[画像] 大手アダルトサイトのPornHubが年齢確認を法律で義務付ける州からのアクセスをブロックすると発表、アクセスが80%減少してもブロックする理由とは?



大手アダルト動画サイトのPornHubが、アダルトサイトの閲覧に年齢確認を義務付ける法律(年齢確認法)を施行する州からのアクセスをブロックすると発表しました。

Pornhub cuts off more US users in ongoing protest over age-verification laws | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2023/07/free-speech-group-backs-pornhub-in-fight-against-state-age-verification-laws/



2023年6月30日、PornHubは公式Twitter上でミシシッピ州およびバージニア州からのアクセスをブロックするという声明を発表しました。

声明の全文は以下の通りです。

ご存知ない方もいるかもしれませんが、アメリカの選挙で選ばれた議員たちが、「未成年者にとって有害なもの」に子どもたちがオンライン上でアクセスすることを防ぐための法律を導入し始めています。

これは素晴らしいことです。我々はこの種の法律を何年も支持してきました。なぜならこういった法律は、ユーザーの安全とプライバシーを守り、成人向けコンテンツへのアクセスから子どもたちを効果的に保護するものでなければならないと考えているからです。

しかし残念なことに、多くの議員が選択した新しい未成年者を保護するための法律の施行方法は、場当たり的で危険なものです。問題は以下の通りです。

バージニア州やミシシッピ州を含む多くの州では、7月1日から利用者の年齢確認を義務付けていますが、法律の順守については強制していません。つまり、アダルトプラットフォームは、これに従うか否かを選択できるということです。責任あるプラットフォームは法律に従うでしょうが、無責任なプラットフォームは従わないでしょう。

このシナリオがどのように展開するかは、すでに見た通りです。1月にルイジアナ州で同様の法律が制定されたとき、Pornhubは法律を順守した数少ないサイトのひとつでした。しかしそれ以来、ルイジアナ州からのトラフィックは約80%も減少しています。これはルイジアナ州の人たちがポルノコンテンツを消費しなくなったというわけではありません。彼らはユーザーの安全を真剣に考えず、コンテンツを規制することさえしない他の無責任なサイトへ移行しただけです。

我々はユタ州でも行ったように、バージニア州とミシシッピ州からのアクセスも完全にブロックするという難しい決断を下しました。これらの州の忠実なユーザーを失望させる決断を申し訳なく思いますが、このような形で新しく施行された法律に従うことに決めました。

インターネットをより安全にし、ユーザーのプライバシーを守り、子どもたちがアダルトコンテンツにアクセスするのを防ぐ唯一の解決策は、発信元であるデバイス上で年齢確認を行うことです。すでに多くのデバイスが、無料で使いやすいペアレンタルコントロール機能を提供しており、機密性の高いユーザーデータの開示リスクを冒すことなく、子どもたちがアダルトコンテンツにアクセスするのを防ぐことを可能にしています。

ユーザーの安全が私たちの最大の関心事です。だからこそ、我々は我々が選んだ政治家が危険にさらすことを選んだユーザーを保護するために、この重要なステップへと踏み出そうとしています。



アメリカの各州で施行されている年齢確認法に抗議しているのはPornhubだけではありません。アダルトコンテンツ関連の業界団体であるFree Speech Coalition(FSC)も、年齢確認法を巡りルイジアナ州を提訴しています。

FSCのアリソン・ボーデン事務局長は、「これらの法律は合法的なビジネスに対する嫌がらせや検閲を行う権限を国家に与えています」「もちろん我々は未成年者がアダルトコンテンツにアクセスできないようにすることを支持しますが、消費者が関与を拒否する侵襲的で負担のかかるシステムを国家が要求することは、特定の言論を抑圧することを認めることにほかならず、単なる国家検閲にすぎません」と批判しています。

海外メディアのArs TechnicaがFSCにコメントを求めたところ、同組織の広報部長であるマイク・ステイビル氏から「年齢確認法は未成年者を保護するというよりも、オープンなインターネットを制限することに重点を置いているということを理解すべきです。主にアダルトサイトを対象とする州レベルの規制は、未成年者がアダルトコンテンツにアクセスできないようにすることには全くと言っていいほど効果がありません。これは政府による言論統制に過ぎず、今このタイミングでこの規制と戦うことが非常に重要です」という返答が得られたそうです。

また、ステイビル氏は「一部の州は『女性の乳首の描写』だけでウェブサイトに対する責任を問うには十分、というあいまいな表現を含む法律を有しています」「この種の法律がアダルトサイトよりもはるかに多くの影響を与えています」と指摘しています。なお、FSCもPornhubと同様に「デバイスベースの年齢確認」を求めており、これはウェブサイト側で年齢確認を行うよりも「未成年者がアダルトコンテンツにアクセスできないようにするには、はるかに優れた方法」と指摘しています。

なお、FSCの推定によると年齢確認法に違反した場合、年間最大100万ドル(約1億4000万円)の罰金を科せられる可能性があるそうです。



ルイジアナ州、バージニア州、ミシシッピ州などで施行されている年齢確認法は、今後アーカンソー州(2023年7月31日)、テキサス州(2023年9月1日)、モンタナ州(2024年1月1日)にも施行される予定です。Pornhubは記事作成時点でアメリカで8番目にアクセス数の多いウェブサイトであるため、今後さらに多くのアメリカ国民がPornhubにアクセスできなくなることが想定されます。そのため、Ars TechnicaはPornhubが年齢確認法を施行した州からのアクセスをブロックしていることについて「年齢確認法に抗議するための行動としては、唯一の現実的な方法のように思える」と報じました。

なお、FSCはPornhubのようなアダルトサイトが年齢確認法に抗議するためにアクセスをブロックする措置を取ることを推奨しており、インターネット上で抗議キャンペーンの「Defend Online Privacy」も立ち上げています。Defend Online Privacyはアクセスがブロックされた州からでも、Pornhubのようなアクセスをブロックしているサイトへのアクセスが簡単に可能になるランディングページを提供しています。

Defend Online Privacy

https://www.defendonlineprivacy.com/