受験業界に衝撃が走った。

ほぼ確定した今年の大学志願者数。約120万人のОB、7万4000人にのぼる学生を有する日本一のマンモス大学、日本大が3割近くも志願者を減らしたのだ。昨年の約9万8000人から7万5000人に、その数は2万3000人にのぼる。

大学ジャーナリストの石渡嶺司氏も、驚きを隠せない。

「近年の日大はさまざまなトラブルを起こしましたが、志願者にはそれほど大きな影響がありませんでした。’18年5月にアメリカンフットボール部の悪質なタックルが発覚した翌年の志願者は、約1万4000人減、’21年11月に当時の田中英寿理事長が脱税や所得隠しなどの疑いで逮捕された翌年も4000人減。体育会系や大学トップの一過性の問題で、受験生にとってはどこか他人事のような感覚だったのでしょう。

しかし昨年8月に発覚したアメフト部員の大麻事件は、これまでとは質が違います。大学側が問題を隠蔽した疑いがあるうえ幹部同士が批判を繰り返すなど、一時的なスキャンダルにとどまらず騒動がどんどん大きくなりましたから。『この学校は大丈夫か』と受験生が大きな不信感を持ち、現在にいたるまでメディアで繰り返し報道されたことで親にも悪いイメージを植え付けたでしょう。相次ぐ不祥事が、志願者を3割近く減らす事態を招いたんです」

特に落ち込みがヒドいのは文系の学部だ。商学部や経済学部、法学部などでは昨年比4割前後も志願者を減らしている。石渡氏が続ける。

「仮に1回の受験料が3万5000円とすると、減少した2万3000人分で8億円ほどの収入がパーになったことになります。以前、日大は全国の私大で2番目に多い約90億円の補助金が日本私立振興・共済事業団から交付されていましたが、’21年度以降不交付に。

総資産7800億円といわれる日大は、多少志願者が減っても安泰といわれてきました。しかし今年のような状態が数年続けば、人気低迷に歯止めがかからず危機的状況に陥るでしょう。理事長をはじめトップのメンバーの刷新など、抜本的な改革が求められるかもしれません」

かつて10万人以上の志願者を集めた日大が凋落する一方で、躍進したライバル校がある。「日東駒専」の一角、東洋大だ。

「東洋大は昨年の約8万6000人から9万1000人と、5000人ほど志願者を増やしています。特に日大が志願者を大きく減らした、法学部や経済学部など文系学部が人気です。福祉社会デザイン学部、健康スポーツ科学部など学部を新設し、郊外にあったキャンパスを都心に戻しているのが受験生に好評なようです。

一方の日大は、この数年目立った改革をしていません。キャンパスも学部ごとに独立している印象がある。『日東駒専』のトップは日大というイメージがありましたが、序列が激変し東洋大が追い抜く日が現実味を帯びてきました」(石渡氏)

危機管理学部を持ちながら、なかなか窮地を脱することのできない日大。不祥事続きでブランドは大きく傷つき、受験生離れが加速しつつある。