いわゆる“103万円の壁”の見直しに向けて、自民党と公明党は12日、初めて国民民主党との3党協議に臨みました。
【画像】“裏金”相当7億円の寄付検討『企業・団体献金』禁止は…自民“政治とカネ”議論開始一方、石破総理に立ちはだかるもう一つの壁が“政治とカネ”の問題です。自民党では、派閥の裏金問題を受けた政治改革の初会合が開かれましたが、焦点となる企業・団体献金の禁止については、党内から早くも消極的な意見が出ています。
■“裏金”相当額 7億円の寄付検討石破茂総理大臣「政治は国民のものである、そういう原点に立ち返って、政治改革と党改革に取り組んでまいります」
56議席を失いながらも第2次政権を発足させた、石破総理大臣。自民党は裏金事件のけじめとして、収支報告書に不記載だった総額とほぼ同額の約7億円を、国庫に寄付したり、能登の地震の支援に充てることを検討していることが分かりました。
■企業・団体献金禁止に消極的新たな組織も始動しました。自民党・政治改革本部の初会合。出席者を前に、総理は政治改革への決意をこう語りました。
石破茂総理大臣「この話には我が党として、我が党がリードする形できちんと結論を出していきたい。野党に言われたからということではなく、自民党が率先して、この問題にきちんと答えを出したい」
野党も主張する旧文通費や政策活動費の廃止について議論するよう呼び掛けます。そして…。
石破茂総理大臣「企業・団体献金がよろしくなくて、個人献金ならいいという考え方ももちろんあろうかと思うが、法改正が必要であれば、それに向け取り組むことも必要かもしれない」
企業・団体献金。立憲民主党など野党は禁止を求めていますが、自民党は消極姿勢を貫いてきました。
政党本部|企業団体献金(政治団体含む)2022年
自民|約25億円
公明|130万円
立憲|約79万円
維新|210万円
共産|0円
国民|約28万円
社民|600万円
直近で、これだけの額が政党に渡っている企業・団体献金。なかでも自民党はケタ違いです。
■自民議員「献金額に上限を」野党から与党に移り、企業・団体献金をもらっている議員に聞きました。
自民党 井出庸生衆院議員「(Q.野党の時から企業・団体献金は何割増えた)選挙がある時に…数百万みたいな金額だと思う」自民党 井出庸生衆院議員
「(Q.どこからどれくらいの金額が)人それぞれだと思う。地元企業から毎月数万円をいただいている方もいれば、建設業とか医師会とかの政治団体・政治連盟から5万円とか10万円とか」自民党 井出庸生衆院議員
「(Q.受け取る際にお願いごとなどをされることはあるのか)団体の皆さんとは意見交換や要望をいただく機会は普段からある。選挙の時に献金を持ってきて『これ頼むよ』という話は全然ない。私は企業であれ団体であれ個人であれ、それ(献金)が政治をゆがめるという指摘があるのであれば、上限規制、金額の上限を定めるのが一番理にかなったことではないか。個人であれ企業であれ団体であれ民意なので」■癒着対策も…残る“献金ルート”
党内議論をまとめるのも、一筋縄では行きそうにありません。
自民党 西田昌司参院議員「(Q.企業・団体献金の禁止は否定的な議論か)そうよ。自民党の中でそんなことやれと言っている人は誰もいない。1人もいない」
企業からの献金は、今から約30年前に一部禁止されています。当時はリクルート事件や佐川急便事件など、政界と経済界の癒着が問題視された時代。1994年以降、2度の法改正を経て、政党の活動資金を税金で補う『政党交付金』を作り、代わりに政治家個人への企業・団体献金は禁じられました。
しかし一方で、政党や政党支部への献金は今に至るまで禁止されず、献金ルートが残っています。
■“献金禁止”へ 野党の足並みは立憲民主党 小川淳也幹事長「30年前に300億円を国民からもらって政党を養う政党交付金制度ができ、その時に企業・団体献金を廃止しますと言ったことが約束です。30年前の約束が30年経ったから反故(ほご)ということでは決してない。政治の信頼回復と石破さんが言うなら、まずそこからやって下さい」
来月1日に行われる党の代表選挙への立候補を表明した、日本維新の会の吉村共同代表も…。
日本維新の会 吉村洋文共同代表「企業・団体献金の禁止。ここが本丸だと思っています。“政治とカネ”永田町の古い価値観・文化、ここを変えていく」
“年収103万円の壁”問題では、単独で与党と向き合う国民民主党。企業・団体献金をめぐっては、野党で足並みを揃えるのでしょうか。
国民民主党 玉木雄一郎代表「各党の意見をすり合わせながら議論を進めていく。それで合意できるんだったら、むしろやりましょうと自民党に迫っていくというのは一つあるかなと」■“焦点”の企業・団体献金とは
企業・団体献金について改めて整理します。
現在、企業・団体から、政治家個人や政治家個人の資金管理団体への直接の献金は認められていません。一方で、同じ企業・団体から政党や政党が指定した政治資金団体、さらに政党支部への献金は認められていて、その政党支部などから政治家個人の資金管理団体へ献金が渡る仕組みになっています。
この企業・団体献金について、野党第1党の立憲民主党は「資金力のある企業や業界の意向に配慮せざるを得ず、政治や政策決定がゆがめられる懸念がある」として禁止を求めています。
一方の自民党は、石破総理は11日の会見で「公的資金の割合が高くなると、政治が国家権力に依存することになりかねない。企業・団体献金も国民からの浄財の一種と捉えている」として禁止に慎重な立場です。
■企業・団体献金“禁止論”に党内は政治部官邸キャップ・千々岩森生記者に聞きます。
(Q.企業・団体献金について、自民党と他の党との隔たりは大きいようですが、石破総理にこの問題の決着点は見えているのでしょうか)
千々岩森生記者「見えていないと思います。石破総理としては、政治とカネの問題を参院選まで引っ張りたくない。早ければ今年中に決着をつけたいのが本音だと思います。自民党内の議論をみると、政策活動費は『廃止』、旧文通費は『公開』、第三者機関の設置を加えた3点セットは方向性が見えてきた印象です。加えて、新たに収支報告書への不記載、いわゆる裏金部分ですが、この約7億円を国庫などに寄付する検討が始まっています」千々岩森生記者
「残るポイントは企業・団体献金です。石破総理は11日の会見で、禁止ではなく資金の流れ、どの企業や団体からいくらがどこに流れたかをガラス張りにするという主旨の説明をしました。自民党内や他の党からは、もし企業・団体献金を禁止したとしても個人献金が残れば、企業や労働組合の人は個人の形で献金するだけで実態は変わらないのでは、実効性はどうなるという声も出ています。いずれにしても、自民党が企業・団体献金の禁止まで踏み込むという空気は感じられていません」