◆いま有効なのは物色対象拡大とインデックス投資

 では今後の米国株への投資戦略はどのように考えればいいのだろうか。一つは目先を変えて物色対象を拡大し、銘柄を分散していくことだ。いま、AI関連銘柄と言えば、マグニフィセント・セブンなどのビッグ・テック企業の名前がまず挙げられるが、今後はオラクル やセールスフォース 、IBM などの第二勢力へも物色対象を拡大していくことも考えたい。

 さらに目線を変えて、AI関連セクター以外の銘柄を物色するのもいい。例えば、私が最近注目している音楽ストリーミング配信で世界最大手、スポティファイ・テクノロジー は有料会員数が順調に伸びていて、PEGレシオ(PER/一株当たり利益成長率で算出される株価の割安度を測る指標)も1倍以下と、今後の同社の成長性を考えれば手頃な株価水準にある。

 これまで何度かお伝えしたDRホートン 、レナー 、トール・ブラザーズ といった住宅関連も、大統領選の結果がどうなっても確実に成長が期待できる銘柄だ。住宅は実需も期待できるが、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の残高が6兆ドル以上に積み上がっているのを見ても分かる通り、いまの機関投資家、個人投資家の手元資金は潤沢だ。これらの資金が、政策の後押しによって住宅や不動産投資に向かう可能性は小さくない。

 もう一つは原点回帰ではないが、インデックス投資だ。ダウ工業株30種平均、やS&P500株価指数、ナスダック総合指数、フィラデルフィア半導体株指数などの主要指数に連動する投信やETFに資金を分散するのも有効だろう。

 今後、AIが社会に本格的に普及していくステージへと突入する。これは間違いない。とは言え、ITバブルの時もそうだったが、社会を変えるような大きなイノベーションが生まれるときは、物事が一直線に進んでいくわけではない。今後のAIムーブメントの流れを決めるような大きなターニングポイントが、近い将来必ず訪れるだろう。

 現段階ではそれがいつ、具体的にどのような形になって現れてくるのかを読むことは難しい。ひょっとしたら、今回の24年7-9月決算でその兆候が現れるかもしれない。だが、真の意味での本命銘柄が判然としない状況では、特定の銘柄への一点集中は避けるべきだろう。

 幸い、ITバブルと違うのは、当時と比べてはるかにインデックス銘柄が充実していることだ。だから当面は、より視野を広げて個別銘柄とインデックスをうまく組み合わせて資金を運用し、近い将来訪れるだろう大きなターニングポイントを見極め、AI相場第2幕の幕開けを待つのが得策ではないだろうか。

【著者】
今中能夫(いまなか・やすお)
楽天証券経済研究所チーフアナリスト 

1961年生まれ。大阪府立大学卒業。岡三証券、シュローダー証券、コメルツ証券などを経て2005年より現職。1998~2001年、日経アナリストランキングソフトウェア部門1位、2000年、同インターネット部門1位。ハイテク業界、半導体業界を対象にした綿密な企業分析に定評がある。楽天証券の投資家向けサイト「トウシル」で注目企業の詳細な決算分析動画およびレポートを随時、公開中。

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