9月29日投票の大阪府堺市長選をきっかけに、「橋下・維新」崩壊のカウントダウンが始まる?

全国紙の大阪府政担当記者が解説する。

「大阪都構想は橋下徹共同代表(大阪市長)が率いる日本維新の会が掲げる公約のいわば“一丁目一番地”です。ところが、再選を目指す現職の竹山修身(おさみ)市長(63歳)はこれに反対の立場。大阪府と政令指定都市である大阪市、堺市を再編してひとつに統合するというのが大阪都構想ですから、竹山市長が再選されたら、このアイデアは間違いなく頓挫する。そうなれば、橋下・維新は立党の大義名分をなくしてしまう。その先に待つのは維新の崩壊です」

そこで、維新は竹山市長の再選を阻止すべく、刺客を送ることにした。それが大阪維新の会副幹事長で堺市議団幹事長の西林克敏氏(43歳)だ。

実は、橋下氏と竹山市長の間には浅からぬ因縁がある。

かつての橋下府政がスタートしたのは2008年2月のこと。そのとき、府知事になったばかりの橋下氏を支えたのが、大阪府政策企画部長だった竹山氏だった。

ふたりは意気投合。府庁を辞め、翌年の堺市長選に出馬した竹山氏を橋下氏は手弁当で支援したのだ。

「当時、竹山さんの知名度はゼロ。それでも当選できたのは、当時80%超の支持率を誇っていた人気者、橋下さんの応援があったからなんです」(ある堺市議)

ところが、その恩も忘れ、竹山市長は大阪都構想反対をブチ上げた。裏切られた思いの橋下氏だけに、「応援する人を間違えた。もう徹底的に対決する!」と、お得意の“口撃”はエスカレートするばかりなのだ。

一方の竹山市長も負けていない。「維新を堺市から駆逐する!」と、激しく火花を散らしている。なぜなら、「裏切り者」呼ばわりされようとも、竹山市長サイドにも譲れない事情があるからだ。


前出の堺市議が続ける。

「堺市には大阪市と大阪府のように、博物館や図書館がいくつもあるというような二重行政の弊害はない。しかも、堺市は06年4月に、周辺自治体を合併して政令指定都市になったばかり。せっかく大きな権限や財源を手中にしたのに、大阪都に再編されれば、それをみすみす手放すことになる。大阪府が約5兆円、大阪市が約3兆円も借金を抱えている点も見過ごせない。堺市は懸命に行政改革をして黒字ですから。これでは竹山市長が、大阪都構想に参加しないと表明するのは当然です」

さて、気になるのは堺市民の反応だ。どちらの候補を支持する声が多いのか? 市内のショッピングセンターに出かけ、50人のおばちゃんに聞いてみた。

その結果は、竹山市長支持が15人、西林氏支持が7人、未定が28人で、竹山市長が西林氏をダブルスコアで圧倒している!

しかも、西林氏支持の理由が「なんとなく」「橋下さんが好きだから」というボンヤリとしたものなのに比べ、竹山市長支持の理由は「堺市は黒字で税金も安い。なんで借金だらけの大阪都に参加せんとあかんの?」「堺は商人による自治都市として、歴史の教科書にも載るほどの町。その名前を消したらダメ!」など、かなり具体的。現時点では橋下・維新の勝ち目は薄そうなのだ。

さらに、ここにきて橋下代表にとって、ダメージとなる試算が。

田中丈悦(たけよし)堺市議員(無所属)が明かす。

「8月9日、大阪都構想を話し合う法定協議会に松井一郎府知事らが資料を提出しました。それをもとに私が試算したところ、二重行政によるムダを省いて得られる実質的な経済効果は最小で97億円、最大でも337億円にとどまることがわかったんです。橋下さんは当初、統合効果を年間4000億円とブチ上げ、そのお金をJR新大阪駅と関空を結ぶリニア新線の建設費用などに回し、大阪を成長させると言っていました。わずか300億円ぽっちの金額では、とても想定どおりの成長戦略は描けない。大阪都構想は9月29日の堺市長選の結果を待つまでもなく、すでに破綻したと考えるべきでしょう」

なんだ、大阪都構想って当初の試算そのものが粉飾だったのか? これでは堺市長選に勝利したとしても、府民からのブーイングは確実。維新に明日はない。

橋下代表はこのガケっぷちをどう乗り切るつもりなのだろう。

(取材/ボールルーム)