[画像] 将来的にEV化は避けられないが、それはいまではない…日本製ハイブリッド車の逆襲が始まった!

'30年にすべての自動車をEVに-欧州勢が掲げた目標はやはり無謀なものだった。再び脚光を浴びるのが日本のHV技術である。いずれEV化は避けられないにしても、いまはそのときではない。

前編記事『それみたことか…「世界的EV不況」が進行中!欧州でもトヨタのハイブリッド車が「爆売れ」な「納得の理由」』より続く。

トヨタのHVがバカ売れ

トヨタは米国でも好調だ。国沢氏が続ける。

「米国のEVといえばテスラを思い浮かべる人も多いでしょうが、ゼネラルモーターズやフォードも力を入れています。ただ、ガソリンが安いので、EVの需要はあまりないのが実情です。

そんななか、米国で売れているトヨタ車、カムリが昨年モデルチェンジしましたが、ガソリンエンジン車をやめてすべてHVにしたところ、今年8月の販売台数は前年同月比5割増しの2万5000台です。作れば作るだけ売れる状態。世界中でトヨタのHVがひっぱりダコです」

始まった日本のHVの大逆襲。ただ、長期的に見れば「EV化の流れは間違いない」と多くの識者は口を揃える。

「とはいえ、現時点でEVとHVの環境性能や価格の差を考えれば、'35年くらいまではHVのほうが利便性は高いと考えます。全世界で研究が進められている全固体電池が開発されれば、EVとHVの性能面での差はなくなるはずです。全固体電池は、航続距離が1000キロメートル以上で、充電時間は10分以下とされ、ガソリン車と近い感覚で充電できます。

トヨタの開発で実用化目前まできていると聞いていますが、市場投入は早くても'27〜'28年くらいでしょうか。当初は高いでしょうが、'35年には手頃な値段になっている可能性もあるかと思います。そういう意味でも、'35年以降はEVがようやくメインになってくるのではないか」(獨協大学経済学部経営学科教授・黒川文子氏)

日本でEVが普及しないワケ

翻って日本では、なぜそこまでEVが普及しないのか。昨年の世界の販売シェアを見ると、EVは中国で24%、ドイツでは20%、米国でも8%のシェアがあるにもかかわらず、日本ではわずか2%しか売れていない。カーライフ・ジャーナリストの渡辺陽一郎氏が理由を説明する。

「一番のネックは充電設備の不足です。公共スペースに充電設備が新設される一方、使われていない施設は撤去されていて、この5年間は3万基程度で横ばいです。

大切なポイントは自宅で充電できる人がどれくらいいるのか、ということ。戸建てなら比較的簡単に設置できますが、マンションでは難しい。タワーマンションではほとんどが機械式の駐車場で、十分な数の充電設備を置くスペースも確保できません。何台か設置できても、予約が必要となるでしょうし、大変わずらわしい。HVの次に普及が見込まれているプラグイン・ハイブリッド車(PHV)でも、充電が必要です。そう考えると、HVの強さはしばらく揺るがないでしょう」

さらにEVには将来、下取りに出すときの価格の暴落の懸念もある。

「EVはまだ進化の途上にある技術で、10年後にはおそろしく時代遅れのモデルになっている危険性があります。かつてのパソコンと同じようなもので、10年前のモデルにはほとんど値段がつきませんよね。

一方で、HVは技術的に成熟しているので、10年後でも市場価値をそれなりに維持している可能性が高い。経済合理性だけを考えると、現時点でEVがHVに勝てる要素は見当たりません」(前出・吉田氏)

後編記事『【トヨタ・ホンダ・日産】いま買うならどの自動車がいいのか?実際にディーラーを回って聞いてみた「驚きの結果」』へ続く。

「週刊現代」2024年10月5・12日合併号より

【トヨタ・ホンダ・日産】いま買うならどの自動車がいいのか?実際にディーラーを回って聞いてみた「驚きの結果」