読書の秋、真っ盛り。
秋の夜長こそ、新しい本に挑戦しようという読書家たちでどの書店も賑わっている様子です。
一方で、読書は読み手だけのものではなく、むしろ書き手、つまり作家への登竜門だという考え方も一般的ではないでしょうか。
有名作家の書斎は、本の海であることが常だし、文章力修業で最も重要なことが読書、というのも古今東西で言われていることでしょう。読書によって得られた知識や刺激された感性が、新しい表現を生むという構図なのかもしれません。アルファブロガーと呼ばれる方たちが、知的資源を多く提供する背景には膨大な読書量があったりするわけです。

さて、連載物語「わたしが本を出した理由」も第3回目。
今回は、人気ブロガーで読書を愛好する聡美(29)が自身のブログを出版するに至ったその核心に、後輩のタケシ(28)・あおい(26)が迫ります。

「わたしが本を出した理由」は、大学の演劇部時代の仲良し3人組、聡美(29)・タケシ(28)・あおい(26)が、日々の生活の中のふとしたきっかけから、あることに気付き、挑戦していく姿を描いた、サクセスストーリーです。

聡美(29)・タケシ(28)・あおい(26)のプロフィール




公園にやってきた、
聡美・タケシ・あおい
公園にやってきた、聡美、タケシ、あおいの3人。

世界で最もブログが書かれる国は、日本なんですよね」
と切り出すタケシ。いよいよ、聡美のブログ本出版の真相を聞き出そうとしているのがよくわかる。

「あぁ、それ、昨年のデータですよね。
 世界のブログの中で、日本語ブログの投稿数が一番多かった、っていうアレですね」
あおいは、自身のファッションブログが好調で、そういう情報も自然に吸収しているようだ。

「日本語ブログが多い裏付けや、そもそもこのデータの精度とか解釈はいろいろあるみたいだけどね。ただ、元来、発信欲・表現欲、物作りを美徳とする文化は、この国に強くある、と私は思うのね」
聡美は、大人っぽい冷静な見方をする。

「でも、この前も言ったけど、僕みたいにブログのネタが尽きて、更新が止まってしまっているユーザーも目立つんだよなぁ…。ブログが世に出て6年、ブロガーの世代交替!?…とまでは言い過ぎだろうけど、僕の回りでも、ブログ卒業を掲げる古参ブロガーは多いんです」
ブロガー友だちは戦友でもある。彼らの離脱は実に悲しい、と嘆くタケシ。

「物作り大国・日本といっても、ブログってずっと続くものだから明確なゴールを持ちにくい、という側面もあるわよね」
もっともらしい分析はあおいの得意分野だ。

「なるほど! だから、聡美さんは、卒業記念として出版を選んだってわけっすね!?」
結論を急ぐタケシ。

「きっかけとしては近いわね。でもちょっと違うかな。
 とにかく、出版のことについて調べる導火線になったわね。そもそも、出版には2種類あるっていうこと、とか…」

※2種類の出版形態

日本の出版は大きく分けて2つの形態があります。出版社側の企画・リスク・コストで出版する形態と、著者側の企画・リスク・コストで出版する自費出版です。
前者は、出版社主導で進む形式で、大手出版社のほとんどの書籍はこの形になります。超大物作家でない限り、出版に至る経緯から内容、流通、増刷・絶版の判断まで、出版社の意向が大きく反映されます。
この反対の概念が“自費出版”です。文字通り著者が自腹を切って出版を決断するため、著者のアイディア・意見・意向そのものが本になる形式です。文芸書だけでなく、ブログエッセイや漫画、自分史や闘病記、絵本や写真集など、自己実現の手段として、昨今、注目を集めています。