出版について理解を深めるあおい(26)
「なるほど。つまり、出版社の役割って、本という『モノ』を作るだけじゃなく、ISBNコードを取得したり、取次とやりとりをしたり、作った本を書店に並ぶようにすることなのね」
あおいが一気に理解を深めたようだ。

「そう。出版計画とか流通計画とか、出版社の戦略の真骨頂ね。
 2つの出版形態の違いについては前回説明したけれど、自費出版にも流通の面でいろいろな種類があるようね。同人誌のように小ロットの印刷だけ請け負う形から、きちんと全国の書店に本が並ぶ、という形まで。
 特に、本が書店に並ぶ、という部分は、作り手にとって一番見えにくい部分。でも、未知の読者の手に届く、という出版の本来の形を期待して自費出版する方も多いから、実際、自費出版に挑戦しようとする人の多くが最も不安に思う一つみたい。『本当に自分の本が書店に並ぶのか?』って…」
以前、聡美も同じように不安を感じていたのだ。

「聡美さんは、その不安、どう解消したんですか?」
タケシがいぶかし気に聞いてくる。

「私にとっては、配本される書店のリストをもらえたことが大きいわね。
 余談だけどね、その本屋に出掛けてってちゃっかりチェックしちゃった。もちろん、ちゃんと並んでた(笑)。
 あとね、偶然、それを手に取って、買おうか悩んでたお客さんを見たとき…、感動したなぁ〜。結局、買われなかったけど…(苦笑)」
リアルな話が続く。

「本が出来るまでと、出来てからの両面を知れると、なんか、私にもできるかも、って思えちゃうなぁ☆
 確かに、誰でもできることではないかも知れない。
 でも、ブログやSNSを楽しんだり、絵を描いたり写真を撮ったり、それこそコメント一つにしたって、世の中に表現は溢れているのに、なぜか出版って遠いイメージだったから不思議だわ」
あおいの目がキラキラしている。


後輩思いの聡美(29)
「そうね。あとは、編集者の存在を忘れちゃいけないわね。
 私のつたない原稿も隅から隅まで読んで丁寧にアドバイスしてくれたし、どうしても自分には重荷に感じて、何度も挫けそうになったんだけど、励ましてくれたりね。教えてくれる出版界の知識や裏情報も興味深かったけど、二人三脚で一緒に物作りをしている、っていう感覚が、とても心地よかったなぁ。
 自費出版って、独りってイメージがあったんだけど、私のは全然違ったなぁ」
聡美の目もあおいに負けずにキラキラしてきている。

「良い編集者に巡り会えたんですね〜。
 なんだか、出版のことがわかってくると、本を出すということの敷居がどんどん下がって感じます。
 聡美先輩を見習って、私のファッションブログ、本にしちゃおうかしら〜?」
目を輝かせるあおいに、横からタケシが

「あおい、聡美先輩はラッキーだっただけだと思うよ。
 自費出版なんて、やめておいた方がいいゼ…!」
いつになく強い口調に、目を丸くするあおいと聡美。
タケシが、そこまで言い放つ真意とは…。

第5話につづく)

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