[画像] 「NHKの受信料は800円以下にできる」 専門家が痛烈批判する理由とは 会長は「とにかく1割下げたので」

「民放と同じような番組を作る意味はない」

 放送番組のネット配信が「必須業務」となったNHKでは、来年度後半をめどに同サービスを始める準備が進んでいる。先頃、そのネット受信料が地上契約と同額の月額1100円に設定されると発表されたのだが、当の局内では驚くべき“蓄財”がなされており……。【前後編の後編】

 ***

【写真12枚】NHK・中川安奈アナの「何も着てない」疑惑の一枚 Instagramには“体のラインくっきり”な「ぴたぴたニット姿」が大量に投稿されていた

 前編【「まるで資産運用ファンド」 NHKの金融資産は約9000億円…「収入と必要経費がトントンくらいが理想」】では、専門家が「上場企業でも、これだけ金融資産をため込んでいるところは滅多にない」とあきれるNHKの資産の内訳、NHK職員の平均給与などについて報じた。

NHK

 削れる部分は削ってこその健全経営である。立教大学社会学部の砂川浩慶教授(メディア論)は、

「『カネオくん』にしても『チコちゃん』にしても、NHKのバラエティー番組はどんどん民放に近くなっていますが、民放と同じような番組を作る意味はありません。本来的には、障害者の方や少子高齢化の当事者の人たちに目線を合わせるなど、経済原則には合わないけれど重要な番組を多く作るべきです」

災害時の報道を軽視

 民放にはない切り口のニュースもまた求められるというのだが、その一方で、

「NHKは2026年度からラジオを再編し、AMを1波減らす方針を示しています。これは大問題で、今回の能登など、激甚災害の発生時には電源が失われ、ラジオが唯一の情報源となることも少なくない。そうした非常時に必要とされる放送こそ、NHKが担うべきものではないでしょうか」(砂川教授)

 さらに、以下のように断じるのだ。

「ハイビジョンの開発などは大きな進展であり、これまでNHKが無駄金しか使っていないとは決して言いませんが、その使途についての反省は圧倒的に足りません。公共放送の役割である災害時の報道が軽視されている現状を見ても、それが如実に表れていると思います」(同)

大雨のさなか、ラジオでトーク番組を……

 実際に、局内の事情に通じる関係者が明かすには、

「例えば朝5時台のニュースにしても、以前は過去の映像の再放送など考えられませんでしたが、最近は前日の『ニュースウオッチ9』の内容が使われることも珍しくない。また先日の関東での大雨のさなか、ラジオでは江戸家猫八の動物鳴きまね芸や釣りのトーク番組を放送するなど、自らの役割に対する意識が希薄になっています。こうした報道の弱体化は全体的なコストカットの影響だと思われますが、視聴者が最も求めている報道番組がそんな状況なのに、別の部分では経費がかさんでいるのです」

 その実例として、

「局内では22年春から人事管理システム『カオナビ』を導入しましたが、組織に全くマッチしないと分かり、早くも翌年からは『タレントパレット』という別のシステムを使うことになりました。もちろん少なからぬ費用が生じています」(同)

「イメージアップに経費をつぎ込んでしまった典型」

 また広告代理店に業務を発注するケースが増えているといい、

「公式サイトなどで配信されている防災ムービー『ばんぜん』は朝ドラ仕立てで、制作を大手代理店が担い、ナレーションには人気声優の津田健次郎さんを起用している。ほとんど周知されていないにもかかわらず、不相応のコストがかかっています」(前出の関係者)

 こうしたコンテンツの外注はNHKの存在意義が問われかねないというのだが、さらには、

「平日午後の報道・情報番組『ニュースーン』にも別の代理店が関わっており、見栄えよく仕上がっていますが、中身は古くさくチグハグ感は否めない。いずれも効果が不明でありながら、もっぱらイメージアップに経費をつぎ込んでしまった典型です」(同)

「受信料は800円より低く下げられる」

 そんな体たらくでは、視聴者から“受信料を返せ”との声が上がるのも無理からぬ話である。放送ジャーナリストの小田桐誠氏によれば、

「NHKの受信料は、ガスや水道と同じく『総括原価方式』で決まります。つまり総合・Eテレ・BS・BSプレミアム4K・BS8Kとラジオの第1・第2・FMにかかる制作費や人件費など年間の支出総額を計算し、それに見合った料金設定をするのです。ただし、これはあくまで表向きの話で、内部留保の額を考えれば、相当に強気の料金設定をしていると思われます」

 受信料収入の減少もあり、NHKは27年度の支出を23年度と比べて1000億円削減する計画を示しているのだが、

「24年3月期の決算では、日本テレビの年間番組制作費は893億円、フジテレビは682億円でした。これらを上回る額を削減してもなお経営が回っていくのだから、NHKには圧倒的な資金力があるわけです」

 とは、前出の砂川教授である。

 昨年度末の時点で、受信料支払い率の全国値は78.6%。先の小田桐氏は、

「現場でも外部スタッフの訪問営業が廃止され、人件費が大幅に削減できています。支払い率がよほどダウンしない限り、受信料は800円より低く下げられると思います」

「とにかく1割下げたので……」

 トップの稲葉延雄会長に、視聴者の負担を減らす意思があるかと尋ねたところ、

「いま還元していますよ」

 と、昨年の値下げを挙げつつ、さらに下げる可能性については、

「そういうことは、いま考えていません。とにかく1割下げたので、それを持続させることが大事だと思います」

 あらためて局に問うと、

「1000億円規模の事業支出の削減を構造改革を進めることで実現し、1割値下げした受信料額を堅持していくことで、視聴者のみなさまの還元に努めてまいります」(広報局)

 前編【「まるで資産運用ファンド」 NHKの金融資産は約9000億円…「収入と必要経費がトントンくらいが理想」】では、専門家が「上場企業でも、これだけ金融資産をため込んでいるところは滅多にない」とあきれるNHKの資産の内訳、NHK職員の平均給与などについて報じている。

「週刊新潮」2024年10月17日号 掲載