近年、ベテランの男性俳優をメインキャストにした、いわゆる“おじさんドラマ”が急増している。1月クールだけ見ても西島秀俊主演の『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜』(TBS系)や原田泰造主演の『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(フジテレビ系)、田中圭や吉田鋼太郎らが出演する『おっさんずラブ−リターンズ−』(テレビ朝日系)など各局で花盛り。

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おじさんドラマの源流

「昨年の10月クールにも西島秀俊さんと内野聖陽さんの『きのう何食べた?』などがありましたし、ここ数年で確かに増えてきています。その源流はTBSとテレビ東京にあるんじゃないでしょうか」

 こう話してくれたのは、ドラマウォッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさん。そのひとつがTBSの日曜劇場にあるという。

「'90年代はフジの月9に代表されるようにラブストーリーが主流だったんですけど、日曜劇場だけはおじさんドラマをやり続けていた。例えば、田村正和さん主演の『カミさんの悪口』などのホームドラマとか、日曜の夜にお父さんのオアシスのようなドラマをやっていたんです。

 それが、'00年代になり木村拓哉さんの登場で『ビューティフルライフ』に始まり、中居正広さんや滝沢秀明さんらが主演を務めたりと一気に若返ったんです」(カトリーヌさん、以下同)

ベテランの安心感

 そんな中、ターニングポイントとなったのがこの作品。

「'00年終わりごろから恋愛ものが少し飽きられ、刑事ドラマや医療ドラマが増えてきた中で登場したのが'13年の『半沢直樹』。このドラマのヒットにより新たな鉱脈を見つけ、その後の『VIVANT』などもそうですが、骨太のベテラン俳優をメインに据えた作品が多く作られるようになった。それにより、滝藤賢一さんとか名バイプレーヤーがたくさん発掘されるようになり、各局に広まっていったのが、おじさんドラマが増えた一因だと思います」

 '12年にスタートしたテレビ東京の『孤独のグルメ』もおじさんドラマの火つけ役、とカトリーヌさん。

「この作品で松重豊さんが注目され、'17年放送の遠藤憲一さんとかベテラン俳優ばかりを集めた『バイプレイヤーズ』につながり、おじさんドラマがさらに注目されるようになっていくんです。やっぱりベテランの方って演技力に安定感があるじゃないですか。だから、難しめのテーマでも任せておけば大丈夫という安心感もある。制作サイドとしても使いやすいのが理由じゃないでしょうか」

 今年4月にはNHKで野間口徹主演の『VRおじさんの初恋』がスタート。ますます広がりを見せるおじさんドラマの今後とは?

「今は価値観のアップデートが叫ばれる時代。TBSで放送中の昭和と令和のギャップを描いた阿部サダヲさん主演の『不適切にもほどがある』みたいなおじさんドラマは今後も増えていくと思います。

 ドラマの視聴者層も高齢化していますから、なじみのあるベテラン俳優のほうが安心して見られる。かつてのトレンディー俳優も、もうおじさんですから。それこそ、反町隆史さんと竹野内豊さんで『ビーチボーイズ』ならぬ『ビーチオジサンズ』をやったら、今の時代にマッチして面白いんじゃないでしょうか(笑)」