Appleの年次開発者向け会議であるWWDC23の中で発表されたApple初のARヘッドセット「Vision Pro」は、ついに2024年2月2日にアメリカで販売開始されます。Appleは3499ドル(約51万円)で販売されるVision Proの売り込みに注力しており、

How to Buy Apple Vision Pro: $3,499 Device to Go On Sale Feb. 2 - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2024-01-14/how-to-buy-apple-vision-pro-3-499-device-to-go-on-sale-feb-2-lrdjtdm7



Apple Vision Pro demos will include scanning your glasses to identify your prescription - The Verge

https://www.theverge.com/2024/1/14/24037822/apple-vision-pro-store-demos-release

AppleのVision Proは2024年の1月19日から予約受付が開始され、2月2日に発売されます。「Appleはアーリーアダプタ―がVision Proを買い求めることで、最初の売上が急増するものの、その後の需要は先細りになると予想している」と、Apple関連のリーク情報でおなじみのBloombergのマーク・ガーマン記者は指摘しました。アーリーアダプタ―の需要に対応するため、AppleはVision Proが発売される週末にはその後の2倍の在庫を確保しておく予定のようです。

Vision ProはVRとARの両方を楽しむことができるMRゴーグルですが、MRに慣れている消費者はほとんどいないため、店舗に展示されるVision Proを用いた試遊体験は特に重要なものになると予想されています。試遊時のVision Proがユーザーの頭に正しくフィットしていなかったり、適切なレンズが装着されていなかったりすると、体験そのものが台無しとなるため、「Appleは3499ドルの売上を永遠に失ってしまう可能性がある」とガーマン氏は指摘。

そこで、Appleは「最長25分のデモを含むこれまでで最も洗練されたセールストークを用意している」とBloombergは報じています。これの準備のためにAppleは2024年1月にカリフォルニア州クパチーノにある本社オフィスに数百人の従業員を招き、店舗スタッフが「Vision Pro用のセールストーク」を正しく理解できるように詳細な解説を行ったそうです。

顧客が体験できるVision Proのデモは同デバイスの発売日である2月2日の朝8時から、実販売店舗であるApple Storeで披露されることとなります。最も大きなApple Storeの場合、常設で十数台のデモ機が用意されることとなっており、プレゼンテーションが実施される専用の着席可能なスペースも設けられる予定です。



Vision Proのデモでは、まずApple Storeの従業員が「アプリでVision Proの装着者の顔をスキャンする様子」を披露します。これにより、従業員は装着者が必要とするライトシール、フォームクッション、バンドのサイズを知ることが可能です。ゴーグル装着時に外光が視界に入らないようにするためのライトシールには、25種類以上の形状およびサイズが用意されているため、「アプリでVision Proの装着者の顔をスキャンする様子」はかなり重要となる模様。なお、フォームクッションは2つのサイズしか用意されていません。

デモに参加したユーザーがメガネをかけている場合に備え、Appleはメガネのレンズをスキャンして情報を得る装置を店舗に用意しています。この装置を使ってメガネのレンズ情報を取得し、デモ用に準備されている数百枚のレンズの中からユーザーに適したレンズを準備。このレンズをデモ機に装着することで、ユーザーは自身の視力に適したレンズでデモを体験できるようになっています。

適切なライトシールやフォームクッション、レンズが装着されたデモ機の準備ができたら、従業員はVision Proの操作方法を説明し始めます。説明には「ユーザーの視線を使ってポインターを操作する方法」「ジェスチャーで操作する方法」「ヘッドセットの持ち方」「フィットダイヤルを使ったヘッドバンドの調節方法」「仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を移行するために使用するデジタルクラウンの操作方法」などが含まれます。なお、デモ時のVision Proの視界はAppleの従業員が所持しているiPadでも確認可能となるようです。



これらの説明が終わるとようやくユーザーはVision Proを装着することができるようになるわけですが、装着後もユーザーは視線トラッキングの感度やジェスチャー操作の練習を行いながら、Vision Proのキャリブレーションを行う必要があります。このキャリブレーションには「異なる明るさに設定された円形のドットパターンを見る」や「デバイスの視野内で手をスキャンする」なども含まれるそうです。

ここまで終わるとようやくVision Proのデモがスタート。以下の順番で4つのデモが実施され、これらのデモをすべて体験するには最長で25分程の時間がかかります。

1:ユーザーは写真アプリに誘導され、Appleの他のデバイスにプリロードされているものと同様の静止画をVision Proで閲覧できます。さらに、Vision Proでのパノラマ撮影も体験可能です。

2:Appleが空間写真と呼ぶ3D画像(ピニャータを叩く子どもの写真)と、空間ビデオ(誕生日パーティーの映像)を視聴。

3:Vision ProをコンピューターやiPadの代わりとして使う方法が紹介されます。複数のアプリのウィンドウを空間に配置したり、Safariでウェブページをスクロールしたりする方法などを体験できます。

4:野生動物や海、スポーツなどの3Dムービーが再生されます。また、実際に綱渡りをしているような気分になる迫力のある3Dムービーを体験することもできます。



Vision Proのデモの目標は、「ユーザーにとって魅力的でありながら疲れない体験を提供すること」であり、ユーザーに「もっと使ってみたい」とうずうずさせることが理想であるとBloombergは報じています。

Appleは本社でトレーニングを受けた数百人の従業員に、「同僚にVision Proのセールプロセスを伝えるように」と求めているそうです。また、小売店舗の従業員はVision Proの発売前に、「自分でVision Proを体験するための時間」が用意されます。

AppleはVision Proを試遊したユーザーが快適な試遊体験を楽しめるようにすることを重要な課題としています。しかし、これは試遊時間が長くなればなるほど難しくなっていくことは明らかで、Appleの従業員の何人かは「30分ほど使っただけで頭が疲れて汗ばんだ」と語ったそうです。

なお、Apple Storeではデモエリア、販売エリアに加え、Vision Proを展示するエリアも用意されますが、この展示されたVision Proは顧客が実際に装着して使用することはできなくなっています。店舗の規模によるものの、各店舗には約2台から4台の展示用Vision Proが用意されることとなるようです。