大学の演劇部時代の仲良し3人組、
あおい(26)・タケシ(28)・聡美(29)
新刊だけで約8万点、既刊を含めて約80万点が流通していると言われているから、全国のたった2万数千の書店では、どうしても取り揃えられないアイテムが出てきてしまうのね。多くの書籍がほとんど一目に触れずに消えていくというのは、何とも切ない話ね。
 出版社も4千社以上あるんだけど、昔から出版業って<机と電話があれば開業ができる>なんて言われていたぐらい参入障壁低くって 、出版不況の現在では各社、メガヒットを狙って、次から次へと色々な本を初版3,000〜5,000部程度の少部数ずつ出す傾向が高まっているのね」

「確かに、出版不況って言葉、よく聞きますよねぇ。でも、そんな荒波の中でも、聡美さんの本が世の中に出るって、やっぱり凄いことですよね!」
あおいは憧れの聡美先輩が印税生活!?って話に、目を輝かせている。

「ありがとう。ただ実はこれ、“自費出版”なの。私が自腹を切って、ブログを書籍化したわけ」

「え…!?」
タケシとあおいは、“自費出版”という聞き慣れない言葉に、返す言葉がない。

「やっぱり…。自費出版って、財テクや英会話といった自分革命の進化系として今、ひそかにブームなんだけど、まだまだ知らない人が多いようね。いま大ブームで120万部を突破した『B型自分の説明書』も自費出版なのよ。初版、たったの1,000部からスタートしたらしいの。これ、意外に知られていない事実だけど」


無邪気なあおい(26)
「えー、そうなんですかー? 私、てっきり売れることを計算され尽くして出たマーケティングの勝利かと思っていたんです」
あおいは何でもストレートに受け止めるその素直さが魅力だ。

「私も最初はそう思ったの。でも、私の担当の編集者が教えてくれたのよ。
 でも、これって、おそらく自費出版じゃなかったら、世の中に出てこなかったかも知れないと思うわ。自費でも出したい、自費でこそ出したい、っていう作者の強い想いが、こうやって世の中を動かす、っていう好例ね。
 とにかく自費出版って、従来のイメージや出版界が抱える課題を打ち破る可能性がある、新しい概念なのよ」
聡美は、先輩風を颯爽と吹かしながら、多少極端でもシンプルな言葉で言い切るから、後輩に人気があるのだ。

「もっと知りたい、自費出版のこと!」
「教えてください、聡美さんが本を出した理由!」
演劇部出身ならではの熱さが、空気を盛り上げる。


聡美は思う。いくつになっても、こういう空間は良いものだ。
もしかしたら、タケシやあおいにも、この想いをわかってもらえるかもしれない。
私が本を出した理由。
彼らにその本音を話してみようと思った。

第2話につづく)

文芸社ビジュアルアート コンテスト一覧

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