30日からの週は、円安やポンド高とともにドル買いが進行した。ドル円は141円台から147円台まで上昇。先週末の石破ショックの円高相場を解消している。石破首相と植田日銀総裁の初の会談が実施され、利上げについて慎重な姿勢であることが確認された。石破首相は、「現在、追加の利上げをするような環境にはない」と明言した。経済関係閣僚などからも同様の主旨の発言が相次ぎ、日銀の年内利上げ観測は後退した。ポンドドルは1.34台から1.31付近へと下落。ベイリー英中銀総裁が利下げについてもう少し積極的になる可能性を示唆したことに反応した。市場では根強いサービスCPI圧力がECBなどと比べて英中銀の利下げペースを鈍らせるとの見方が広がっていたが、この発言報道を受けて市場は意外感を持って反応したようだ。ただ、金曜日にはピル・チーフエコノミストが持続的インフレ圧力への懸念を示し、さらなる利下げは引き続き可能だが、行き過ぎや早過ぎたりするリスクに注意が必要、とした。インフレに関する見方は分かれていた。ドル全般の上昇には、上記の円安やポンド安に加えて、パウエルFRB議長が利下げを急がない姿勢を改めて示したことが影響した。また、中東情勢が一段と緊迫化していることがリスク警戒のドル買い圧力となる場面も散見された。そして、週末の米雇用統計が想定外に強い内容となったことを受けて、FRBの大幅利下げ期待が完全に後退。ドル円は一時149円ちょうどまで上昇する場面が見られた。

(30日)
 東京市場は、円買いが優勢。ドル円は朝方に142.95近辺まで買われた。石破新自民党総裁が29日に「今の金融緩和の方向性は維持しなければならない」などと発言したことが円売りにつながった。しかし、その後は日経平均が一時2000円超の大幅安となったことからリスク回避の動きで円買いが優勢となり、午前の上げを帳消しにして、18日以来の安値水準となる141.65付近まで下落した。ユーロ円は、ドル円同様に午前にいったん159.65付近まで上昇したあと、午後に円高傾向となり、158.19付近まで下落した。ポンド円も上値の重い展開となり、午後に一時189.67付近まで下落した。ユーロドルは1.1150台から1.1170台での揉み合いが続いた。

 ロンドン市場では、先週末からの急速な円高相場「石破ショック」は一服。ドル円は142円台後半まで買い戻されている。NY後半にかけてパウエルFRB議長が全米企業エコノミスト協会(NABE)で講演を行う予定。注目イベントを控えた調整の面もあるようだ。クロス円も買い戻されている。ユーロ円は158円台前半まで下落したあと、159円台後半へと反発し、小幅に本日高値を更新。ユーロ買いの面もあってユーロドルは1.11台後半から一時1.12台に乗せる動きをみせた。対ポンドでもややユーロ買いの動き。ポンドドルは1.34台乗せ、ポンド円は191円台乗せと、ユーロに連れ高となっている。日本時間午後9時には9月独CPI速報が発表される。前月比がプラスに転じる一方、前年比の伸びが鈍化する予想になっている。市場では10月ECB理事会での25bp利下げを8割弱まで織り込んでいる。ユーロ買いには発表前の調整の一面も指摘される。

 NY市場では、ドル買いの動き。ドル円は143円台後半まで上昇。石破ショックからの反動が続いた。午後のパウエルFRB議長の講演を受けたドル高もドル円の買い戻しをフォロー。議長は利下げを急がない姿勢を改めて示した。短期金融市場では11月FOMCでの大幅利下げの確率を35%程度まで低下させている。ユーロドルは一旦1.12台に上昇していたものの、1.12台に上昇すると蓋を被せられる展開が続いている。NY時間に入って伸び悩み、パウエル議長の講演を受けてドル高で一時1.11台前半まで値を落とした。本日はラガルドECB総裁が欧州議会で証言を行っていたが、インフレ目標達成に自信を示していた。市場では次回10月の追加利下げ期待が強まっている。ポンドドルも終盤にやや伸び悩み、1.33台半ばに一時下落した。ただ、1.34台で上値を抑えられてはいるものの、下押す動きもなく次の上昇気流を待っている状況のようだ。


(1日)
 東京市場では、円売りが優勢。ドル円は前日海外市場の流れが継続し堅調。朝方はイスラエル軍のレバノンへの地上侵攻などを警戒した円買いが入り143.37近辺まで下げる場面が見られた。その後は、株高とともに円売りに転じている。昼前にいったん調整が入るも、午後に入って株が一段高となったことなどを好感し144.41近辺まで高値を伸ばした。ユーロ円などクロス円も同様に円安が進み、ユーロ円は朝の159.75近辺から160.89近辺、ポンド円は191.86近辺から193.24近辺まで上昇。豪ドルは堅調。豪小売売上高が前月比+0.7%と市場予想の+0.4%を上回る伸びとなったことが背景。豪ドル円は100円台に一時乗せた。ユーロドルは1.11台前半で揉み合い。

 ロンドン市場では、ドル円、クロス円が軟調。また、ユーロドルやポンドドルなどドルストレートではドル買いが優勢。ただ、欧州株や米株先物・時間外取引などはやや上値が重いものの、リスク回避的な材料も見当たらない。背景にはECBの早期追加利下げ観測があるようだ。一連の欧州のインフレ鈍化傾向を受けて、昨日のラガルドECB総裁発言では10月理事会での追加利下げの可能性が指摘されていた。これを裏付けるようにきょうの9月ユーロ圏消費者物価速報でも前年比が+1.8%と前回の+2.2%から低下、インフレ目標2%を下回る結果となった。独債利回りが低下、それとともに英債や米債利回りも低下している。ドル円は売りが強まり143円台後半へと押し戻されている。ユーロ円は191円手前まで買われたあと159円台前半へ、ポンド円も193円台前半まで買われたあと下げに転じて191円台前半に安値を広げた。ドルストレートではドル買いの動き。ユーロドルは1.11台前半から1.10台後半へと下落、1週間ぶりの安値水準に。ポンドドルも1.34手前水準から1.33台割れ目前まで下落。

 NY市場では、ドル円に再び売りが強まり、一時142円台に下落した。自民党総裁選に伴う急変は一服していたものの、今度は中東情勢がドル円を押し下げた。イランがイスラエルに対して弾道ミサイルを発射。米政府はイランから200発のミサイルが発射されたと述べているが、イスラエル軍は、多くは迎撃したが一部は着弾したと発表。死者も何人か出ているようだが、米国はイランによるイスラエル攻撃は効果がないと分析している。ユーロドルは戻り売りが加速。一気に1.10台半ばまで一時下落し、本日1.11ちょうど付近に来ている21日線を下抜けた。アナリストからは「ユーロ圏のインフレ低下、中東情勢の緊迫化、フランスの政治的な不安定化を背景に、ユーロの見通しは明るくない」との見解が出ている。フランスについては、財政赤字の目標達成を2年先送りすると発表された。ポンドドルも戻り売りに押され、一時1.32台半ばに下落。
 
(2日)
 東京市場では、円相場が振幅。昼過ぎまでは円安が優勢。中国当局の景気支援への期待から中国買いの動きが本格化。中国市場自体は国慶節で休場となっているが、香港株が大きく上昇、オフショア人民元の上昇なども見られた。ドル円は144.19近辺まで買われた。クロス円も軒並みの円安。特に豪ドル円は朝の98.70付近から香港市場オープン後の急激な円安を受けて買いが強まり、99.60台まで上値を伸ばした。午後に入って流れが急変した。米メディアアクシオスが、イランによるイスラエルへの大規模ミサイル攻撃を受けて、イスラエルが数日以内に大規模報復攻撃を行う計画と報じ、中東情勢懸念が一気に広がった。ダウ平均先物時間外が100ドルを超える下げ、日経平均も下げ幅を広げている。ドル円は143.50台へ急落し、今日の上昇分を解消。豪ドル円は98.70台へと押し戻された。

 ロンドン市場では、円売りが強まっている。この日、石破首相と植田日銀総裁が初の会談を実施、意見交換した。植田日銀総裁は、「政府と日銀は緊密に連携することで一致」「極めて緩和的な状況で経済支えてる状態にある」「経済物価見通しが日銀の見通し通りなら、見極める時間十分ある」と述べ、利上げ姿勢を封印していた。その前に報じられた加藤財務相からも「金利が上がること前提ではなく、適切な金融政策を期待」との発言があった。そして、石破首相が「現在、追加の利上げをするような環境にはない」と明言したことで、円売りが一段と勢い付いている。ドル円は143円台半ばから一時144.86近辺まで急伸。ユーロ円は160円台乗せ、ポンド円は192円台乗せへと上伸。先週の自民総裁選前の水準まで円安が進行しており、いわゆる石破ショック相場を解消する動きに。中東情勢が一段と緊迫化しているが、この時間帯はリスク回避の動きは収まっている。欧州株は高安まちまち。原油相場は引き続き上昇。米債利回りは上昇している。ユーロドルは1.10台後半、ポンドドルは1.32台後半から1.33台乗せまでの振幅が続いている。

 NY市場で、ドル円は146円台半ばまで一段と上昇。自民党総裁選前の直近高値に顔合わせし、リバウンド相場の流れに復帰している。2つの追い風がドル円を下支えしたようだ。1つは、総裁選前は日銀の利上げ姿勢を支持していたと考えられていた石破首相が「現在は追加利上げするような環境にない」と否定的な見解に変化したこと。そして2つ目は、パウエルFRB議長が週初の講演で緩やかな利下げペースを強調し、11月の大幅利下げ期待が後退していることだった。前日はイランがイスラエルにミサイル攻撃を行ったことで、中東情勢が緊迫化している。いまのところ中東情勢については市場も情勢を見守っている状況。ユーロドルは売りが優勢となり4日続落。一時1.1035付近まで下落。ドル買いのほか、市場がECBの10月利下げへの期待を強めていることがユーロを圧迫。短期金融市場では90%超の確率で織り込んでいる状況。ポンドドルも一時1.32台半ばまで下落。21日線が1.3235付近に来ており、その水準をブレイクするか注目される。

(3日)
 東京市場では、ドル円の上昇は一服。序盤には8月20日以来およそ1カ月半ぶりの高値となる147.24付近まで一段高となった。しかし、すぐに売りが出て147円台を割り込むと、午後には146円台半ばまで押し戻された。ポンドは急落。ベイリー英中銀総裁が利下げについてもう少し積極的になる可能性を示唆したとガーディアンが報じ、ポンドが売られている。ポンド円は前日終値から1円以上の円高水準となる193円ちょうど付近まで、ポンドドルは1.3169付近まで急落した。ユーロ円は、東京序盤に一時162.49付近まで上昇。しかし、午後に入りポンド円の急落から円買い傾向となり、午前の上げを帳消しにして、161.50台まで下落した。ユーロドルは軟調。午前に1.1030台までジリ安となったあと、午後にポンドドルの下げからドル買いが加速し、1.1025付近まで下値を広げた。

 ロンドン市場では、ポンド売りが強まった。ロンドン早朝に英ガーディアン紙がベイリー英中銀総裁が金利引き下げに「もう少し積極的になる」可能性を示唆と報じたことが材料視された。短期金融市場では次回11月会合での利下げを織り込み、12月の追加利下げ観測も高まっている。これまで英国は根強いサービスインフレを受けて利下げの動きが遅れるとの見方が優勢だったが、一気に市場センチメントが崩された格好。ポンドドルは1.32台半ばから1.31付近へ、ポンド円は195円付近を高値に192円台前半まで急落。ユーロポンドも2年来の大幅上昇となった。ポンド安が目立つ中で、円相場やユーロ相場は方向性がハッキリとしない。ドル円は147円台は定着せず、146円台前半から147円付近で売買が交錯。ユーロドルは1.10台前半で東京市場からは下に往って来いの値動き。ポンド円の急落を横目に、ユーロ円は162円を軸とした上下動にとどまっている。利下げ期待の英株以外は欧州株や米株先物は軟調。原油高など中東リスクの影響は残っている。また、明日の米雇用統計を控えて調整の動きも散見される。

 NY市場では、ドルが底堅く推移。ドル円は146円台後半での推移。米ISM非製造業景気指数が予想外に強い内容となったことで147円台に再び上昇する場面が見られたものの、戻り待ちの売りオーダーも観測され、直ぐに伸び悩んでいる。ただ、引き続き石破首相の利上げに否定的な見解への変化が円安を誘発。また、FRBの大幅利下げ期待の後退、そして中東情勢が依然として燻っており、ドル高の地合いになっていることなどがドル円を下支えしている。きょうもユーロドルは下げ幅を拡大し、心理的節目の1.10レベルをうかがう動きが出ている。ポンドドルは1.31台前半と安値圏で推移。本日はポンドの売りが目立ち、対ドルのみならず対ユーロ、円でも下落。ここに来てベイリー英中銀総裁の発言がをきっかけに、英中銀の利下げ期待が一気に高まったが、NY時間には値動きが落ち着いた。ロンドン早朝のベイリー英中銀総裁の発言報道では、「インフレが抑制された状態が続けば、利下げにより積極的になる可能性がある」と述べていた。また、原油価格再上昇の恐れがあるため中東情勢を非常に注意深く見守っているとも語った。短期金融市場では11月の英中銀の利下げはほぼ織り込み済みだが、12月については五分五分と見ていた。しかし、本日のベイリー総裁の発言で70%に上昇している。また、来年はさらに5回の利下げが予想されている状況。

(4日)
 東京市場では、ドル円が反落。昨日は147円台を何度かつけるドル高・円安の動きが優勢だった。朝方は146円台後半で取引を開始。その後は上値の重い展開が続き、午後には一時145.92近辺まで売られた。大きな材料が出たというよりも、今晩の米雇用統計を前に行き過ぎた動きに警戒感が出た形。147円台の維持が出来ず、短期のドル買いに対する調整が入ったものとみられる。ユーロ円も上値から調整され、162円台から161円ちょうど付近まで下落。ユーロドルは1.10台前半で15ポイントレンジにとどまった。米雇用統計待ちで様子見ムードが広がった。

ロンドン市場では、円買いが一服している。ドル円は146円台半ばへと買い戻されている。ユーロ円は162円付近から161円付近まで下落したあと、ロンドン時間には161円台後半まで下げ渋った。ユーロドルは1.1040-1.1020の狭いレンジでの弱保ち合い。独自の動きがみられたのがポンド相場。ポンドドルは1.31台前半から後半へと上昇、ポンド円は191円台後半までの下落を帳消しにし、ロンドン時間には反転して193円付近へと高値を伸ばした。この日、ピル英中銀チーフエコノミストが「構造的な変化が、より持続的なインフレ圧力を維持する可能性について引き続き懸念」「さらなる利下げは引き続き可能だが、行き過ぎや早過ぎたりするリスクに注意が必要」と発言した。前日にポンド売りを誘ったベイリー英中銀総裁発言ほどの利下げスタンスの強さは見られなかった。米雇用統計待ちとなるなかで、米10年債利回りは上昇、欧州株や米株先物は底堅く推移している。

 NY市場でドル円は買いが加速し、一時149円ちょうどまで上昇する場面も見られた。この日の9月の米雇用統計が想定外に強い内容となったことを受けて、FRBの大幅利下げ期待が後退。為替市場ではドル買いが加速しドル円も買いが強まった。ドル円は完全にリバウンド相場に復帰しているが、目先は心理的節目の150円を回復し、200日線が控える151円まで到達できるか注目される。