[画像] “103万円の壁”引き上げでどれくらい増える?効果は…自民と国民「年収の壁」初協議

自民党と国民民主党が8日、初めて実務者協議を行いました。今後、議論が進むものとみられますが、自民党はどこまで歩み寄るのでしょうか。

【画像】“103万円の壁”引き上げでどれくらい増える?効果は…自民と国民「年収の壁」初協議

■“103万円の壁”悩む現場

国民民主党は“103万円の壁”の見直しを与党に迫っています。

国民民主党 玉木雄一郎代表                             「選挙で掲げた政策、手取りを増やす経済政策を何が何でも実現していきたい」

収入が103万円を超えると所得税がかかることから、アルバイトやパートが収入を103万円以内に抑えようとして、働き控えにつながるという問題。飲食店を営む田口さん。厨房での食材の仕込みに店の掃除、一人で行ったりきたり、目の回る忙しさです。というのも、仕込み作業を担当するはずのパートスタッフが“働き控え”で、シフトに入る時間を遅らせているためです。

海鮮BAR美味屋 田口真理店長                          「1人でやるしかない。朝9時半から(翌朝)4時まで働かないといけない。毎日十何時間働いてる」

現在5人のスタッフのうち、2人が“働き控え”の状態です。

海鮮BAR美味屋 田口真理店長                           「この人は主婦で、子どもが大きくてもっと働きたい。でも旦那の扶養家族になっていて『それ以上はできません』」

午後5時、別のスタッフが出勤すると…。

海鮮BAR美味屋 田口真理店長                          「来てくれた。ありがとう。やっとちょっと座って水飲めるかな」

ただでさえ忙しい年末に拍車をかける103万円の壁。働く側にとっても大きな制約となっています。

パート従業員                                  「もっと働きたいですけど、今“壁”があります。物価も高いし、子育てとかお金かかるし(年収)150万円なら、もっと生活順調になる」

国民民主党は8日、自民党、公明党それぞれと政策協議の初会合に臨みました。なんとか政権運営への協力を得たい与党と、引き換えに103万円から178万円への引き上げという看板政策の実現を求める国民民主党。金額の根拠となっているのは最低賃金です。

103万円が設定された1995年と比べて、今の最低賃金が1.73倍になっていることから、103万円に1.73をかけた178万円に引き上げるべきだと主張しています。

対する与党内には、引き上げの基準を最低賃金で考えるのか物価上昇率で考えるのか整理すべきで、本来なら物価上昇率で考えるべきだという声があります。1995年からの物価上昇は1.13倍。これをあてはめてみると、国民民主党の求める178万円よりも小さくなります。

自民党 小野寺五典政調会長                            「まだ今のところは、今日は意見を聞かせていただいた」■「財源は政府・与党が決める」

いずれにしても、問題となるのは財源です。国民民主党側からも具体的な制度設計は示されていません。玉木代表は財源確保策については「政府・与党が全体の中で決めていく」としています。

国民民主党 中堅議員                               「今はとにかく高いボールを投げ続けることだ」

今後103万円の壁が見直されるとして、年収にまつわる壁は他にもあります。例えば106万円の壁。年収が106万円以上になると、厚生年金に加入することになり、保険料負担が発生します。厚生労働省は、この壁を撤廃する方向で調整に入りました。収入が低くても厚生年金に加入でき、将来の年金額が手厚くなる一方で、現在の手取り額は減るケースもあります。

にわかに議論が進む“年収の壁”問題に、当事者は…。

海鮮BAR美味屋 田口真理店長                        「103万円とか106万円とかじゃなく、制限なしで働きたい方が自分のペースで働いてもらって。うちとしても従業員に良い環境で働いてもらえるようにしたい」■“税金の壁”年収103万円とは

年収の壁には様々な段階がありますが、国民民主党が強く打ち出し議論になっている「103万円」にスポットを当てます。

所得のうち、【基礎控除分48万円】+【給与所得控除分55万円】=【103万円】までは所得税がかからない仕組みです。つまり、103万円までは控除される。

この103万円のラインは物価に合わせて変わってきました。1995年までは物価の上昇に合わせて課税の最低ラインも上昇。1995年からはデフレもあって物価の上昇が少ないということで、30年近く103万円で据え置かれてきました。これが「103万円を超えると働き損」というイメージにもつながってきました。

今回、国民民主党の玉木代表は、近年の急激な物価上昇を踏まえて、課税ラインの引き上げを主張。「178万円まで引き上げる」としています。この額は最低賃金の上昇率1.73倍をもとにしています。非課税の枠が増えることで、これまでの“働き控え”も解消し、「手取りが増える」と玉木代表は主張しています。

では“誰がどれくらい増えるのか?”。税制や社会保障制度に詳しい大和総研の是枝俊悟さんに聞きました。

年収200万円 → 8.2万円減税

年収500万円 → 13.3万円減税

年収1000万円 → 22.8万円減税

学生アルバイトには影響が懸念されます。例えば、親の扶養に入っている子どもの収入が103万円を超えると扶養から外れます。子どもが扶養から外れると、親は扶養控除が受けられず、手取り減になります。(19歳〜23歳未満なら控除額63万円)

一方、配偶者の場合は制度が変わっています。“満額”の控除を受けられるラインも103万円と思っている人もいると思いますが、2018年に150万円まで引き上げられています。(満額38万円。150万円超から徐々に減って201万円超で控除ゼロ)

■消費拡大?“103万円の壁”効果は

いずれにしても減税による恩恵を受けられる一方、国と地方の税収は7〜8兆円減るとされていて、その効果はどうなのか。是枝さんはこう指摘しています。

大和総研 是枝俊悟さん                            「“働き控え”解消には一定の効果はあるが、経済効果には疑問符。7兆円超の大規模減税では、国民に将来の財政不安が広がり、消費の拡大につながらない恐れも。上限178万円は上げすぎでは」

また、国民民主党と協議を進める公明党の岡本政調会長は「所得税だけでなく、色々なところに“壁”が存在する。社会保障・社会保険についても同時に議論していく必要がある」とコメントしています。

社会保険料については“106万円の壁”撤廃の動きもあり、今後の落としどころが注目されます。