――アクション監督の諸鍛冶さんから「スタントマンを立てずに、ほとんど自分たちでやらせてしまって申し訳なかった」というコメントを頂いています。アクションシーンの撮影についてのエピソードを教えてください。

松田:特に大変だったのは、則天道場のシーンでの殺陣かな。雪だし、屋根に登ったりしなきゃいけなくて。それに、ワイヤーも何もついていないのに、屋根のぎりぎり縁で飛び蹴りして欲しいとか…。プレッシャーはすごかったですね。

大泉:台本読んだ時に「出来るのか? 『007』じゃないんだから!」って思いながら読んだんだけど、割とその通り忠実に撮ったよね(笑)。

――則天道場で闘うシーンは、屋根から人がたくさん落ちていましたよね。

大泉:マットがないところにスタントの人たちが落ちていったね。しかも、新雪じゃなく、明らかに固められた堅いところに落ちてて。「大丈夫なんですか?」って聞いたら、笑って「大丈夫、大丈夫!」って。ツバ吐いたら血が混じっているのに、ゲラゲラ笑っている。スタントの人たちって、辛いシーン程、笑ってるもんな。

――スタントマンの方を心配するなんて、大泉さんは、すごくスタッフを気遣っていらっしゃるのですね。

大泉:そりゃ気遣いますよ。結局、僕らが殴ったりすることよりも、それを受ける人がどれだけ上手に受けるかによって見え方が全然違うから。「ありがとう」という感謝の気持ちでいっぱいです。

――松田さんが運転するスノーモービルに乗って逃げるシーンのアクションもすごかったですね。

大泉:ジャンプしてるしね!

松田:映像では割と普通に見えるけど、スノーモービルでジャンプって結構大変なんですよ。こんな重い車体が浮くってね。

大泉:すごく重たいんですよ、本当に。撮影の合間に遊びで乗せてもらったけど、こんなに舵が効かないのかとびっくりでした。それで、ジャンプしていた龍平くんは、きっと怖かったんだろうなと思いました。

松田:大泉さんは、体感する前までは「もうちょっと真っ直ぐ走れないもんかね」とか後ろから散々言ってましたね(笑)

――乗ってみて運転の難しさが分かりましたか?

大泉:乗ってみて、分かった。あんな危ないものに、しかも素人の運転で僕は乗っていたのかと思ってさらにゾッとしました。しかもジャンプしていたのか!と思って(笑)

――話はかわりますが、劇中では、現代とは違うハードボイルド的恋模様がありますが、「これが女性とのハードボイルドな接し方だ!」というものはありますか?

松田:聞きたいですね。

大泉:いや、君も語りなさいよ。

松田:(笑)。大泉さんは知っていそうな気がしますね。

大泉:この映画は、すごくハードボイルドな感じがして、探偵と言えばやっぱり「恋」だと思いました。この映画の前に、札幌の探偵事務所に入門するっていうバラエティの企画がありまして、その時に、「探偵にとって大事なことは何か?」と聞かれました。そこで、「もちろんそれは依頼人と恋に落ちないことでしょう」と言ったら、「全く違いますね」って(笑)。「依頼人と恋に落ちることなんて考えたこともない」と言われて。僕がイメージする探偵と違うと思って「じゃあ何が1番大事なことなんですか?」と聞いたら「法律を遵守することです」と。「なんだ、そんなつまらない!」と思いました(笑)。本当の探偵は、もっと普通で危ない目に遭ったこともないらしいです。

――実際、「探偵」と「恋」はそんなに関係ないんですね。

大泉:探偵と言えば依頼人と恋に落ちると思っていたんだけど、そうじゃなかったみたいで(笑)。えっと、それで、何聞かれていたんだっけ?

――「これが女性とのハードボイルドな接し方だ!」ということなのですが(笑)

大泉:やっぱりハードボイルド的な恋といえば、洒落たバーで飲んでいて、美味しいお酒を飲んでいるところに「お隣いいかしら?」と聞いて座ってきたイイ女がいて「なんだ?コイツは?」と。その女と乾杯したことは覚えているけど、次起きたら煙たい朝で、飲み疲れていてその女との記憶がない。朝起きたら特にそいつがいる訳でもないんだけど、飲みすぎて頭が痛い。頭を抱えながら洗面所に行ってみたらルージュで「素敵な夜をありがとう」と伝言が書かれていて、そこからその男の日常が一変してしまう、みたいな。誰かにつけられている的なね。それこそやっぱりハードボイルドだと。長くなりましたけど、書ける範囲で書いてちょうだい。僕のイメージする探偵ですよ。
※上記、大泉さんのコメントを「そのまま全部」書きました。


松田:大泉さんがイメージする探偵は、今回の探偵と近いですね。

大泉:僕のイメージする…そうかもしれないね。恋とかね。