[画像] 三重の老舗旅館「戸田家」のHPがダウン 理由は送迎バスの人助け

 三重県鳥羽市の老舗旅館「戸田家」のホームページが、16日夜からアクセスが殺到して開きにくくなっている。X(旧ツイッター)の拡散が原因で、支配人は「困っているけど、うれしい悲鳴」と話す。一体何があったのか。

 ことの顚末(てんまつ)は16日夕方、X(旧ツイッター)に「志摩スペイン村の帰りの話」として投稿された。

 投稿者の女性と友人の乗った電車が、途中停車。タクシーやバスがなく、立ち往生していたところ、同じ境遇の親子連れと出会った。雑談をする中で、その家族がこの日、「戸田家」に泊まることを知ったという。

 戸田家は鳥羽駅の目の前にある。親子連れが「旅館のお迎えがくるので、一緒に乗せてもらえないか聞いてみる」と提案をしてくれ、一緒に待ってみることにした。

 30分後。運転手が迎えに来てくれた。投稿者が事情を相談すると、「良いですよ。鳥羽駅まで乗っていかれますか?」と二つ返事で了承してくれたという。

 30分かけ、鳥羽駅までたどり着いた。見送りの際、運転手に「絶対SNSで拡散します、今度泊まりに来ます」と約束し、無事夜行バスにも間に合ったという。

 そんな感謝の思いから、投稿者は戸田家のホームページをPR。「私も以前お世話になった」「最高の旅館だよね」などと話題になり、17日午後5時時点で2000万回以上表示され、約9・4万件の「いいね」が付いた。

 この投稿がきっかけで、ホームページのサーバーが落ちた。実はこの運転手、戸田家で支配人を務める加藤直広さん(59)。この日は遅延の影響で運転手が出払っており、支配人自ら送迎をしていたという。

 加藤さんによると、投稿者が夜行バスに間に合わないという話を聞いてすぐに乗せた。宿泊客でなかったが、「サービス業の使命。宿泊の方以外でも助けたいと思った」。

 支配人ということもあり、送迎は月に1回あるかないか。「お見送りの時に名刺を渡すか迷ったけど、やめました。運転手のおじさんということで、今度旅館に来てくれたときにネタばらししたい」と笑顔だった。

 投稿から約1日経った17日午後5時の時点でも、ホームページの復旧の見通しは立っていない。加藤さんは従業員からの連絡で、SNSでバズっていることを知った。得意先からも「戸田家、有名になってるね」と連絡があったという。

 「おもてなしが生んだ、ご縁の一つ。誰が行っても、同じ結果になったと思います」と加藤さん。従業員の間でも「ええやん、ええ話やん」と笑顔があふれたという。(岩本修弥)