向井扮する官能小説家と毎回お取り寄せグルメに仲良く舌鼓を打つ同作の漫画家役は、ちょうど『きのう何食べた?』(テレビ東京、2019年)の内野聖陽が担っているように柔らかな役どころ。「何これ!」とあまりに柔らかな食レポに正直笑ってしまいそうにもなるが、北村と食べる系ドラマ作品との相性は折り紙つきである。

 松重豊主演の『孤独のグルメ』(テレビ東京、2012年)以来、男性俳優、女性俳優問わず、ひとり飯を満喫するドラマ作品は量産されている。玉石混淆の中、北村が仏頂面キャラを生かした、ひとり飯&誰かとの共有飯しっぽり飲み系ドラマ主演作『たそがれ優作』(BSテレビ東京、2023年)は、北村ファンにはたまらない大好物ドラマだったろう。

 その意味でも『おむすび』は、橋本環奈主演の朝ドラではあるけど、もうこれは北村有起哉の食べる系ドラマ作品にしか見えないのだ。

◆北村有起哉推しで見たらめっぽう面白くなる

 第1回の食卓では、結の祖父・米田永吉役の松平健との掛け合いで、さらに北村有起哉の食べる姿がぐんぐん引き立つ。松平の食べっぷりもなかなか魅力的で、毎食、結を挟んで、左右の席に聖人と永吉が座る。この位置関係でちょっとした小競り合いがある。

 第2回の夕食場面。画面奥の永吉が焼酎の水割り、画面手前の聖人がビールをそれぞれ飲んでいる。聖人側すぐ近くのテレビ画面には野球中継が写り、応援するダイエーが点数を取られるごとに、永吉が「かぁ〜〜〜」とひとり声をあげる。

 頭にきた永吉は聖人にテレビを消せと言うが、またすぐにつけろと言う。その都度、ぶつぶつ文句を言いながら、腰をあげる聖人のだらっとしたコミカルさがとてもいい。食卓の中に北村有起哉がいて、彼がちょっと画面の前景で動いてみるだけでドラマ全体が豊かになる。というわけで、北村有起哉推しで見たら本作はめっぽう面白くなる。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu