オープンAIの「Chat(チャット)GPT」を主体にサービスを提供しようとするマイクロソフトの「アジュール」と、オープンAI以外の様々なAIスタートアップ企業の生成AIを揃え、自由にカスタマイズできるプラットフォーム「アマゾン・ベッドロック」をサービスの中心にするアマゾンの「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」。今年に入ってからの四半期決算を見てみると、生成AIで先行したはずのマイクロソフトの業績の伸びが、年初の市場の期待に届いていない。

 一方の「ベッドロック」は、開発者やクリエイターたちの評判が非常にいい。来期にはいま、各社が開発中の生成AIのベータ版(試作品)が続々と出てくると思われるが、今回の生成AIのような大きなイノベーションでは、情報システムの開発者たちは一つの方法だけではなく、様々な方法を試してみたいと考えるものだ。そう考えると「チャットGPT」をメインに推しているマイクロソフトは分が悪いかもしれない。次の決算で、ポジティブサプライズが出るかどうかが注目点だ。

 そしてアマゾンではもう一つ、マーケットが期待していることがある。前回、24年4-6月期決算では肩透かしに終わった自社株買いの発表があるかどうかだ。5月に空前の規模の自社株買いを発表したアップル同様、もしアマゾンが大きな規模の自社株買いに踏み切れば、それだけで市場に大きなサプライズを与えるはずだ。

 アルファベットの決算の見どころは、同社も自社開発の「Gemini(ジェミニ)」をクラウド・サービス上で提供しているが、それ以上に何と言っても広告事業の業績に尽きるだろう。メタ・プラットフォームズ はAIを広告事業に生かしてすでに収益化に結び付けている。今年に入って消費が堅調なアメリカでは、広告売り上げも本来伸びているはずなのだが、アルファベットの24年4-6月期の決算では伸び悩んだ。それがどう変化しているのか。アマゾンも含めた3社の広告事業の現状も大きな焦点だ。

 GAFAMの残り1社、株価が高止まりしているアップルはどう見ればいいのだろうか。決算で注目すべきは言うまでもなく「iPhone16」の販売状況だが、ひと言で言うと、私は同社の株価は高すぎる、と考えている。同社も「アップルインテリジェンス」を発表し、生成AIを「iPhone」や「iPad」、「MacBook(マック・ブック)」などに取り入れていくということだが、現時点では企業向けニーズが中心の生成AIを、スマートフォン端末で使いたいというニーズが実際にどれほどあるのか、という点に注目したい。

 同社の株価が下がらないのは、4-6月期決算で発表した1100億ドルの大型自社株買いと「アップルインテリジェンス」への期待が重なり合っているためだろう。仮に、24年に入って減収が続いている同社が、今回の決算で増収に転じることがあれば、同社株を保有している多くの投資家が期待しているポジティブなサプライズをマーケットに与えることになるかもしれない。

 株価が高すぎる、ということで言えば、ハイテク大手各社のPER(株価収益率)は高すぎると思われる。エヌビディアは別として、現時点での投資対象としては、「AWS」とネット通販で業績向上が期待できるアマゾン、広告事業が好調なメタ以外は、いったん、ポートフォリオから外すことを検討してもよいのではないかと考えている。これも決算を分析して考えたい。