今や世界中から富裕層がこぞって訪れる冬の高級リゾート地となった北海道ニセコ。どうやってニセコはインバウンドをものにしたのか。海外の富裕層を取り込む外国資本の戦略、日本の観光に足りていないものとは何なのか。ニセコの成功の背景を、リゾート地・富裕層ビジネス・不動産投資の知見をもつ筆者が、これらの謎をひも解く。

*『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(高橋克英著)より抜粋してお届けする。

『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』連載第19回

『街中に「ポルシェ」や「ランボルギーニ」…世界中の富豪を射止めたニセコが示す「驚きのデータ」』より続く

2030年札幌冬季五輪の効果

2020年1月、日本オリンピック委員会(JOC)により、札幌市が2030年冬季オリンピック・パラリンピックの開催地に立候補することが正式に決まった。札幌の計画には新設の競技会場は一つもなく既存施設を活用すること、東京夏季五輪のマラソン会場を受け入れたことなどもあり、IOCの評価も高いとされている。

もし開催されれば、1972年以来となる札幌五輪のアルペンスキーの会場候補地には、富良野など並み居る競合地を抑え、ニセコが挙がっている。4種あるアルペン競技の中で、滑降とスーパー大回転は湯の沢地区(ニセコビレッジスキー場とニセコアンヌプリ国際スキー場の間)に新コースを造る方向で検討、大回転と回転はニセコビレッジスキー場の既存コースを活用するという。ニセコビレッジでは、今後リフトやゴンドラ増設などが検討されることになる。

ニセコはバブルなのか

なお、札幌では、サッポロテイネスキー場、札幌国際スキー場などが、フリースタイルやスノーボードの会場として計画されている。大会開催に伴う経済波及効果は、北海道内で約8850億円、雇用誘発数は同じく北海道内で約7万人と試算されている。

ニセコでの五輪競技開催は、ニセコの地を、欧州や北米など海外スキーヤーや富裕層に、強くPRすることになる。2030年は北海道新幹線が札幌まで延伸され、ニセコに新駅が誕生する年でもある。五輪と新幹線の効果で、北海道、札幌、そしてニセコの活性化とブランド力の更なる向上につながることになろう。

こうしたニセコの状況をみて、多くの人は、これは一時的なことで、長続きしない、ただのバブルだと思うかもしれない。確かに、古くは日本列島改造ブームに、バブル経済下のリゾート開発ブームなどは長続きせず、その後失速し、各地で破綻や廃業が相次いだ歴史があるのも事実だ。

果たして、ニセコはバブルなのだろうか?

「あそこ(ニセコ)の不動産はバブルだから、怖くて買えない」「いずれ(価格)崩壊するから、お手並み拝見」といった声も聞こえてくる。しかし、ニセコがバブルという人は、アジアを中心とした世界の富裕層が形成するグローバルな金融・不動産市場のなかで、確固たる地位を築きつつあるニセコを取り巻く、大きなおカネの流れの変化に気付いていないのかもしれない。むしろ日本の他の自治体や観光業がニセコから学べること、マネできることは、いくつもあるのではないだろうか。

『売上高は約1兆円…「ヒカリエ」や「マークシティ」を所有し、渋谷を牛耳る「あの企業」とニセコの意外な関係』へ続く

売上高は約1兆円…「ヒカリエ」や「マークシティ」を所有し、渋谷を牛耳る「あの企業」とニセコの意外な関係