メジャーデビュー10周年を迎えたGLIM SPANKYが11月27日、『All the Greatest Dudes』と題したベストアルバムをリリースする。CD2枚組の同アルバムにはロックナンバーからバラードまで、この10年の間にGLIM SPANKYが世に送り出してきた数々の楽曲から、今もGLIM SPANKYのライブのハイライトを飾る代表曲を収録。さらには「Fighter」「風にキスして」「ひみつを君に feat. 花譜」「赤い轍」「Hallucination」「愛が満ちるまで feat. LOVE PSYCHEDELICO」といったこれまでCD未収録だった新曲6曲も加えられ、10年間の集大成であると同時に現在進行形のGLIM SPANKYを印象づけるものになっている。
◆GLIM SPANKY 動画 / 画像
「これはベストという認識ではなく、新しいアルバムなんです」──『All the Greatest Dudes』のリリースに寄せて、松尾レミ(Vo, G)はそうコメントしている。現役である以上、最新作がベストであるべきなのだと思うが、GLIM SPANKYの2人はこれまで発表してきた楽曲もさることながら、よっぽど新曲に自信があるのだろう。
ならば、過去曲はさておき、新曲についてたっぷりと語ってもらおうというわけで、今回は、「赤い轍」「Hallucination」「愛が満ちるまで feat. LOVE PSYCHEDELICO」という直近の3曲におけるGLIM SPANKYの挑戦について、松尾と亀本寛貴(G)に訊いた。
◆ ◆ ◆
■タイトルもベストとかにしたくなくて
■過去のロックの名曲をオマージュした
──ベストアルバムではあるけれど、お二人が「新しいアルバム」と言っているところが興味深い。新曲も6曲収録されているし、松尾さんもおっしゃっていたとおり、このベスト盤からGLIM SPANKYを聴き始める人にとっては、もう全曲が新曲だから、本当に新しいアルバムだとは思うんですけど、それを抜きにしても、GLIM SPANKYとしては意地でもベストアルバムとは言いたくないという気持ちもあったんじゃないですか?
亀本:いや、単純に過去曲を集めただけのベストアルバムなんて、誰が欲しがるんだろうっていう気持ちです。それだったらサブスクにあるんだから、パッケージでわざわざリリースする理由がないし、お客さんも購買意欲が湧かないじゃないですか。ものすごいファンの人は買ってくれるかもしれないけど、買う必要のないものを出したくないっていうのは、正直ありました。
松尾:そうだね。ベストアルバムがそのアーティストの入り口になるっていうのは、確かにそうだと思います。私自身、中学生の頃、ベストアルバムとかグレイテストヒッツとかトリビュートアルバムとかウェストコーストロック集みたいなオムニバスアルバムとか、いっぱい聴いて、そこから“このバンド素敵だな”って掘っていくってこともしてきましたし、今だってサブスクのプレイリストで初めて知ったアーティストもいっぱいいますし。ただ、自分たちがベストアルバムをリリースするとき、亀本が言った通り、“過去曲を集めただけの、いわゆるベストアルバムじゃ、サブスクにもうあるんだから、出す意味がない”と思いました。だから、今回、タイトルもベストとかグレイテストヒッツとかにしたくなくて、過去のロックの名曲をオマージュして。
──モット・ザ・フープルの『All The Young Dudes (すべての若き野郎ども)』ですね。
松尾:そうです。ベストアルバムにもつけられるし、ニューアルバムにもつけられるタイトルだしっていうところで『All the Greatest Dudes』(=すべての最高な野郎ども)ってタイトルにしたんです。
▲初回限定盤
▲通常盤
──なるほど。タイトルにもGLIM SPANKYの信念がしっかり表れている、と。本当だったら、ファンのリクエストも鑑みつつ、お二人が選曲した過去曲のラインナップについても聞かせてほしいのですが、限られた時間の中では無理そうなので、今日は、「赤い轍」「愛が満ちるまで feat. LOVE PSYCHEDELICO」「Hallucination」の3曲について絞って聞かせてください。まずWOWOWの『連続ドラマW ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』の第4話のエンディングテーマとして書き下ろした「赤い轍」から。
亀本:これはタイアップのお話をいただいてから、原作のマンガを読んで、劇場版も見て、実写の雰囲気を掴んだ上で、最後に流れるならどんなものがふさわしいか考えながら作っていきました。
──スケールの大きな曲がふさわしいと考えたわけですね?
亀本:そうですね。スケールが大きくてダイナミックで。そういうものを目指したいという考えはありました。『ゴールデンカムイ』は『劇場版キングダム』の制作チームが手掛けているんですよ。だから、あれくらいの世界観っていうか、『キングダム』って宇多田ヒカルさんとか、ONE OK ROCKとか、Mr. Childrenとかが主題歌を歌ってたじゃないですか。そういう規模感をイメージしてましたね。
松尾:壮大なね。
亀本:ものすごく壮大な話なので、そこに参加させてもらう以上は、そういうレベルで戦えるものにしたいなってところで作っていったんですけど、アイヌ民族のカルチャーをフィーチャーしているお話で、なおかつ映画版からの連続ドラマでもあるので、エキゾチック感とか、シネマチック感とかも重視して。
松尾:そうだったね。これまでは私がメロディーを作って、亀本がリフを作ってという作り方だったんですけど、今回は亀本の中で世界観がかなりはっきりと決まっていたんでしょうね。それに基づくメロディーを最初に提案してくれて、そこから作っていったんですけど。あらかじめゴールを決めて、そこを目指して作っていけたっていうのがすごくよかったと思います。おかげで、本当に『ゴールデンカムイ』に似合う曲ができたと思うし、GLIM SPANKYとして、ここまで壮大でドラマチックな曲に挑戦できたのも楽しかったです。
──歌詞はオケができてから書いていったんですか?
亀本:メロディーが大体できたところで取り組んでいったよね?
松尾:そうだったね。今回、いしわたり淳治さんに入ってもらったんです。
──いしわたりさんは、「怒りをくれよ」「ワイルド・サイドを行け」他の歌詞の共作者としてGLIM SPANKYのファンにはお馴染みです。
松尾:淳治さんに、“こういう言葉を使いたい” “こういう気持ちを書きたい”と私が箇条書きしたものをまず投げて、淳治さんが書いてきた歌詞を基に話し合いながら作っていったんですけど、タイトルが最後まで決まらなかったんですよ。
──あ、タイトルが?
松尾:はい。タイトルってサビの言葉から選ぶことが多いんじゃないかと思うんですけど、この曲はサビの言葉が普遍的だから、タイトルにできる言葉がなくて。何かいい言葉はないかなって悩んでいる時に、果たしてこの歌詞は何を言いたいんだろってふと考えてみたんです。そうしたら、“流れた赤い血が 体を駆ける痛みが 生きてる証を 熱く胸に刻む”というサビの歌詞が痛みとともに人生を積み重ねていくことを歌っていることに気づいて。人生=道というイメージがぱんっと浮かんで、その連想から、「“赤い轍”ってどう?」って提案したら、「いいね」となって。それから“赤い轍を辿る 振り返れば 自分という名の 果てない歴史の旅”という大サビを付け加えたんです。
▲松尾レミ(Vo, G)/2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──そういう順番だったんですね。「赤い轍」というのは、松尾さんが同曲についてコメントしていたとおり、「迷い悩みながら強く進んでいった」軌跡でもあるわけですよね?
松尾:人生ってそういうものなんだと思います、やっぱり一筋縄では行かない。だから、“まばゆい光の 一寸先を睨んで”と歌ってるんですけど、目標を目指して、そこにすべてを注ぎ込むのではなく、目標を越えた先までを見据え、生きていくしたたかさも含め、自分たちの生き様みたいなものもメッセージとして込めたかったんです。
──“一寸先を睨んで”というところがGLIM SPANKYらしい。
松尾:そうですね。“一寸先を願って”でもないし、“求めて”でもないし、“睨んで”が一番しっくり来たんですよ。
──歌詞についてもう少し聞かせてください。「自分たちの生き様みたいなものもメッセージとして込めたかった」とおっしゃっていましたが、そうなると、さらに興味深くなるというか、“不埒な欲望に 絡み付く不安殺して”というサビの一節が気になってくるのですが。
松尾:そこはすごく悩みました。最初、淳治さんから「“不埒な”って言葉を使ったらおもしろいんじゃないか」というアイデアが来たんですよ。
亀本:しかもサビの頭だったよね。
松尾:そう。“それはちょっと違うんじゃないか。攻めすぎだろう”って、最初はあまりピンとこなかったんですけど、ここで歌っている“不埒な欲望”っていうのは、「ワイルド・サイドを行け」で歌っていた“好奇心辿って 悪い予感のする方へ”に通じるのかなって思えてきて。そう考えると芯が通っている。自分の中ではそういう感情で歌いました。でも、私たちがエンディングテーマを担当した『ゴールデンカムイ』第4話は、とあるホテルの美人オーナーに男の人が魅せられるという、言葉本来の不埒なストーリーなんですけどね。しかも、その美女は実は男だったっていう(笑)。だから、ドラマのストーリーにも合うし、GLIM SPANKYがこれまで歌ってきた、良い予感のするほうじゃない、一寸先が見えないほうに向かうというメッセージにも合うし、ということで最初は抵抗があった言葉でしたけど、最後はすんなりと受け入れられました。
▲亀本寛貴(G)/2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──「赤い轍」のアレンジについても聞かせてください。ピアノ、キーボード、ストリングスといったギミックも使いながら、ギミックが前に出すぎない、絶妙な匙加減もある意味、聴きどころではないかと思います。
亀本:そうですね。いろいろな音が鳴ってるんですけど、どれもけっこう歪んでるから、ギターと溶け合ってますね。だったらギターだけでもいいんじゃないかって思われるかもしれないけど、ハーモニーとして、たくさん音を積んだほうが世界は広がるし、空間も広く聴こえるんですよ。ただ、音の積み方がすごく難しくて。全部の音をきれいにずらして、ごちゃごちゃにならないように、かなりがんばって細かくちゃんとやりました。実は今回、僕のギター以外ほぼ打ち込みなんです。
──え、先入観もあるかもしれないけど、言われなきゃ、打ち込みには聴こえないですよ。
亀本:全部を打ち込みにしてきれいに混ぜちゃうと、音像として薄くと言うか、軽くなっちゃうから、ドラムは大井(一彌)君に叩いてもらったんです。スネアとバスドラ全部に重ねて張り付けているんですね。
松尾:だから、音色も含め、音のバランスは微調整を重ねながらかなり考えました。
亀本:ただ、松尾さんの声って打ち込みと合わないんですよ。キラキラしたシンセとか、エレクトロのドラムとか、まあ合わない。本当はめっちゃ使いたいんだけど、その世界観を壊さないよう入れる音を選ぶ、っていうのを一生懸命やってます。
松尾:ありがとう(笑)。
亀本:ちょっと歪んだ音とか、ダーティーな音とかがやっぱり合うんですよね。
松尾:そうだね。スモーキーさが合うというか、まとまるよね。
──なるほど。すごくダイナミックな曲ではあるけれど、かなり緻密に作り上げているわけですね。
亀本:そうですね。これはかなり細かく作りましたね。
◆インタビュー【2】へ
■デリコとはロックの共通言語が同じ
■ピザパーティーを二回しました(笑)
──そして、「愛が満ちるまで feat. LOVE PSYCHEDELICO」。花譜さんを迎えた「ひみつを君に feat. 花譜」についてお話を聞かせてもらったとき、「ベストアルバムにはもう1曲、ベテランとのコラボ曲が入る」とおっしゃっていましたけど、まさかLOVE PSYCHEDELICOだったとは。でも、ライブで何度も共演しているLOVE PSYCHEDELICOなら、コラボの相手としてぴったりですよね。
松尾:そうですね。けっこう一緒にやってますからね。
亀本:基本的には<ARABAKI ROCK FEST.>で一緒にやることが多いんですけど、自分たちのワンマンに出てもらったこともあって。
──2023年の高崎公演ですね。
松尾:はい。知り合ったのは実はもう憶えてないくらい昔なんですけど、近年、すごくライブを一緒にやるようになって、すごく仲良くなったから、今回お願いしたんですけど、THE BAWDIESがビルボードライブ東京でやったライブにNAOKIさんも私もゲストで出たことがあって。
──観に行きましたよ。2024年の1月21日でしたね。
松尾:ありがとうございます。その時、楽屋でNAOKIさんと雑談していたら、「“グリム(GLIM SPANKY)とデリコ(LOVE PSYCHEDELICO)で何か一緒にやりたいね”ってKUMIと話してたんだよ」って言ってくれて。実はその時、ベストアルバムでデリコと一緒にやりたいって私達の中では決まっていて、正式にオファーしようって考えていたところだったんです。だから「本当に一緒にやってもらえるんですか?」って念を押したら、「本当にやろうよ」って言ってくれて、その後、正式にオファーしたら、改めてNAOKIさんもKUMIさんもOKしてくれて、今回のコラボが実現したんです。
──あの日、そんな会話が楽屋であったとは。ところで、この曲の作詞および作曲は?
松尾:デリコとグリムの共作です。最初にグリムがワンコーラスだけ作って、デリコに投げたんです。それがイントロからサビ前までの、いわゆるAメロで、実は最初はそこがサビだったんですよ。そしたらNAOKIさんが、「これ、すごくいいからAメロにしちゃおう」って、そこにBメロを加えてくれて、「さらに広がるサビを作ろう」ってサビを一緒に作っていったんです。
──なるほど。結果、GLIM SPANKYとLOVE PSYCHEDELICOらしさがうまい具合に混ざり合っておもしろい曲になりましたね。
松尾:ほんとそう思います。めっちゃ楽しかったです。
──パーカッションが入っていたり、ワウを掛けたギターのカッティングが入っていたりして、ちょっとラテンファンクっぽいと言うか、ドゥービー・ブラザーズっぽい魅力もありますね。
亀本:あー確かに。僕もドゥービー・ブラザーズ感、けっこう感じてます(笑)。
松尾:わかるわかる。それはわかるんだけど、ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」の。
──あ、ベースラインはまさに!
松尾:そこから派生して、でも、それをそのままやったんじゃつまらないから、電子音みたいなビビビビって音が実はよーく聴くと入っていたりとか。NAOKIさんの工夫がいろいろなところに施されているんですよ。だから、ファンキーなリズムもありながら、踊れるシンプルなロックを突き詰めていきましたね、制作的には。
亀本:そうだね。だから、ずっとリズムが途切れない。
松尾:「クラブ的なノリでも聴けるように、この気持ちいいノリがずっと続いていくようなリズムにしよう」とは言ってましたね。1サビの終わりの“I know It’s gonna be alright”ってところで、ギターとその他の音がブレイクするんですよ。ここはNAOKIさん的にはDJ的な感覚で、そうしたみたいです。クラブのDJが一回止めて、“Hoo woo”ってやるみたいな(笑)。だから、ロックなんだけど、踊れる、気持ちのいいものをかなり意識しながら、サウンドメイクもしてますね。
▲亀本寛貴(G)/2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──この曲はもちろん生音なんですよね?
亀本:ドラムだけ打ち込みなんですけど、デリコって自分たちのスタジオを持ってるんで、そこで録ったドラムのサンプルがいっぱいあるんですよ。だから、それを使ってますね。だから、音は生なんですけど、打ち込んで張り付けてるっていう。
──そうなんだ。でも、ギターとベースは、そのスタジオで。
亀本:そうです。そこで全部録りました。
松尾:もうずっと入り浸ってました(笑)。
──けっこう長めのアウトロが終わった後に手グセで弾いたようなアコギの音が残っていて、スタジオの雰囲気が伝わるなって思いました。
亀本:NAOKIさん、いつも演奏が終わった後もマイクを残しておくんですよ。ずっと止めないんです。録り方も曲ができてからというよりは、録りながら作る、作りながら録るみたいにやっているんで。“これ、使うかわからないけど録る”とか、“録ったやつを違うところに使う”とか、いろいろやりました。そういうのが自前のスタジオだからできる楽しさですよね。時間貸しのスタジオだと、フレーズも全部決め込んで、デモをみんなに渡して、「さあ録ります」ってやらなきゃ莫大なお金がかかっちゃうから、全然違いますよね。曲はできてないのにレコーディングする、なんてことはできないじゃないですか。
松尾:曲を作るとき、私は基本的に誰もいないところで、ひとりで作りたいタイプなんですよ。だから、そういう作り方はちょっと苦手といえば、苦手なんですけど、デリコはロックの共通言語が同じというか、OKとするロックのマナーが同じというか、亀本もそういうことをよく言ってるんですけど、「この音はダメだけど、これだったらいいよね」っていう感覚が本当に共通してるから、マジでストレスなくできるんです。
▲松尾レミ(Vo, G)/2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──なるほど。
松尾:NAOKIさんもKUMIさんもアイデアを出してくれるし、私達のアイデアも全部一回受け入れてくれる。「それは違う」みたいなことを絶対言わないから、本当にアイデアを出しやすいんです。ぱっと思いついたアイデアを出しても全然恥ずかしくない。そういう感覚で歌詞もメロディーも「それいいね」って作っていけたんで、なんならアルバム1枚、デリコと一緒に作りたいって思うぐらい私は楽しかったです。本当にみんな仲良くて、曲を作っている最中、ピザパーティーを二回しましたもん(笑)。
──曲を聴いていても、お仕事的なコラボには全然思えない。
亀本:そう言えば、いい意味で、ちゃんとやろうって感じはなかったよね。
松尾:そうだね。「デリコとグリムでちゃんとカッコいい曲を作ろう」って言ってたね。だから、本当に純粋な音楽に対する愛が詰まってます。
──アコギのリフから始まって、そこにエレキのスライドのフレーズが加わるんですけど、亀本さんはどちらを弾いているんですか?
亀本:両方とも僕がフレーズを考えて、弾いてます。作り始める前は、どうなるかわからなかったから、叩き台になるようなものは作っておいたほうがいいと思って、最初にワンコーラスだけ作ったんですよ。さっき松尾さんが言った通り、それをAメロにして、サビをみんなで作っていったんですけど。そこも単に、いいメロディーのサビじゃなくて、KUMIさんと松尾さんが別のラインを歌ってるサビにしようっていう、けっこう難しいテーマを掲げて。
松尾:みんなでがんばったね。一緒に歌ってもぶつからない、二人の歌声が一つになるメロディーや言葉を探ろうってことで、そこはかなり考えました。“I know it’s gonna be alright 愛が満ちるまで”は、“I” “愛”で繋げることによって、英語から日本語に切り替わった時に違和感がなくなるとか、そういう細かいところまで考えながら、みんなで作っていきました。
▲2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──ギターソロは亀本さん? それともNAOKIさんですか?
亀本:僕です。「じゃあソロを録ろうか」ってなって、「サウンドチェックがてら弾きます」って適当に弾いたら、NAOKIさんが「これ、カッコいいよ。これでいいじゃん」って言うから、「いや、これは練習なんで、さすがにハズいです」って言ったんですけど、「いや、これがいいよ。これがいい。これ、弾ける奴はそうそういないよ」ってゴリ押しされて、適当に弾いたやつが使われることになったっていう。
松尾:試し弾きがね。でも、このソロ、私も好き。スタジオに行ったら、「めっちゃいいソロが録れたんだよ。これ、絶対好きだと思う」ってNAOKIさんが聴かせてくれて、確かにヘンテコだけど、弾こうと思っても、これはなかなか弾けないと思いました。
──そのギターソロの裏で、もう1本ギターが鳴っていますよね?
亀本:それはNAOKIさんが付け足したんですよ。「もしライブで一緒にやることがあったら、尺を延ばして、自由に掛け合いしたら最高だよね」なんて話しながら。
──それは聴きながら、想像しました。今度のツアーでぜひ(笑)。
松尾:デリコ呼べるかなぁ(笑)。でも、やりたいですね。
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■過去を振り返るだけのツアーじゃなくて
■未来が見えるツアーにしたいですね
──そして、もう1曲、「Hallucination」はジャジーなバラードと思わせて、パーカッションが入ってきて、これもちょっとラテンっぽい魅力のある曲になっています。
亀本:おもしろい曲に仕上がったと思います。すごく気に入ってるんですけど、板井直樹さんってアレンジャーに入ってもらって、僕のギター以外のトラックは全部、板井さんが作ったトラックなんですよ。そこまでアレンジを誰かに任せるって、GLIM SPANKYとしては初めてで。
松尾:そういう挑戦をしてみようっていう。
亀本:いつも僕が作る時は、ゴールの全体像まで見据えた上で、アレンジも込み込みで全部作っていくんですけど、ここまで作曲だけに徹するっていうのは初めてだったから。そういう意味では挑戦だったかもしれないですね。
松尾:最初、二人で超シンプルなワンコーラスだけ作って、そこに自分たちでは付けられないピアノだったり、ギターだったりが入っているっていう感覚なんです。
──曲の基になるワンコーラスは、どんなところから作っていったんですか?
松尾:松任谷由実さんの「真夏の夜の夢」のGLIM SPANKYバージョンのような世界観がいいなと思って、幻想的な外国の夏の夜をイメージして、最初メロディーを作ったんです。けど、その時にアレンジは板井さんに投げるって決まってたので、どんなアレンジを加えられても、自分の得意なメロディー感だったりとか、 自分の歌のスモーキーさというか、渋さみたいなものだったりがちゃんと出るメロディーにしようっていうのを考えてました。だから、ちょっとブルーノートスケールが入っているんですけど、そうしたらジャジーな要素がけっこう入ってきたから、亀本と「おもしろいね」って言いながら、いろいろやり取りしていく中で、ここに落ち着いて。そうしたら、レコーディングする前に板井さんが「間奏のメロディーは歌ったらいいんじゃない?」って。
──“パヤパヤ パララ”ってコーラスですか?
松尾:そうです。そこ、最初はギターフレーズだったんですよ。だったんですけど、「歌ってみたらどうですか?」って提案してもらって、“トゥルル”なのか“ラララ”なのか、どんなふうに歌ったらいいんだろう?って考えたとき、私、浜口庫之助が大好きで。
──昭和を代表する作詞作曲家ですね。
松尾:はい。そのハマクラさんが1967年に出した『僕だって歌いたい』というカバーアルバムがめちゃめちゃ好きで。セルジオ・メンデスの「マシュ・ケ・ナダ」とか、ローリング・ストーンズの「サティスファクション」とかをボッサ的に歌ってるんですけど、ハマクラさんの後ろで女の子達が“パヤパヤ”って歌ってるわけですよ。それがすごくカッコよくて、エキゾチックな感じもあって。“それだ”と思って、ノリで“パヤパヤ”って歌ってみたら、思いのほかハマって、私としては自分のルーツもちゃんと入れられたってことも含め、満足できるものになりました。
──10周年記念のベストアルバムだから、そういうことにも挑戦してみたらおもしろいんじゃないかと考えたんですか?
亀本:いえ。10周年とかベストアルバムとか全然そんなことではなくて。前アルバム『The Goldmine』収録曲の「Glitter Illusion」を作るとき、板井さんと同じ事務所のSoma Genda君ってアレンジャーに参加してもらったんですけど。たまたま僕らと同じ地元出身の同世代の子で、けっこういい手応えを得られたっていうこともあって、「じゃあ同じ事務所の板井さんとやってみたらどう?」って、板井さんとよく仕事しているディレクターから提案してもらって、「やってみましょう」ってなったんですよ。
──なるほど。
亀本:ただ、「Glitter Illusion」の時は松尾さんと僕でほぼほぼ作っちゃって、それをちょっと清書してもらう感じだったから、せっかくやるなら、がっつりやってもらったらおもしろいんじゃないかって、単純に制作上のチャレンジの一環として、誰かの力を借りてやってみたら、また違う発見もあるだろうし、そういうことも必要だと思ってやってみたんです。
松尾:そういうボサノバとか、ラテンとか、ジャズとかって、自分たちには難しくてなかなかできないし。
亀本:そうだね。自分で最後まで仕上げてたら、こういう曲は作らなかったかもしれない。
松尾:もちろん、見様見真似でやって、カッコいいものはできると思うんですよ。あるいは、不器用だからこそのおもしろさもあると思うんですけど、今回はアレンジを投げることで、どんなものができるのか、それがすごく楽しそうだなと思って、自分達にはできないことをいろいろリクエストしてやってもらいました。
──今回、お話を聞かせてもらった3曲は、ベストアルバムにありがちなオマケ的な新曲とは全然違って、メジャーデビュー10周年を越えて、GLIM SPANKYがさらに前進しようとしていることを物語るものになったと思うんですけど、その意味では本当にベストアルバムであると同時に新しいアルバムとしても楽しめるものになりましたね。
松尾:ありがとうございます。
亀本:「Fighter」以降の新曲6曲(「Fighter」「風にキスをして」「ひみつを君に feat.花譜」「赤い轍」「Hallucination」「愛が満ちるまで feat. LOVE PSYCHEDELICO」)を収録したことで、ベストアルバムにEPを1枚付けてるっていう気持ちですよね。本当だったら、ディスク2の曲を増やして、ベスト2枚とEPの3枚組にしたかったぐらいなんですけど、それやっちゃうと、価格も上がっちゃうからってことで、こういう形に落ち着いたんですけど。
松尾:ただのベストアルバムじゃない、とにかく魂の込められたものをという気持ちで作りました。
▲2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──そんな今回のアルバムのタイトルを冠したツアーが2025年の2月28日から始まるわけですが、どんなツアーになりそうですか?
亀本:新しい曲達を顔にして、そこに過去の曲を入れるツアーにするのか。過去の曲をベースにして、そこに新しい曲達を混ぜるのか。どっちにするのか考えているところなんですけど、自分の感覚としては、新しい曲達を主軸にして、いろいろな演出を考えていったほうがやりやすいんですけど、どっちがいいのかな?
松尾:そうだね。昔の曲を聴きたいって人もやっぱり多いからね。
亀本:ね。一応、ベストアルバムのツアーだから、みたいなね。
松尾:個人的にはベストアルバムの選曲が、“あれも入れたい、これも入れたい”ってすっごい大変だったから、入れられなかった曲もやりたいんですよ。各地セットリストを変えて、いろいろな曲をできたらいいなと思うけど、…それはリハーサルが大変か(笑)。でも、スペシャルなツアーにしたいと思ってます。過去を振り返るだけのツアーじゃなくて、未来が見えるツアーにしたいですね。それは確実に。
取材・文◎山口智男
撮影◎上飯坂一(2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂)
■メジャーデビュー10周年記念ベストアルバム『All the Greatest Dudes』
CD予約:https://glimspanky.lnk.to/atgdPR
▲10周年記念BOX_展開図
【完全数量限定 10周年記念限定盤(2CD+Blu-ray+Goods)】
PDCV-1246 15,000円(税込)
※豪華LPサイズスペシャルBOX仕様
▶CD : 2 DISCS
▶Blu-ray:<The Goldmine Tour 2024>at 東京・日比谷公園大音楽堂 (2024.3.24)
▼Goods
・10周年記念オリジナルヴィンテージ加工Tシャツ[松尾レミ プロデュース]
サイズ:L[男女兼用]/ボディ色:スミクロ/素材:綿100%
・ピックチャームキーホルダー
・LPサイズオリジナルポスター 10枚セット
●フォトブックレット 48ページ
●歌詞ブックレット24ページ
※【完全数量限定】10周年記念限定盤はUNIVERSAL MUSIC STOREのみ限定販売
※Tシャツ、ピックチャームキーホルダーのデザインは後日発表
▲初回限定盤
【初回限定盤(2CD+DVD)】
TYCT-69333 7,000円(税込)
▶CD : 2 DISCS
▶DVD:<The Goldmine Tour 2024>at 東京・日比谷公園大音楽堂 (2024.3.24)
●フォトブックレット48ページ
●歌詞ブックレット24ページ
▲通常盤
【通常盤(2CD)】
TYCT-60240/1 4,500円(税込)
▶CD : 2 DISCS
●ブックレット40ページ
▼CD収録内容 ※CD収録内容は全形態共通
DISC 1 & DISC 2:全28曲収録
※収録楽曲はファンからのリクエストをもとにGLIM SPANKYメンバーが選曲
●DISC 1
01. 焦燥
02. 怒りをくれよ
03. ダミーロックとブルース
04. 愚か者たち
05. 吹き抜く風のように
06. 闇に目を凝らせば
07. 話をしよう
08. NEXT ONE
09. TV Show
10. 褒めろよ
11. 美しい棘
12. 夜風の街
13. サンライズジャーニー
14. リアル鬼ごっこ
15. 大人になったら
16. ワイルド・サイドを行け
●DISC 2
01. Glitter Illusion
02. こんな夜更けは
03. HEY MY GIRL FRIEND!!
04. ラストシーン
05. 形ないもの
06. Circle Of Time
07. Fighter
08. 風にキスをして
09. ひみつを君に feat.花譜
10. 赤い轍
11. Hallucination
12. 愛が満ちるまで feat. LOVE PSYCHEDELICO
▼完全数量限定 10周年記念限定盤Blu-ray/初回限定盤DVD収録内容
<The Goldmine Tour 2024>at 東京・日比谷公園大音楽堂 (2024.3.24)
・The Goldmine
・褒めろよ
・Odd Dancer
・光の車輪
・話をしよう
・真昼の幽霊(Interlude)
・Summer Letter
・ラストシーン
・愛の元へ
・Glitter Illusion
・NEXT ONE
・怒りをくれよ
・不幸アレ
・美しい棘
・Innocent Eyes
・大人になったら
・リアル鬼ごっこ
encore
・サンライズジャーニー
・愚か者たち
・ワイルド・サイドを行け
※完全数量限定 10周年記念限定盤と初回限定盤のフォトブックレット、歌詞ブックレットの内容は同一です。
※完全数量限定 10周年記念限定盤と初回限定盤のフォトブックレット、歌詞ブックレットと通常盤のフォトブックレットの内容は異なります。
●全形態共通封入特典●
抽選で豪華賞品が当たるシリアルナンバー付き応募チラシ封入
※シリアルナンバー付き応募チラシは初回限定盤、通常盤は初回プレス分のみ封入
▼賞品内容
・A賞:「After Show」へ抽選でご招待
※LIVEは<All the Greatest Dudes Tour 2025>ライブ終演後に開催いたします
※LIVEはアコースティック、2人編成です
・B賞:メンバー直筆サイン入りオリジナルグッズ 抽選で500名様にプレゼント
※グッズの内容は後日発表いたします。
・応募者全員プレゼント:ご応募頂いた方全員にオリジナルデジタル壁紙をプレゼントいたします。
※上記どちらかご希望の賞品を1つ選んでご応募ください。
※申し込み後の賞品の変更はできません。
応募受付期間:2024年11月27日(水)11:00〜1月31日(金)23:59
■[A賞<After Show>開催会場/招待者数]
<All the Greatest Dudes Tour 2025>
2月28日(金) 北海道・札幌PENNY LANE24 ※50名様
3月02日(日) 宮城・仙台Rensa ※50名様
3月08日(土) 大阪・なんばHatch ※150名様
3月09日(日) 愛知・名古屋DIAMOND HALL ※100名様
3月14日(金) 福岡・DRUM LOGOS ※50名様
3月15日(土) 広島・広島CLUB QUATTRO ※50名様
3月21日(金) 東京・台場Zepp DiverCity TOKYO ※200名様
●店舗別CD購入特典
・UNIVERSAL MUSIC STORE:アクリルキーホルダー(約60×60mm)
・TOWER RECORDS:ポスター(B2)
・HMV:ステッカー(約50×80mm)
・Amazon.co.jp:ラバーコースター(サイズ未定)
・楽天ブックス:リボンキーホルダー(約110×35mm)
・その他一般店:ポストカード
※各特典のデザインは後日ご案内いたします。
※サイズは変更になる場合がございます。
■<All the Greatest Dudes Tour 2025>
3月02日(日) 宮城・仙台Rensa
3月08日(土) 大阪・なんばHatch
3月09日(日) 愛知・名古屋DIAMOND HALL
3月14日(金) 福岡・DRUM LOGOS
3月15日(土) 広島・広島CLUB QUATTRO
3月21日(金) 東京・台場Zepp DiverCity TOKYO
▼<All the Greatest Dudes Tour 2025 "Extra Show">
3月23日(日) 長野・飯田文化会館
http://www.glimspanky.com/
■GLIM SPANKY ライブイベント出演情報
※アコースティック2人編成で出演
11/17(日) 東京<DEFENDER DESTINATION TOKYO 2024>
※J-WAVE<DEFENDER BLAZE A TRAIL>ライブ
※アコースティック3人編成で出演
12/18(水) 長野<PARCO × ALECX presents「GOODBYE PARCO」>
※アコースティック2人編成で出演
関連リンク
◆GLIM SPANKY オフィシャルサイト
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◆GLIM SPANKY オフィシャルYouTubeチャンネル
◆GLIM SPANKY オフィシャルモバイルサイト「FREAK ON THE HILL」
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