■サードシングルであり、インディーズ時代のサードアルバム「人生すごろくだべ。」の1曲目にも収録されている「コイスルオトメ」は個人的にも名曲だと思っていて。歌詞の内容はタイトル通りですが、歌詞を書かれているのが女性の吉岡さんではなく、男性の2人というのに驚きました。

水野:「コイスルオトメ」は特に自分の中できっかけになった曲で、いきものがかり3人として何を表現するのか、すごく迷った時期があって。自分が歌うわけではないし、男性だし、自分の気持ちを曲に書いて、いきものがかりで表現してもどうなんだろう?って。いきものがかりとして出すなら、女性の歌詞を書かなきゃいけないと思って、初めて正面から向き合って女性の歌詞を書いてみたんですね。それでライブでやってみたら、女性の方から「自分のこと歌っている様に思った」とか、「好きな人に告白する勇気をもらった」という言葉をもらって、すごく嬉しくて。それまでは、自分の気持ちを曲に載せなきゃいけないという変な先入観があったんですけど、そうじゃなくて、聴いている人のためになればいいんだ、自分はそういうモノをいきものがかりで作っていけばいいんだと。いきものがかりでの自分の置き場所を分からせてくれた曲なんですよね。

■そういう想いで書かれた歌詞を見て、女性の立場として吉岡さんはどう思いましたか?

吉岡:それまでは結構、「僕」という歌詞もあって、抽象的な感じが多くて。ここまで女になりきって書いてきたことはなかったので、最初見た時に「何を考えてるの!?」とビックリして。「運命の人よ、白馬の王子様よ」ときたので、私はこんなことを考えないし、歌えないと思ったんですよ。でも私の気持ちがどうであれ、女の私が歌って、みんなが聴いた時にどう響くかを1番に考えた曲だったので。キーを合わせてパッと歌った時に、みんなが「いいね!」と言ってくれて。私もよく分からないまま歌ったんだけど、「あ、そうなんだ」と納得して。歌詞と自分の共通点というのは、必ず歌っていく内に段々と見付かるもので、初めて本当に人を好きになった時の自分に似ているなぁ、と後で気付いたり。よく、自分よりロマンティックな詞を書いてくるから、普段の2人を知っているだけに、一体どこから出してきてるんだろう?と面白いですね。自分と似ている部分もあれば似ていない部分もあるけど、これでずっとやってきているので、持ってこられた物に対してはすごく受け入れることが出来ますね。

■楽曲の世界の中で、自分とは違う役柄を演じることも楽しめている感じでしょうか?

吉岡:自分そのものであっても全然いいと思うんですけど、そうではない歌詞を歌うこともすごく面白いことだと思っていて。「私はこう思っているの!」という歌を歌うと結構、内にこもってしまう場合があると思うんですよね。だけど、自分と距離があるものを歌うと、ちょっと客観的になれて、その物語や曲そのものを純粋に届けられる良さがあるから。いきものがかりというのは、そういう意味ですごく面白い。3人ともちょっと客観的なんですよね。2人も自分が歌う曲を作っているのではなく、私が歌ってどう届くかを考えているので。私も詞を見た時は色々と感じますけど、歌う時には、今をそのまま出す様にしていますね。アルバム「桜咲く街物語」もずっとそういう気持ちで録ってきました。