[画像] グローバルワーク、売上高「1000億円」へ倍増計画


グローバルワークは郊外のイオンモールなどショッピングセンターの店舗が多い(写真:アダストリア)

売上高500億円から1000億円へ――。

アパレル大手のアダストリアは主力ブランド「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」の売上高を現状の516億円(2024年2月期)から2029年2月期までの5年間で1000億円へ倍増させる計画をぶち上げた。国内は491億円から900億円に、海外も売上高を25億円から100億円へ拡大する。

アダストリアは「niko and ...(ニコアンド)」や「LOWRYS FARM(ローリーズファーム)」など45ブランド以上を展開する大手アパレル企業だ。中でも、グローバルワークは全体の売上高の約2割を占める主力ブランドで、2024年2月期には売上高500億円を突破。コロナ禍前の売上高417億円(2020年2月期)を上回る成長を続けている。


アダストリアの執行役員でグローバルワーク営業部長の太田訓氏は「これまでスクラップ&ビルドを進め、出店を控えていた中でも業績は好調に推移してきた。改めて国内での出店を加速させていく」と語る。

ヒット商品を作り続けるブランドに

グローバルワークはアダストリアのほかのブランドと比べても幅広い年齢層をターゲットにし、職場でもプライベートでも着用できる「きれいめカジュアル」の商品を展開している。

ニットやシャツ、パンツといったベーシックな商品も、トレンドを取り入れたシルエットに仕上げる。シンプルな装いながら、ほどよくおしゃれ感を演出できる点も特徴だ。自社で素材から商品開発を手がけ、ヒット商品を育ててきた。

例えば、レディスの「ウツクシルエットパンツ」は累計販売本数は400万本を超える定番アイテムだ。購入後のレビュー、購入に至らなかったレビューを徹底的に分析。足を入れやすくするために、ふくらはぎ回りを3センチ広げるなど、客の要望を商品開発に反映し、改良を重ねてきた。


ウツクシルエットパンツはテーパード、ワイド、カーブなどさまざまな種類を展開している(写真:アダストリア)

同じくレディスの「メルティニット」も冬の人気シリーズだ。軽くてやわらかい生地を売りに、短めのクロップド丈や、ラメ素材を使用したもの、襟つきの商品など、多くのバリエーションで展開している。

グローバルワークは「客が買わなかった理由」の分析を重視している企業だ。黒がほしかった、サイズ感が合わなかったなどの細かな不満や要望を、接客したスタッフがスマホアプリに口頭で吹き込む。

全国の店舗から集まった顧客の声をAIツールを活用して1週間ごとに分類し「このカラーの要望が多い、こうした不満がある」といった傾向を見つけ、商品開発に生かしている。

都心部への出店を本格化

目下、進めているのは店舗の増床、改装だ。現状の店舗は100坪以下が多い。まずは手狭な店舗を対象に150坪から200坪程度へ増床する。マネキンや商品イメージを伝える写真など、什器や資材を置くスペースを広げること、売れている商品の在庫を多めに持ち、欠品を防ぐなどの狙いがある。

新規出店にも本腰を入れる。これまでは郊外のショッピングセンターなどが中心だった。今後狙うのは都市部の主要ターミナル駅だ。

というのも、グローバルワークは現在、山手線の駅近くにはあまり出店していない。池袋に1店舗出店しているが、徒歩10分ほどのサンシャインシティ内に構えている。

ターミナル駅を対象に駅ビルや駅ナカの商業施設へ出店し、現状の203店舗(8月末時点)から270店まで拡大する。2025年春には銀座で旗艦店も開店する予定だ。

都市部に進出してもブランドのコンセプト自体は見直さないが、売り場面積や立地に合わせて商品構成を調整する。

具体的には着用シーンを広げるアイテムを強化するという。レディスとメンズのフォーマルウェア、10代前半のキッズ向け、レディスのバッグ、シューズなどの服飾雑貨などを、立地や客層に合わせて拡充する考えだ。


売上高1000億円のブランドは少ない

グローバルワークが目指す先には、誰もが知るメジャーブランドの会社がひしめく。業界大手では、セレクトショップ「BEAMS」を手がけるビームスの892億円(2024年2月期)。スーツの「AOKI」や「ORIHICA」を展開するAOKIホールディングスのファッション事業の1000億円(2024年2月期)に匹敵する。


ユニクロは都心のターミナル駅から郊外の商業施設まで広く出店する(撮影:今祥雄)

そして何より、ベーシックな品ぞろえやデザイン、ターミナル駅の商業施設に出店、銀座の旗艦店となると、最大手のユニクロが強力なライバルとして立ちはだかる。圧倒的な調達力、商品力を誇るユニクロとどう差別化し、客を呼び込むかは継続的な課題となりそうだ。

より高い知名度や規模に勝る競合もいる中、強みを生かして売り上げ倍増計画を達成できるか。グローバルワークの挑戦は始まったばかりだ。

(井上 沙耶 : 東洋経済 記者)