ちょっとした運動でもたくさん汗をかいてしまうのは、代謝が良いからでしょうか?

実は汗っかきだからといって、一概に代謝が良いとは限りません。汗っかきになる原因は「基礎代謝」が関係しています。

そこで今回、皮膚科の専門医である巣鴨千石皮ふ科の小西真絢院長に、汗っかきになる原因や代謝を良くして痩せやすく健康的な体になるための方法を教えていただきました。

 

<プロフィール>

小西真絢(こにし・まあや)

日本皮膚科学会認定専門医
巣鴨千石皮ふ科 院長

https://sugamo-sengoku-hifu.jp/

杏林大学医学部医学科卒業後、東京医科歯科大学皮膚科に入局。その後、総合病院などで経験を積み、2017年、生まれ育った千石にて 「巣鴨千石皮ふ科」 を開院。大学や総合病院などで培った経験を活かし、地域のかかりつけ医として「目に見える異変は何でも相談できるホームドクター」を目指し、患者様一人ひとりに最適な治療を提供しています。多汗症の治療にも力を入れており、相談しにくい汗の悩みに初診からオンライン診療に対応することで、全国から多くのご相談をいただいています。

「代謝が良い」とは?

人が1日のなかで消費するエネルギーの内訳は、「基礎代謝」約60%、「身体活動」約30%、「食事誘発性熱産生」約10%です。

「代謝が良い」というのは、一般的には基礎代謝量が高いことと言われています。

「基礎代謝(量)」は、呼吸や体温の維持、心臓の動きなど、生命活動を維持するために使われるエネルギーで、動かずにじっとしていても消費するエネルギーです。

「身体活動(量)」は、生活するなかでの動きやスポーツ時の運動など、体を動かすことで使われるエネルギーです。運動量を増やすことで消費エネルギーを増やすことができます。

「食事誘発性熱産生」は、食事をした際の消化などのために内臓が活動することで使われるエネルギーです。

1日に消費するエネルギーのうち約60%が基礎代謝なので、例えば筋肉をつけるなどして基礎代謝を高めることでエネルギー消費量を増やし、太りにくい体質をつくることができます。

汗っかきになる原因は?

汗っかきになる原因として、次のようなことが挙げられます。

①隠れ肥満

標準体型や瘦せ型の体型で汗っかきの場合は、隠れ肥満の可能性があります。

体脂肪は体温を維持する役割があり、体脂肪が多いと体に熱がこもりやすくなるため、体温調整のために汗の量が多くなります。

②冷え性

汗っかきでも手や足の末端が冷たい人は、隠れ冷え性の可能性があります。

冷え性は基礎代謝が下がり、体内に水分をため込んでしまいます。ため込んでしまった余計な水分を排出するため、汗を出しているのです。

③ストレス

緊張や不安、ストレスなどの精神的なことが原因で大量の汗をかくことを「精神性発汗」と言います。ストレスにより交感神経と自律神経のバランスが乱れることで汗をかいてしまいます。

④ホルモンの影響

ホルモンバランスの変化により自律神経が乱れることで汗をかくことがあります。

特に女性の場合は、月経・妊娠・閉経などによりホルモンバランスの影響を受けやすいため、ほてりや汗をかきやすいと感じる人がいます。

⑤食事

香辛料などによる味覚への刺激により汗をかくことを「味覚性発汗」と言います。味覚により交感神経が刺激され、鼻や額に汗をかきます。

また、食事により生産された熱で体温が上がり、汗をかくこともあります。

⑥代謝異常の疾患

甲状腺機能亢進症(バセドー病)や糖尿病などの症状の一つとして、大量の汗をかく場合があります。気になる症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。

本来、汗をかくのは良いことです。しかし、日常生活に支障が出るほどの汗をかく場合は「多汗症」という病気の可能性もあるため、気になる人は受診するようにしましょう。

基礎代謝を上げる方法

痩せやすく健康的な体をつくるために、基礎代謝を上げることが効果的です。例えば、次のような方法があります。

①筋トレ

筋肉量を増やすことで、基礎代謝を上げることができます。短期間で急激に筋肉を増やすことは難しいため、無理のない範囲で継続することが大切です。

特に下半身の大きな筋肉を鍛えることで、より基礎代謝の向上が期待できます。なお、筋肉を回復させるために休むことも大切なので、週2~3回程度を目安に行いましょう。

②ストレッチ

ストレッチには、「動的ストレッチ」と「静的ストレッチ」の2種類があります。

動的ストレッチは、体を大きく動かし筋肉の伸縮を繰り返すことによって、筋肉の柔軟性と関節の可動性を高めて体温を上げる効果があります。これにより、基礎代謝の向上が期待できます。

③有酸素運動

有酸素運動は、全身を動かすことで血行が促進され、筋力が鍛えられることにより、基礎代謝を高める効果が期待できます。

基礎代謝向上はもちろんのこと、脂肪の燃焼や血流の改善にも効果があります。筋トレと同様に継続して行うことが大切です。

④水分を取る

水分を取ることで血液の流れが良くなり、基礎代謝の向上が期待できます。

厚生労働省によると、1日に必要な水は2.5Lで、体内でつくられる水や食事から摂取する分を引いて、1日1.2Lの水を飲むことが推奨されています。

⑤体が温まる食べ物を摂る・食事はよくかんで食べる

体を温めて内臓の動きが良くなることで、基礎代謝の向上が期待できます。温かい食べ物だけでなく、体が温まる食材や筋肉をつくるためのタンパク質を意識して摂るようにしましょう。

また、食べるときはよくかんで食べることで、食事誘発性熱生産が高まるとされています。

⑥腸内環境を整える

腸内環境が乱れていると代謝も低下してしまいます。腸内環境を整えるため、発酵食品や食物繊維を意識して摂るようにしましょう。

⑦お風呂につかる

お風呂につかり体を温めることで基礎代謝の向上が期待できます。また、リラックスすることで、自律神経を整える効果も期待できます。

無理せずにできる範囲で始めてみましょう

基礎代謝は、年齢とともに低下してしまいます。

今回、基礎代謝を上げる方法をいくつか紹介しましたが、いずれも継続することが大切です。ご自身のライフスタイルに合わせて、できることから始めてみましょう。