[画像] 【山村 佳子】「義父が亡くなってから地獄です」結婚20年、容姿端麗な夫にほれ込んだ妻の「最大の後悔」

2024年9月26日、厚生労働省は受給者数や介護保険の給付金額を調査した『介護給付費等実態統計』の最新版を発表。

これによると、2023年度の介護費用の総額は約11兆5139億円。2022年度から3227億円(2.9%)増加しており、2000年に介護保険制度が始まってから、最も多くなっている。

また、2023年度の累計受給者数(1人が2回サービスを利用すれば「2人」とカウントする)は約6707万9400人にもなり、前年度比1.9%(約122万1700人)も増加している。2025年には約800万人いる「団塊の世代」(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)になり、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎える。現役世代の介護負担について社会全体で考えていかなければならないのだ。

キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「最近、介護をきっかけに離婚に踏み切るための証拠にしたり、介護を隠れ蓑にする浮気が増えています」と言う。

山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。同じような悩みを抱える方々への問題解決のヒントも多くあるはずだ。個人が特定されないように配慮をしながら、家族の問題を浮き上がらせる連載が「探偵が見た家族の肖像」だ。

今回山村さんのところに相談に来たのは、45歳の派遣社員・由美さんだ。「夫が月10万円しかくれず、娘が進学できないんです。さらには義母の介護まで押し付けてきて……」と山村さんに連絡をしてきた。

山村佳子(やまむら・よしこ)私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。

「義父がなくなった6年前から地獄に」

今回の依頼者・由美さんは金融関連会社で働く派遣社員です。黒いワンピースに、バレリーナーのようなお団子ヘアをしています。服もバッグも靴も年季の入ったもので、真面目で堅実な印象です。

ふっくらとした印象で表情も柔和なのですが、言葉がとてもきつく、「夫を殺したい。義母は死んでほしい」などと言っています。

調査前のカウンセリング時に、「殺す」「死ぬ」を多用する人は、メンタルがかなり限界を迎えていることが多いのです。外部から強いストレスがかかり、無意識にこの言葉を発しているとわかるケースが多々あります。由美さんも相当追い詰められていることがわかりました。

「私の地獄は、義父が亡くなり、義母が一人暮らしになった6年前から始まりました。どこから話せばいいのか、わからない」とテーブルに突っ伏してしまったので、まずは、落ち着いていただき、夫婦のなれそめから聞いていきました。

「お前は俺の女だ」と言われてうっとりしていた

「夫との出会いは、大学のサークルの先輩・後輩関係でした。夫は当時人気だった、窪塚洋介さんそっくりのロン毛のサーファーで、ワンレンの髪がサラサラで、細マッチョでカッコよかったんです」

性格も、当時“男らしい”とされていた、命令口調が多かったそう。由美さんは「こっち、来いよ」「お前は俺の女だ」などと言われてうっとりしてしまったとのこと。夫は相当モテており、由美さんには複数人のライバルがいたようです。

「私もバカだから手料理や家事を頑張ってライバルを蹴落として、25歳の時に結婚したんです」

その後、現在18歳になる娘を授かります。ここで由美さんは当時勤務していたメーカーを退職に追い込まれます。産休制度がなかったことが理由でした。結婚から出産までの2年間は、夫は生活費をくれなかったそうです。由美さんが働けないことを知ると、しぶしぶ生活費として月10万円を出すようになったとのこと。

「その時は惚れた弱みで良かったんですよ。そして3年後にうっかり2人目を妊娠してからも、生活費は10万円のまま。私がパートを始めたり、親に頼って生活していました」

娘の部活のユニフォーム代も出さない

なぜ、そこまで金を払わないのか。それは、夫は結婚後も「モテている自分」が大好きで、ファッションや飲食費に金を使っていたこと。当然、浮気もしていたようです。

「あとは、夫のことをちやほやしてくれる自分の親が大好き。義父が定年退職してから、毎月10万円以上を渡していましたからね」

さらに、義父が6年前に亡くなると、夫は近くのアパートを義母用に借り、自分の地元の神奈川県の僻地から引っ越させたそう。当然、家賃(5万円)は夫が出しており、それとは別に生活費の10万円を渡しているとか。

「夫は大手企業の会社員で、多分年収1300万円くらいあると思うんですよ。でも、浮気と義実家に貢ぐ金で、私たちに10万円しかくれていません。当然、お金は足りません。先日、高校でバレーボール部に入った次女が、“お父さん、ユニホームの3万円、出して欲しい”言ったら、“どうせ辞めるのにそんな大金は払えない”と言い捨てた。その直後、近所に住む義母から老眼鏡がなくなったと連絡が入り、いそいそとお金を渡しに行っていました」

由美さんが住む家の家賃はどうしているのかと聞いたところ、由美さんの亡くなった父が「あんな男と結婚したら苦労する」と贈与してくれたのだとか。つまり夫は家賃も払っていないのです。

「お金が足りないというと、“お前が浪費しているからだ”と怒鳴る。夫は大手に勤務している自分を誇りに思っていて、それができない私に対して“低能”とか“人間としてのレベルが低い”などとバカにしてくるんです」

「お前、おふくろの介護してよ。俺、忙しいから」

夫は経済DVをしているし、モラルハラスメントをしています。由美さんが反論すると話が長くなり、さらに攻撃をしてくるとか。

「だから、ずっと我慢をしていたのです。目的は夫が死んだら、金が入ってくるから。私は大手社員の妻なので、退職金とか年金とか色々手厚いと思うんですよ」

夫が亡くなることを想像しながら、日々を過ごしていたところ、夫から「母さんの病院に付き添ってやって」と命令されます。80歳の義母は足元がおぼつかないところがある。仕方がないから出向くと、義母から「あなた誰かしら?」と質問されたと言います。

「認知症っぽい症状が出ているんですよ。それを夫に報告すると、“じゃあ、お前、おふくろの介護してよ。俺、忙しいから”と言って出ていってしまった。私にも仕事があると言うと“お前の仕事は誰にでもできる、派遣の仕事だろう?”って。生活費が足りない話をすると、“家賃がないんだから10万でやっていけるだろう”と怒り、壁を殴って自分の部屋にこもってしまいました」

歯を食いしばって15年過ごしてきた

これまで、離婚を考えたことが何度もありますが、悪いことばかりではなく楽しい思い出もあり、何より惚れた弱みもあるので夫婦関係を続けてきたそうです。

「あとはお金もあります。私たちに金を渡さずに、貯めているとも思うんです。“あいつが死ぬまでの我慢だ”と歯を食いしばって、この15年ほど過ごしてきたんです。マーケ用語に『コンコルド効果』ってあるじゃないですか。回収不可能なコストを心残りに感じ、辞められなくなってしまうアレ。これをぶっちぎる証拠が欲しいのです」

由美さんが認知症の義母の介護を押し付けられ、経済的DVが続いてしまえば、由美さんの生活だけでなく、娘2人の将来の可能性も潰されてしまいます。

「だから、覚悟が決まりました。今回、山村さんにお願いしたいのは、夫の浮気の証拠をとっていただきたいのです。夫はこの1年間、会社の部下と浮気をしています。やたら義母の家に行く回数が増えていると思ったところ、車の中に相手へのプレゼントが隠されていることに気づきました。これがLINEのスクリーンショットです。あのクソモラハラがぐうの音も出ないほどの証拠を絶対におさえてください。給料を差し押さえて、養育費をガッポリもらいたいんです」

長女は、今年大学受験だそうです。それまでに決着をつけて、家から夫を追い出したい。離婚するかどうかはさておき、現状そのままではいいはずはありません。由美さんが苦しみから抜けて前に進むため、その後押しを全力で行うことを決意しました。

◇若いころは魅力的に思えた「俺さま」な姿は、結婚をすると実はただのモラハラだった。そういうことは少なくないかもしれない。しかも経済的な自立を阻まれると、簡単にそこから脱出ができないのだ。そこに介護が加わり、しかもその介護は、浮気をしている夫の実の母親なのだ……。

実際どうだったのか、由美さんは何を決断するのか。詳しくは後編「「お前、おふくろの介護して」結婚20年モラハラ…容姿端麗な夫の「末路」」にてお伝えする。

「お前、おふくろの介護して」結婚20年モラハラ…容姿端麗な夫の「末路」