その状況を打開するため、2020年、救済役であるコロワイドより大戸屋へのTOBが実施されて成立した。従前の取締役11名中10名を解任して、新たに7名を選任。コロワイドの蔵人氏が代表取締役社長に就任。復活の体制が整い、大戸屋はコロワイドの子会社になり再生を図っている。

 相次ぐ顧客離反が招いた業績不振から債務超過にも陥っていたが、それも2021年2月にコロワイドを引受先とする第三者割当増資を行い、債務超過は解消した。今は外食大手のコロワイドの傘下に入り、相互の強みを融合させながら、業務プロセスの刷新を図っている。

 まず、非効率だった業務の一部である素材から加工処理の工程をセントラルキッチンに集約させた。そして店舗の負担を軽減させ、最終仕上げで手作り感のある商品がスピーディーに提供できる仕組みを確立し、課題だった提供時間の迅速化にも取り組んでいる。

◆コロナ前に比べて営業利益は約6倍の伸び!

 大戸屋ホールディングスの2023年3月期の決算資料によると、売上238億4600万円、営業利益2億7100万円、営業利益率は1.1%となっており、本業の儲けはわずかとなっている。値上げを断行し、2019年、2020年と売上・客数がともに低下し、業績が著しく悪化し、2021年には債務超過に陥った。

 そのため、コロワイドの傘下に入った2023年3月期は自己資本比率37.4%まで回復し、かろうじて経営の安定性を保っていた。コロワイド傘下で推し進めた業務改善とコロナ収束後の客足が戻ってきたことで、業績は確実に上がってきており、過去最高売上、過去最高営業利益となったようだ。

 コロナ収束後の通常に戻りつつある影響もあり、売上は278億9400万円(前年比17%増)、営業利益は16億4600万円で、約6倍の伸びだ。人手不足対策や賃金上昇などにより、人件費比率は前期比0.6%悪化しているが、原価率は在庫管理の徹底などにより前期比2.9%改善したので、粗利益が増額し、営業利益の伸びに貢献したようだ。

【大戸屋の業績(2023年〜2024年、IR資料より)】
売上:238億4600万円→278億9400万円
原価:103億7600万円(43.5%)→113億1400万円(40.6%)
粗利益:134億7000万円(56.5%)→165億7900万円(59.4%)
販管費:131億9800万円(55.3%)→149億3300万円(53.5%)
営業利益:2億7100(1.1%)→16億4600万円(5.9%)

 今期に入っても、4月(11.2%増)、5月(10.6%増)と連続して、前年比2桁成長を実現している。チェーン理論に基づいたコロワイド主導による業務改善と経営改革および資本注入が功を奏しているようで、決算資料に結果が表れている。

◆直営店の成功モデルを開発してパッケージ化

 店舗数は、総店舗数419店舗数(2024年3月時点)である。内訳は、国内直営149店舗、国内FC159店舗、海外直営9店舗、海外FC102店舗となっている。本来なら、フランチャイズシステムに力を注ぎ、他人資源を活用した積極展開をしていきたいところだが、現時点ではそれは難しいようだ。

 そもそもフランチャイズは素人でも早期にビジネス展開ができるように、本部が儲かるパッケージを加盟店に提供しなければならない。その対価を本部がロイヤリティとして受け取るといった仕組みで、資本は異なるが、経営理念共同体である。したがって直営店の成功モデルを加盟店に提供しなくてはならない。

 しかし、手作り感にこだわり、原価が高い費用構造のために成功の再現性としてのパッケージを提供できないのが実情だ。そこを急務な課題として、コロワイド主導の上で取り組んでいるようだ。

 出店戦略の特徴として駅前・繁華街立地のビルインタイプ・ショッピングセンター内が中心だが、路面には出店せずは2Fや地下などがほとんどだった。これは賃料が低いからという点と女性をターゲットにして展開していたことが理由だ。女性は食べるのを見られるのを嫌がる傾向があり、路面店では外から見られるからだ。ショッピングセンターのフードコートへの出店モデルも開発され、出店を拡大するとのことだ。