未達成の公約、不透明な予算の使途
過去最多の56人が立候補した今年7月の東京都知事選。8月21日に、今夏に3選を果たした小池百合子都知事(72)へ、2期目4年分の退職手当3504万円(税控除前)が、満額支払われていたことが判明した。11月1日、上田令子都議が、給付実態を自身のブログで公表したのだ。また本誌の取材に対して、総務局人事部制度企画課の担当者も金額、支払い日付に間違いがないことを認めた。
もちろん、退職手当を受け取ることは合法で、都知事の権利である。また都知事以外にも、全国の都道府県知事に退職手当は支給されている。それでも、給付実態を追及した上田都議は「小池氏の退職金の満額受け取りには疑問が残る」と語る。
いったい、何が問題なのか。本誌の取材に応じた上田都議は、「’20年から今年7月まで続いた小池都政2期目の成果を正しく評価する必要がある」と明かした。
「2期目の後半、小池知事は所得制限を外した高校授業料の実質無料化や、1〜18歳の都民に月額5000円を支給する『018サポート』などの給付策を次々と打ち出しました。一見すれば都民の生活に向いた政策に思えますが、“行き過ぎたバラ撒き”だとして、千葉県、埼玉県、神奈川県の3知事が、文科省に『周辺自治体との地域格差が拡大する』と対応を求める要望書を提出しているのです。都議の間では『3期目に向けた選挙対策として、予算をバラ撒いている』ともっぱらの噂でした。
ほかにも都庁第1本庁舎壁面を使用したプロジェクションマッピングにも批判の声が上がっています。2年間で約16億円の予算をかけていますが、本当に必要なのか。批判に対して、小池都知事は『広告を投影させる』と慌てて公表しましたが、観客の多くは訪日外国人で、広告効果があるとは思えません。コロナ禍を経て、都の財政に余裕が出てきたとはいえ、選挙対策やとても必要と思われないような政策に予算を使っているのです」
別の都議も続く。
「’16年の初当選時に掲げた『7つのゼロ』のうち、2期目を終え、ペットの殺処分や待機児童はほぼゼロになりました。しかし、介護離職者はむしろ増加。都道電柱の削減もゼロには程遠い状態です。満員電車や残業の削減など、コロナの影響で評価が難しいものもありますが、2期8年経っても7つ全ての公約の実現は、まだまだ程遠い状況です」
「場当たり的なパフォーマンス」に批判の声
都の条例では、知事の退職手当は条例上の月額給与×在職日数×支給率で決めるとされている。月額給与は、条例では約146万円だ。しかし、小池都知事は’16年の第1次政権時から現在に至るまで、都知事の給与削減を公約の一つとする『東京大改革』を掲げてきた。初当選後、小池都知事は条例を改正し、給与半減を実現させた。以降、小池都政の“身を切る改革”の象徴的な政策になった。
こういった背景に、小池都政2期目の成果を踏まえ、上田都議は改めて「退職金の満額受け取り」の是非を次のように語った。
「言うまでもなく、知事は都政のトップ、責任者です。こうした数々の問題も最終的には都知事に帰趨します。公約も果たされず、疑問が残る政策も多い状況で、果たして満額を受け取ってしまっていいのか……。まして、知事は給与削減を公約に当選しているのです。であれば退職金に関しても、自ら決めた半額の給与を基準に算出するよう条例を改正してもいいのではないのでしょうか。
しかも、今回は都の担当課に退職金額の問い合わせをしてもなかなか答えてもらえず、情報公開請求までしてやっと出てきたのです。1期目の退職金を公表した際に話題となったことで、警戒しているのでしょうか。『東京大改革』では都政の透明化も公約に掲げていますが、逆行しているとしか思えません」
また、小池都知事の月額給与半額の条例改正は、都議にもハレーションを引き起こしている。
「小池都知事が給与半減を決めた結果、知事の報酬が都議より低くなってしまい、それに連動する形で都議の報酬も年収で2割ほど削減されているのです。都議に退職金はありません。小池都知事は退職金の満額受け取りで帳尻を合わせているのかもしれませんが、場当たり的なパフォーマンスに振り回される我々はたまったものじゃない。そういったことも要因で、都知事と都議会はギクシャクした状態が続いています」(前出・別の都議)
前回(’20年)の都知事選では360万票以上を集め、歴史的圧勝を収めた小池都知事。しかし、今夏の都知事選では、勝利したものの前回に比べ得票数は70万票以上も減らす結果となった。3期目となった今期こそ、疑問の声が上がることなく満額の退職手当を受け取れるよう、結果で示してもらいたいものだが……。