マジコン戦線異常アリ?

90年代中盤〜90年代後半は、3D機能を搭載した新世代機が登場するとともに、主要ゲーム機のゲームメディアがROMカートリッジからCD-ROMへと変化するという大きな転換期を迎える。SFCの次代を担ったNINTEND64(以下N64)だけは、従来と同様にROMカートリッジだったが、セールス的に振るわないことからSFCほどマジコン開発は活発ではなかった。それゆえか、マジコンはこの時代は一時的にその影を潜めることになる。海外ではまだSFCが現役機であり、SFCマジコンの需要があったことから、しばらくはSFCマジコンがマジコンの最前線を支えていた。
数少ないN64マジコンのひとつ「DoctorV64」。なんとCDドライブを搭載。
だが、メディアがCD-ROMに変わろうともゲームをバックアップしたいという需要がついえることはない。この頃には非常に高価だが、書き込み型のCD-ROMドライブが登場しており、CD-ROMゲームのバックアップ自体はさほど難しいことではなかった。しかし、バックアップしたCD-ROMがそのまま起動できるほど甘い世の中ではない。当然のことながらプレイステーション(以下PS)やセガサターン(以下SS)といったゲーム機はコピーゲームが起動できない仕組みになっていた。これは製品ゲームのCD-ROMは、CD-Rドライブでは書き込めない場所にシステム情報が書き込まれており、コピーしたゲームにはシステム情報がないため、起動できないというカラクリである。

このカラクリを突破する裏ツールにMODチップと呼ばれる機器がある。MODチップとは「Modification(部分的変更) chip」の略であり、これをゲーム機本体に取りつけることで、システム情報の書き込まれていないバックアップしたコピーディスクでもゲームを読み込めるようになるのだ。しかし、これは前記した「コピー防止プログラムを解除する」機器であるため、マジコンとは異なり国内での販売は禁止されている。入手するには海外のショップから通販で取り寄せる必要があった。

MODチップの取りつけには、本体基盤へのはんだづけ作業が必要で、この作業には高度な電子工作技術を要する。改造に失敗すると本体を破損する可能性が高く、さらに違法改造ゆえにメーカー修理も受けることができなくなる。そのため、マジコンに比べて導入リスクは非常に高くなっている。こちらもSFC時代のマジコンと同様に、マニアのみぞ知る領域ではあるが、メーカーはマジコン以上に対策を講じている。しかし、MODチップは対策が講じられれば講じられるほどそれを突破する技術も進化し、結局はイタチゴッコという状態だった。

ちなみに、PSやSS以降、PS2やPS3、WiiなどにもMODチップが開発され、コピーゲーム起動を可能にしている。繰り返すが、これらは「違法な機器」なので、くれぐれも手を出さないこと。

■携帯ゲーム機ブームがマジコンを活性化させる

90年代末以降、家庭用ゲーム機のメディアが完全に光学メディアに移行したことによって、マジコンの出る幕はなくなると思われた。ところが、まったくもってそんなことはなかった。ゲームボーイ以降、任天堂がシェアを確保し伸ばし続けた携帯ゲーム機・ゲームボーイアドバンスがヒット。続く、ニンテンドーDSも大ヒットを記録し、それに合わせてマジコン開発はSFC時代を上回るほどの賑わいを見せている。また、ゲーム機の性能が大きく向上したため、マジコンもゲームのバックアップとプレイだけではなく、動画や音楽の再生、エミュレータによるファミコンやSFCの起動など、さまざまな付加機能を備えるようになった。また、マジコンシェアの拡大により、高性能、小型化、低価格化が進み、また操作も非常に簡略化された。

複数のゲームをひとつのメディアに格納できるというマジコンの特徴は、携帯ゲーム機にマッチしており、一度使ったら手放せなくなるほど利便性が高い。SFC時代とは異なり、マジコンの解説書がコンビニで堂々と売られていることもあり、その知名度は以前に比べて大きく上がったといえよう。

今後、違法コピーに関する法案がどのように変化していくかは不明だが、ROMカートリッジを媒体としたゲーム機が存在する限り、マジコンは開発され続けるだろう。しかし、何度もいうが、使い方さえ間違えなければマジコンそのものは違法ではなく、むしろゲームライフを豊かにしてくれるアイテムなのである。使い手がモラルを守り、違法なROMファイルに手を出しさえしなければ、必要以上にマジコンが悪く見られることはないハズだ。
もっとも人気の高いマジコン「M3 Simply」。DSのカートリッジと同サイズで、MicroSDをメモリ領域に使用する。
写真:写真一覧

■こちらもオススメ!ゲーム関連ニュース
【電脳遊戯X】ゲーム業界を暗躍する影「マジコン」のルーツに迫る
【電脳遊戯X】「GAMECUBE」VS「Wii」仁義なき同門対決!!
【この夏はゲーム機を究極まで遊び倒す/ゲーム機特集
【電脳遊戯X】あの懐かしいファミコンをもう一度〜♪
【電脳遊戯X】記事バックナンバー

■アキバ系コラムを読みたいならこちら!
カオス通信


案内人:Jackie Lee(龍李)
プロフィール:マイナーのものをこよなく愛する自称マイナリスト。普通が嫌い、曲がったことが大好き。マニュアルは読まない、チュートリアルは嫌い、転んでも泣いたふり。失敗は成功の義母。人類皆義母兄弟。とりあえず日本人。

Copyright 2007 livedoor. All rights reserved.