8月25日、新型コロナウイルス対策を担当する後藤茂之経済再生担当相は、閣議後の会見で、政府の新型インフルエンザ等対策推進会議のメンバーを刷新すると明らかにした。

 現在30人超のメンバーは15人に縮小。議長を務める尾身茂氏や国立感染症研究所の脇田隆字氏は退任。新たに国立成育医療研究センターの五十嵐隆氏や、国立国際医療研究センターの大曲貴夫氏らが就任する。人事は9月1日付。

 設置されている新型コロナ対策分科会は、一定の役割を果たしたとして、廃止する。

 尾身氏は2020年の新型コロナの流行以降、安倍・菅・岸田の3政権で政府と感染症専門家の橋渡し役を務め、感染拡大防止に向けた行動制限の必要性などを説明してきた。

 後藤氏は尾身氏に関し、「(推進会議の)前身の有識者会議から10年以上にわたって議長を務めていただいた。ご尽力とご功績にあらためて感謝申し上げたい」と述べた。

 医師で小説家の知念実希人氏は、8月25日、自身のX(旧Twitter)にこう書きこんだ。

《本当にお疲れ様でした。尾身先生が先頭に立ち、必死に導いて下さったおかげで、我々医療関係者はコロナ禍を戦うことができました。心から感謝いたします。尾身先生の尽力が多くの方々の命を救いました》

 6月26日、尾身氏は岸田首相と面会したあと、「全国的には感染者数が微増傾向で、第9波が始まっている可能性がある」と述べ、高齢者を中心に6回めのワクチン接種などを進める必要があると指摘していた。そのため、SNSには、このタイミングでの退任を疑問視する声があがっている。

《尾身さんの功績は計り知れません、本当にお疲れ様でした…という気持ちと、この9波の真っ最中に?分科会も消滅?そんなにまでして政府はコロナは終わったことにしたいの?という気持ちと》

《第9波はどうするんだ?政府はこの流行の状況の深刻さを発信していないのに》

 一方で、5月、新型コロナが感染症法上の位置づけで5類に移行することに、尾身氏が「まだ完全に普通の病気にはなっていない」と指摘した際は、実業家の堀江貴文氏が《いつまで言ってんだこいつ》と書き込むなど、批判も高まった。そのため、尾身氏の退任に納得する声も……。

《これで、やっと終わるね、コロナ》

《アルプススタンドの大声援と共に甲子園決勝が行われた直後に尾身茂の退任って皮肉よなぁ 若者のあらゆるイベントを制限し、無観客五輪まで勧めておいてね》

《二度と出て来るな。新しい生活様式だの尾身食いだのふざけたことばかり日本人に吹き込んで陰鬱な3年間を作り出した張本人》

 尾身氏は、8月24日、共同通信の取材に「10年以上政府の感染症対策に関わり、もうお役御免だろうと考えていた」と述べたという。

 評価が分かれたものの、尾身氏の退任は、新型コロナ禍をめぐり、1つのの区切りとなることは間違いなさそうだ。