[画像] 160円程度の安価なモーションセンサーの中身はどうなっているのか?



さまざまなデバイスをリバースエンジニアリングしているエンジニアの10maurycy10氏が、1ドル(約161円)で販売されているマイクロ波レーダーセンサーの「RCWL-0516」を分析した結果をブログに掲載しました。

Inside a 1 dollar radar motion sensor | Maurycy's blog

https://10maurycy10.github.io/projects/motion_sensor_hacking/

RCWL-0516の基板はこんな感じ。上半分が表面、下半分が裏面となっています。このセンサーを動作させるには右端の「VIN」を5V電源に接続し、「GND」を0VのGNDに接続するだけでOK。



まず10maurycy10氏は基板に設置されている大きなチップの「BIS0001」の分析を行いました。動きと速度を検知するレーダーは一般的に振幅と周波数が一定の電磁波である連続波を送信し、受信した信号と混合して中間周波数信号を生成しています。移動している物体に電磁波が跳ね返ったときに送信信号と受信信号の位相がずれることで動きや速度が検知できるというわけです。

オシロスコープでBIS0001に入力されている中間周波数信号を確認してみるとこんな感じ。センサーの性能を確かめるために10maurycy10氏はノートPCをセンサーに向かって動かしましたが、センサーはPCの動きだけでなくその前後の手の動きなども検知しています。



RCWL-0516は速度を問わず「動き」を検知するセンサーのため、BIS0001は入力された信号のわずかな変化を検知するだけで良いというわけです。そして信号の生成は基板の左半分で行われているとのこと。



左半分の回路はこんな感じ。一見すると3.18GHzで動作する単一のトランジスタ発振器ですが、実際には2つの発振器が1つにまとめられており、マイクロ波の発振は約20MHzでパルス化されています。



エミッターの波形を見るとパルス化されていることがはっきり分かります。このパルスのおかげで、発振器が超再生型受信機として機能できるとのこと。超再生型受信機とはわずかな信号を受信した場合でも、必要な大きさの信号になるまで何度も増幅を行う受信機のことです。



RCWL-0516では2.5メートル以上離れた静止物体からの反射をレーダーのローカル発振器として活用しており、超再生型受信機で静止物体と移動物体それぞれで反射された信号の干渉から振幅変調信号を検出しています。そのため、静止物体からの反射が多数存在する屋内ではうまくセンサーが機能するものの、ちょうど良い静止物体が存在しない屋外では適切な距離でも全くセンサーが動かない場合があるとのこと。

10maurycy10氏は屋外でRCWL-0516を使用するため、パルス発生のためのコンデンサを削除してみたと述べています。



パルスを発生しなくなったRCWL-0516では信号の受信機能が失われているため、10maurycy10氏はもう一台のRCWL-0516を用意しました。受信信号を確認すると下図の通りはるかに一貫性が高まっています。



モーションセンサーとしての感度は低下してしまうものの、屋外でそれなりにセンサーが機能するようになったほか、信号の一貫性が高まったことで速度センサーとして使用できるようになったとのことです。