円安が進む裏で、韓国ウォン高が深刻化している。昨年9月時点では、100円=1400ウォン台だったレートが、1172ウォン(3月18日現在)まで跳ね上がっているのだ。もしや、あのサムスンも日本の家電メーカーのように凋落する……なんてこともあるのだろうか。信州大学経済学部の真壁昭夫教授は、韓国経済への影響をこう指摘する。

「今やアップルを抜いて世界最大のメーカーになりつつあるサムスンは別格ですよ。しかし、今のウォン高が続き、ビジネスモデルが現状のままでは、トップの座を維持できるのはせいぜい5年……。すでに中国のファーウェイやZTEが台頭してきている。かつて日本の企業が韓国や台湾の企業に追いかけられたように、韓国のトップ企業は中国やベトナムの企業に追いかけられている。韓国の縫製工場などはすでにダメになっているし、造船は中国へ移ってしまった」

さらに、真壁教授がウォン高で危うくなる大企業として挙げたのは、トヨタと肩を並べると言ってもいいくらい売れている現代自動車だ。

「現代自動車は、日本のようにハイブリッドの技術を持っていないし、特別に何か新しい技術があるわけではない。ただ一般車を安く造っているだけです。ウォン高で韓国車が高くなれば、魅力は半減する」

ほかにも、ウォン高の影響は思わぬところに影を落としている。

「昨年後半から、K‐POP系アーティストの日本進出が激減しています。PSY(サイ)の全米ヒットもあって、マーケットの規模が大きいアメリカ進出に力を入れているようですが、ウォン高のせいでこれまでのように日本で稼げなくなったのが本音でしょう」(音楽誌記者・S氏)

確かに、あれだけさまざまなK‐POPグループが日本に上陸していたのに、最近はさっぱり新しいグループを見ていない気がする。

「現在の韓国の経済環境を考えると、これまでのような高成長は難しいことは確か。格差も埋まらないまま、主力の輸出産業が縮小すれば、国内世論はさらに厳しくなる」(真壁教授)

大統領就任早々、崖っぷちに追い詰められるのは気の毒な気もするが、数年後、朴大統領が竹島に上陸して国民の人気取りを試みる……なんてデジャビュが起きないことを祈りたい。

(取材・文/鈴木英介、撮影/高橋定敬)