられていた。日本代表は、およそ真剣勝負とはほど遠い空気のなかで戦わなければならなかった。

これもアウェイの洗礼の一種と言えばいいのか。香川真司が「引退試合という雰囲気は確かにあった」と振り返ったように、集中力を高めて臨むのは難しい試合だった。この日の日本代表は序盤にミスが目立ったが、それは引退試合の、のどかなムードに影響された部分もあっただろう。

ただ、そのなかでも日本は徐々にリズムをつかみ始め、アタッキングサードまでボールを運ぶ回数も増えていく。最初にビッグチャンスを迎えたのも日本。30分、本田圭佑のパスから長谷部誠がダイレクトで守備ラインの裏にボールを出すと、2列目から飛び込んできた香川がシュート。惜しくもGKのセーブに阻まれたものの、見事な連携だった。ザッケローニ監督も「試合開始数分で、徐々にうちのペースとなり、ウチの方がボールをキープする時間が長くなったし、チャンスを作ったと思っている」と試合運びには手応えを感じていた。

しかし、先制したのはセルビアだった。58分、セットプレーの流れからバスタがシュート性の強いボールを出すと、タディッチがきちんとボールを収めてゴールネットを揺らした。「主導権を握っていた時間帯もあったけど、そこで点を取れないとこういう結果になってしまう」とは長谷部誠の弁だが、決めるべき時に決めないと勝てないというサッカーの格言をなぞるかのような展開になってしまった。

日本はなんとか追いつこうと攻勢を強めようとするが、リードを奪って落ち着いたセルビアをなかなか崩せない。相手ゴール近くまではボールは運べても、セルビアも要所は押さえてくる。逆に試合終了間際には前がかりになったところでカウンターから2失点目を喫し、万事休すとなった。

ここぞという場面でしっかりと決められるかどうか。極めてシンプルなポイントだが、それが両チームの明暗を分けた。ザッケローニ監督も「いつものようにチャンスの数にゴールの数が結びつかなかった。逆にセルビアは、ファーストチャンスをゴールに結びつけた。そういった中で、今日の試合を通じて課題は明確になったと思う」と唇を噛んだ。

またも解決できなかった「決定力不足の解消」。しかも人数が揃っていても失点は重ねてしまう。8カ月後のワールドカップで勝ち進むためには改善していく必要があるが、もう時間は少ない。課題が見つかることを成果としては間に合わないのだ。ベラルーシ戦では見つかった課題を解決できるのだろうか……。