(全2回の第1回)

〈52歳のバースデーを迎えた8月20日、デイリー新潮のインタビューに応じてくれたのはタレントの梅宮アンナだ。彼女が自身のSNSを通じて、右乳房に「浸潤性小葉がん」が見つかったことを明かしたのは取材の1週間前のことだった。現在、「ステージ3A」で、右腋窩リンパ節への転移が確認されているという〉

【写真】アンナの闘病を支える愛娘と母親。父・辰夫さんと写った秘蔵ショットも

 闘病を始める際に、がん治療を専門とする主治医に尋ねたんですね。「先生、私は死ぬんでしょうか?」って。すると先生は「それは神様にしか分かりません。でも、大事なのは“治療をするんだ”という気持ちです。その気持ちがご自身を救うことになると思いす」と言ってくれました。その言葉を聞いたときに「あぁ、なるほど、その通りだな」と感じて。いま思い出しても大好きな言葉ですね。

がん闘病を告白した梅宮アンナ

〈年に1度は人間ドッグを受診していたアンナ。だが、今年5月上旬、自らの体の異変に気づく〉

 シャワーを浴びていたときに「あれ?」と思ったんです。どうも右の乳房が小さくなった気がして、アメリカに住む娘のももか(百々果)に写真を送りました。そしたら、「ママ、これまずいよ。病院に行った方がいいよ」って。

〈愛娘の言葉を聞いて検査を受けると、2週間後にもたらされたのは冒頭の結果だった〉

「ママを同席させたことを悔やみました」

 いまの時代は凄いなって思いましたけどね……。検査結果を聞くために同居するママ(クラウディアさん)と一緒に病院を訪れて、「母も病室に同席していいですか?」と尋ねたらこともなげに「はい、どうぞ」。そう聞いたら「あれ? がんじゃなかったのかな」と思うじゃないですか。でも、医師から言い渡されたのは「今回のアンナさんのケースはがんです」という言葉でした。もちろんショックを受けましたけど、それ以上にママを同席させたことを悔やみました。明らかに泣いているのが分かったから、隣に座っているママの方を向けなかった。つらい思いをさせてしまったなぁ、と。パパ(梅宮辰夫)の時代は本人に告知なんてしなかったですからね……。それ以降は病院を移って、がん専門の先生と治療に当たることにしました。

 主治医の先生は私が投げたボールをきちんと返してくれるし、言うことが的確で納得できる。信頼の置ける先生だからこそ、二人三脚で治療に挑もうと思えました。何よりもこの先生に言われたことをきちんと実行する。いまは、それがとても重要だと感じています。

〈アンナは信頼できる医師とタッグを組み、がんと正面から向き合うことを決めた。そんな彼女が選んだのは“標準治療”という道だった〉

「身の丈に合った治療を選んだ」

 患者目線で考えると、いまのがん治療は大きく3つに分けられると思います。標準治療と免疫療法、そして民間療法です。どれを選ぶかは、あくまでも本人の判断だと感じています。ただ、私ががんを公表した直後から、甘い誘惑というか、悪魔のささやきというか、とにかく色々な声や商品が届くようになりました。がんに対抗するために体の活力をアップさせるサプリだったり、宗教絡みの勧誘だったり……。なかには「うちの妻はこれを飲んでがんが治ったから」とあくまで善意で治療法を薦めてくる方もいます。

 とはいえ、がんの種類は千差万別で、同じ部位にできた同じステージのがんでも、人によって症状や副作用に違いがあります。そのため、誰かに効いたサプリが私にも効く保証はありません。エビデンスが乏しい点も含め、民間療法は一切お断りしています。

 一方、私の周囲にも免疫療法を続けている人はいますが、さすがに費用が高額すぎるな、と。1クール400万円、トータルで800万〜1200万円というケースも珍しくないようです。個人的には、がんに富裕層向けの治療法があること自体が悪いとは思いません。どの治療法を選ぶかは自己判断だし、自分の命のために財産を使うことは当然かもしれない。でも、そうした選択肢のなかで、私は保険で費用を賄える標準治療を選びました。

 背伸びせず、身の丈に合った治療を選んだということです。もちろん、保険を使ったとしても抗がん剤や治療費を含めると、月額の負担は決して軽くありません。高額医療費制度も利用しましたよ。もともと知っていた制度ですが、絶対に申請した方がいいと思いますね。

闘病は山登りと一緒

 結局、標準治療というのは、科学的に効果が認められた最新の治療法だと思うんです。資産家や芸能人といった特殊な立場にいる人は、治療法についても“標準”ではなく、“特別”という言葉に心が揺らぐことがあるのかもしれません。私がまだ2歳だった頃、当時36歳のパパに肺がんが見つかりました。私が幼かったこともあり、パパはがんを倒すために可能なことはすべて試そうと考え、それこそ丸山ワクチンからサルノコシカケまで何にでも手を出したそうです。でも、最終的にはお医者さん、つまりは標準治療にすべてを委ねました私もパパと同じく標準治療でがんと向き合っていきたいと考えています。

〈これまでトレイルランや登山を続けてきたアンナは、がん治療を山登りに喩える〉

 山登りと一緒で“選択”の連続なんですね。決して真っすぐな道のりではないし、登頂するまでには乗り越えなければならない難所も多く、いきなり雨に見舞われることもある。そうしたなかで、足の置き場を一歩一歩考えながら登っていくわけですが、その一歩を間違えると滑落してしまう。大事なのは体力と知識、それに装備。エベレスト級の山を登頂するつもりで、がんと向き合っていくつもりです。

第2回【生放送中にニット帽が脱げてもツッコんでもらえず…がん公表「梅宮アンナ」が闘病生活を発信し続ける目的とは】では、がん公表後の変化について、アンナ本人が詳細に語っている。

デイリー新潮編集部