[画像] 電通 、メタバースマーケティングの新指標「ブランドイマーシブタイム」を発表

電通は6月10日、電通グループ、電通デジタルとともに、メタバースをはじめとする3D空間メディア、イマーシブメディア(没入感のあるメディア)が生活者に与える心理的影響やマーケティング効果の分析を実施していると発表した。第一弾として、「ブランドイマーシブタイム」という指標を提唱し、顧客企業のマーケティングへの活用に向けて、検証を推進していく。

総務省によると、メタバースの市場規模は、世界では2030年に123兆9738億円、日本では2026年度に1兆42億円まで拡大すると予測されている。メタバース空間は、商品購入やバーチャル展示会、接客や教育など、幅広い用途で活用されていると話題だ。

一方、こういった3D空間メディアでは、既存メディアと比較しユーザー体験や行動が複雑なため、行動データの活用が困難だ。さらに、マーケティング効果を測定する明確な手法がないのが業界にとっては大きな課題だという。

電通では、顧客接点についてのデータを分析している。今後成長が見込まれるとしている3D空間メディアにおいても、2022年12月から実施している「メタバースに関する意識調査」や分析ツールを提供する米国のAmplitude(アンプリチュード)との連携を通じ、データの分析や収集を行っている。

昨年開催した「東京ゲームショウVR 2023」のメタバース空間での「実行動データ」と「アンケート調査データ」を、参加ユーザー単位で統合して分析できる環境を構築した。メタバース空間で広告を展開するほとんどの企業が、商品やブランドの展示ブースを設置していたため、ブースにおけるユーザー行動のより緻密な調査と分析を実施した。

「チャット利用」「アバター装着」「スタンプ使用」などある10項目のなかで、「ブース滞在時間の長さ」が、商品やブランドの好意度や、購買意欲向上にもっとも寄与している要素だと分かった。

「ブランドイマーシブタイム」の提唱



電通グループでは、この滞在時間に、没入度を左右するデバイスごとの*係数を掛け合わせたものを、「ブランドイマーシブタイム」と定義した。将来的な効果計測指標として、今後さまざまな3D空間メディアでの検証や測定を実施していくという。
*有効視野角(水平30度、垂直20度と仮定)に占める各デバイスの画面サイズと、画面との距離をベースに設定。VRは全て覆うので100%(係数1.0)とし、PC70%(係数0.7)、スマートフォン40%(係数0.4)とする。



これまでは企業がメタバース空間で何を基準にどのような施策を実施すべきかの判断材料がなかった。しかし、「ブランドイマーシブタイム」をひとつの基準とすることで、滞在時間が長くなるようなコンテンツや演出の開発など、より効果的な体験設計が可能になる。

今後、電通グループは本指標の精緻化をはじめとし、3D空間メディアのさまざまなマーケティング効果を検証・測定し、顧客企業の事業成長に貢献していくとしている。

Written by 坂本凪沙