集合住宅に暮らすとどうしても気になるのが、近隣住民の音。水まわりの音、足音、ドアを閉める音などの生活音から、防音対策がなされていない部屋での楽器音や連日の飲み会での騒音など悪質なものであります。今回は、日々の生活音を少しでも軽減するために知っておきたい物件の「構造」について“不動産・住生活”のプロに伺いました。

Q.音が気になるタイプなんだ…… 木造、S造、RC造、SRC造どの構造がいいの?

A.遮音性を重視するなら、RC造やSRC造を選ぶようにしましょう。ただ、RCやSRCだからといって遮音性が万全というわけではありません。音の伝わり方は工法、間取りや床・壁の厚さと構造、建物配置、生活スタイルにも影響を受けます。マンションやアパートなどの集合住宅では、全く聞こえないわけではないので、生活音にはお互い気を配りたいものです。

■SRC造、RC造、S造を理解しよう!

RC造は鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)の略で、コンクリートと鉄筋を組み合わせてつくります。SRC造は(Steel Reinforced Concrete)の略で、鉄骨の骨組みにコンクリートと鉄筋を組み合わせたものです。RC造やSRC造は、現場で鉄筋を組み(SRCは鉄骨も中に組み入れ)、外側に型枠をつくり、そのなかにコンクリートを流し込んでつくります。SRC造は強度があるため、高層や超高層マンションに用いられています。この二つの工法は、他の工法より強度や耐震性、耐火性、遮音性に優れています。

このほかにS造(鉄骨造、Steelの略)というものもあります。S造はさらに軽量鉄骨と重量鉄骨に分けられます。強度や遮音性からいえば、軽量鉄骨よりも重量鉄骨のほうが優れています。しかし、賃貸物件では、軽量鉄骨造か重量鉄骨かは明記していない場合が少なくなくないでしょう。また、S造は、木造と比べると耐火性や耐震性には優れていますが、遮音性を重視するのであれば、やはりRCやSRCがよいでしょう。RCやSRC、S造、木造などのほかにメーカー独自の工法で建築されているものもありますが、やはり遮音性重視ならばRCかSRC造にしたいものです。

■音に神経質な人には、分譲タイプのマンションがオススメ

一方で、隣や上下階の音の響き方は、隣の部屋の壁や床の構造、それらの厚さにも関係します。たとえば、RCやSRCの最近の分譲マンションでは、隣との境の壁の厚さは20センチ前後が主流。一方で厚さだけではなく、構造にも影響されます。また、RC造であっても、コンクリ―ト壁の上にボードを張り付けた二重壁の場合、一概には言えませんが、クロスと壁の間に空間ができ、音が太鼓のように反響するかもしれません。残念ながら賃貸物件では建築時の図面を見せてもらえる可能性は低く、隣との壁の厚さなどの構造や工法も教えてもらえない場合が少なくありません。

そこで、音に神経質な人は、「購入した人が住むためのものとしてつくられた分譲タイプのマンション」(購入した人が住まない投資用ではない)を借りると音の問題が回避される可能性が高まります。さらに、フローリングであれば、床にカーペットを敷くことで、音の気になり具合は軽減されるでしょう。上階の音が気になるなら、自分で直接言うよりも、まずは管理会社の方に相談し、注意してもらう方が懸命です。また、上階の方の音がそもそもいない最上階に住むのも一つの手です。

集合住宅ではどのような「構造」を選んでも完全に音を聞こえなくすることは不可能ですが、部屋を決める前に、「構造」についての知識を持ち、少しでも音の気にならないお部屋を選びをしましょう。

高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『最高のマンションを手に入れる方法』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。