[画像] 「最強になれる場所があることが救い」全25組が梅田に音楽を響かせた『THE BONDS 2023-GIGANTIC TOWN MEETING-』ALI、ケプラ、れん、ニコタン、リュクソ、メガシンのライブをレポート

『THE BONDS 2023-GIGANTIC TOWN MEETING-』5.3(WED)@大阪・梅田一帯

7月22日(土)・23日(日)に大阪・舞洲にて開催される夏フェス「ジャイガ」こと『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2023』のスピンオフイベント『THE BONDS 2023-GIGANTIC TOWN MEETING-』が、5月3日(水祝)に梅田一帯で行われた。昨年に引き続いてのサーキット形式で、梅田クラブクアトロ、umeda TRAD、バナナホール、梅田zeelaの4つのライブハウスに全25組のアーティストが出演。今回はその中から編集部がピックアップした6組(ALI、ケプラ、れん、NIKO NIKO TAN TAN、リュックと添い寝ごはん、Mega Shinnosuke)のライブの模様とイベントの雰囲気をレポートしよう。

真夏かと思うほどの日差しが降り注いだ梅田キタエリア。文句なしの晴天だ。梅田クラブクアトロから始まるトップバッターに間に合うようにと会場に向かうと、バナナホールではリストバンドの交換が行われており、青色のリストバンドを手首につけたオーディエンスが大勢行き交っていた。皆それぞれに推しのアーティストのグッズやTシャツを身につけていそいそとお目当ての会場へ足を運ぶ。4つの会場間はそれぞれ徒歩5分程度で行き来することができるため、非常に移動しやすいサーキットイベントとなっていた。

ALI

ALI

イベントの口火を切ったのは多国籍バンド・ALI。ホーン隊が「仁義なき戦いのテーマ」を鳴らすとLEO(Vo)が登場し、「大阪帰ってきたぜ! 一発目から一緒に楽しんでいきましょう! ハートに火をつけにきたぜ!」と叫んで「VIM」を投下。いきなり目の前で放たれるファンクサウンドに、まだぽやっとしていた頭、いや全身が目醒める。

続く「TEENAGE CITY RIOT」ではヒリヒリする演奏に本能が刺激されて体が勝手に踊り出す。MCではLEOが「(昨晩)東京でラジオのレギュラーがありまして、0時に終わって車で向かって、12時間近く寝ずに運転して、無事に立てたね!」と、Cesar(Gt)と楠間ルッフィ(Sax)がラジオ終わりで大阪に向かったものの、GWの渋滞に巻き込まれたと明かす。30分のステージのために12時間かけてやって来てくれる、そのことにも感謝だが、後半の彼らのパワーはものすごく情熱的で、1本のライブに懸ける気合いをまざまざと見せつけられた。

ALI

なみちえ(Rap.Cho)のダイナミックかつパワフルな歌声で魅了した「Wild Side」や「FIGHT DUB CLUB」、アニメ『呪術廻戦』のEDテーマ「LOST IN PARADISE」と、最高にセクシーでグルーヴィな楽曲たちの連投に会場は大歓喜。「俺たちのメッセージはひとつ! 国籍、性別、年齢、古い曲、新しい曲、ジャンル、関係ない。俺たちが求める限り音楽は最高! それを伝えたくてやってます。悲しみ怒りを乗り越えて、また会う日まで一緒に生きていこう」とラストチューン「Funky Nassau」を披露。コール&レスポンスもバッチリキメて、最高の出だしでトップバッターの役目を終えた。

ケプラ

ケプラ

umeda TRADの2番手に登場したのはケプラ。THE 2の「ケプラー」をSEに1人ずつステージに現れたハヤト(Dr)、けんた(Gt)、かず(Ba)、柳澤律希(Vo.Gt)。柳澤が「今日は1日盛り上げて帰るぞー!」と叫び、「うわごと」から爽やかにライブスタート。会場に集まったオーディエンスを見て嬉しそうに笑顔を見せる。

「これからのこと」の曲中には「今日色んなアーティストが出てるけど、この30分だけは僕たちと皆で作った時間ってことでいいよねー!」と歌詞の世界観になぞらえた言葉を挟みながら、会場をひとつにしていく。

ケプラ

けんたの人懐っこい笑顔や、一緒に歌詞を口ずさむ、かずとハヤトの楽しそうな様子を見ているだけでこちらもハッピーになる。短いMCを挟んだ後は「おねだり」と「16」を披露。ライブが進むごとにフロアの熱が上昇していることを肌で感じた。最後は「間違いなく、僕らと皆で作った最高の空間になりました! また迎えにくるからね!」と「春が過ぎたら」を疾走感たっぷりにプレイ。全員でのコーラスにコール&レスポンス。待ち望んだ光景が広がる様子にメンバーも嬉しそうに目を輝かせる。持ち前の明るさとどんな人も受け入れるウェルカム感、そして確かな演奏力でフレッシュな風を吹かせたケプラだった。

ケプラ

れん

れん

サウンドチェックで時間が余ったと言ってオーディエンスからのリクエストに応え、弾き語りを披露してコミュニケーションを取っていたのは、19歳の現役大学生シンガーソングライター・れん。TikTokのフォロワーが95万人、SNSの総フォロワーは107万人(2023年6月時点)を超える彼は、1人ながら堂々としたステージを見せた。

れん

1曲目の「緋寒桜」で揺らぎのある低音ボーカルを聞かせて魅了したと思えば、「空っぽ」では優しい歌声を響かせて歌唱力の幅広さを提示する。MCでは「初めましての方は初めまして。れんです。今日は集まっていただきありがとうございます。楽しんで帰ってもらえたらと思います」と挨拶し、「大切な方を思い浮かべて聞いてください」と「Promise」を質感のある歌声でしっとりと聞かせ、「この間静岡行った時にカバーって言わなくて、あたかも自分の曲のように歌ってしまったので、カバーですと言っておきます」と、なとりの「Overdose」をカバー。

れん

ギターを手にし、クールながらも感情を乗せて歌った「最低」を経てのMCでは「大阪から来た方どのくらいいますか?関東から来た方は?」とフロアとの会話も楽しみながら、最後にリリースされたばかりの新曲「変わりゆく季節」をしっとりと聞かせてステージを終えた。声にどっしりとした力を感じさせる、素晴らしいライブだった。

NIKO NIKO TAN TAN

NIKO NIKO TAN TAN

バナナホールにはクリエイティブミクスチャーユニット・NIKO NIKO TAN TAN(以下、ニコタン)が登場。3人組だが、ステージに上がるのは音楽とパフォーマンスを担当するOCHAN(Vo.Syn)とAnabebe(Dr)の2人だ。幕が閉まった状態のサウンドチェックにも関わらず、既にフロアを沸き立たせていた彼ら。静かに幕が開くとニコタンのネオンが光り輝やいていた。SEが鳴ると期待感が一気に高まる。

OCHANが「大阪最後までよろしく!」と叫び「同級生」でライブスタート。OCHANの指先から繰り出されるシンセサウンドとトラックが全身を揺らす。金色のくるくるの髪がライオンのようなAnabebeはまさに野獣のようにビートを繰り出す。しかし聞こえるサウンドは柔らかさもあり、心地良いグルーヴにじわじわと没入してゆくようだ。

NIKO NIKO TAN TAN

「パラサイト」や4月にリリースされたばかりの「Drama」を連投して最高の音の波に包まれた会場はとにかくダンスダンス! この熱狂にAnabebeは「温度が最高やな」、OCHANは「出てきた時の温度が違いますね。最高っすね」と笑顔を見せる。後半は水の中に潜るような「水槽」から「胸騒ぎ」でより一層ニコタンワールドへと連れてゆく。

高まったところに投下された「WONDER」で「1.2.3でジャンプしましょう!」とOCHANが叫ぶとフロアはお祭り騒ぎ状態に。ラストは初期の楽曲「キューバ、気づき」で最高潮の熱量を作り出した。あっという間の30分。体感時間はもっと短かった。それほど集中させられた熱狂のライブだった。

NIKO NIKO TAN TAN

リュックと添い寝ごはん

リュックと添い寝ごはん

トリ前はリュックと添い寝ごはん(以下、リュクソ)。おなじみSAKEROCKの「One Tone」をSEに登場した松本ユウ(Vo.Gt)、堂免英敬(Ba)、ぬん(Gt)、宮澤あかり(Dr)。おもむろにメンバーでじゃんけんをして(5回勝ったらラーメン一杯奢りのじゃんけんらしい)、松本が「リュックと添い寝ごはんです、よろしく!」と言って「Thank you for the Music」から軽快に音を飛ばしてゆく。伸びやかな歌声とアンサンブルの美しさがギュッと胸を掴む。

リュックと添い寝ごはん

続けて「グッバイトレイン」を疾走感たっぷりに響かせる。1人1人のサウンドがしっかり聞こえるのが彼らの良いところ。ライブ感を感じるセッションが気持ち良く、オーディエンスは自然と手を挙げる。曲中に宮澤がビートを止めて「こんにちは」とフロアに呼びかけると、松本が「ここでMCやるんだね」と小さくツッコミを入れる。いきなり曲に戻って慌ててマイクに向かう場面もあり、翻弄される様子も何だか微笑ましい。

リュックと添い寝ごはん

MCでは松本が2ヶ月前のワンマンぶりの大阪だと話し、堂免が「2ヶ月ぶりでお久しぶりですって言える関係性すごいよね」と言うと「素敵なこと言うねえ、君。夜はまだ冷えるからね、風邪ひかないでくださいね(松本)」とほっこりMCを繰り広げて、新曲を披露! <声を止めないで 足を止めないで>という力強い歌詞と松本の歌声からは、バンドの音楽への想いが感じ取れた。

リュックと添い寝ごはん

グッドメロディの「ノーマル」、カントリー調のギターリフが気持ち良い「疾走」を経て、ラストは「青春日記」で完走。個人的に2年ぶりに見たリュクソのライブだったが、すっかり大人っぽく、頼もしいライブバンドになっていたことにも感動した。リュクソのこれからが楽しみで仕方ない。

リュックと添い寝ごはん

Mega Shinnosuke

Mega Shinnosuke

そして『GIGANTIC TOWN MEETING』全会場の大トリをつとめたのはMega Shinnosuke。サポートのツインギター、ベース、ドラム、DJの6人編成で登場した彼ら。「皆、今日最後でしょう。ぶち上がっていこうぜ。本当に大阪楽しみにしてきたからさ、皆見えてるし、自由にやってくれ。ライブハウスに遊びに来てんだからさ。OK? Let’s go!」とフロアに語りかけ、鋭いギターソロから「Thinking Boyz!!!」を投下。ハンドマイクでゆらゆらステージを動き回りながらラップ調のボーカルを繰り出して盛り上げる。続く「Sports」ではロックなMega Shinnosukeを見せつける。しっかり揃ったクラップに笑顔を浮かべて「レツゴーレツゴー!」と煽り、さらに一体感を引き上げる。

Mega Shinnosuke

MCでは「クソ熱いっすね。すごい。野外に向けて励みになります」と話して「大阪に来るとテンションが上がりすぎちゃって、今日も古着屋バー行ってきて服バー買ってきたんですけど、スリッパを買いました。大阪はほんと楽しくて、お客さんも皆明るくて、大体良い思い出。はしゃぎすぎて吐くくらい楽しい」と話し、「俺の今年の目標は囚われないということで、たまに変なMCをしちゃうんですけど、俺は俺が好きなんで大丈夫という感じなんで、皆さんも良い意味の傲慢さでロックしてください。今日最後ひとつロックやりましょう。いけるか?!」とエレキギターを持って新曲の「一生このまま」を演奏。どこか懐かしさも感じさせる心に残るメロディーだ。

Mega Shinnosuke

続くアンセム「O.W.A.」では、サビでジャンプするフロアを嬉しそうに見つめつつ「まだ全然あかんわ! いっちょ見せたりましょう皆で!」とどんどん加速して会場を巻き込んでゆく。バチバチのドラムソロやギタープレイに触発されて、サポートメンバーもMega自身もステージ上で思い切り暴れまくり、「制限時間っていうとあれだね、魔法が解けるまでの時間があるんで、あと1曲。また必ず会いましょう」と拳で約束し、渾身の演奏による「明日もこの世は回るから」で本編を締め括った。アンコールは「甲州街道をとばして alternative ver.」をしっとりと披露。清涼感と余韻を残したMega Shinnosukeだった。

Mega Shinnosuke

こうして『THE BONDS 2023-GIGANTIC TOWN MEETING-』の全てのステージが終了した。Mega Shinnosukeが「こうやって最強になれる場所があるのが皆の救いでもあるし、俺の救いでもあるかなと思ってます。マジで音楽を聞きに来てくれてありがとう」と話していたが、GWのど真ん中にこの場所を選んだ音楽好きの仲間がいることの心強さは何物にも代えがたいなと感じた。直接会話をすることがないとしても同じリストバンドをつけた仲間とともに音楽のクルーズをする、それがサーキットイベントの醍醐味だろう。

次はいよいよ7月22日(土)・23日(日)に行われる『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2023』。ALI、NIKO NIKO TAN TAN、リュックと添い寝ごはん、Mega Shinnosukeが出演することも決定した。残り2ヶ月に迫った『ジャイガ』まで気持ちを高めて待っていよう。

取材・文=久保田瑛里 撮影=松本いづみ