教習所でガソリンの入れ方を教えてくれない理由
運転免許を取得する際、ほとんどのユーザーがお世話になるのが公安委員会が指定する自動車教習所(指定自動車教習所)です。
クルマの運転に必要なさまざまなことを教えてくれる一方で、クルマを使う上においての基礎となる「ガソリンの入れ方」や「エアコンの使い方」といったものは、カリキュラムに含まれていません。そこにはどんな理由があるのでしょうか。
運転免許を取得するためには、各都道府県にある運転免許試験場で技能試験と学科試験に合格する必要がありますが、公安委員会が指定する自動車教習所(指定自動車教習所)を卒業することで技能試験が免除されます。
【画像】えッ「給油口の中」ってこうなってるの!? 意外な構造を画像で見る(17枚)
指定自動車教習所では、国家資格である指定自動車教習所指導員によって教習が行われます。
また、カリキュラムも公安委員会によって定められたものが採用されているため、無事に卒業することができれば、運転免許試験場で行われる技能試験をクリアできるだけの能力があると見なされるわけです。
しかし、実際に公道でクルマを走らせるようになると、教習所で習った内容だけでは物足りないことに気が付きます。
たとえば、ガソリンスタンドでの給油方法です。
ほとんどのクルマにとって燃料の給油が必要不可欠である一方で、教習所で給油方法について具体的に教わることはありません。
給油方法を間違えたり、油種を間違えたりすれば重大事故につながるおそれがあるにもかかわらず、なぜ教習所では給油方法を教えてはくれないのでしょうか。
指定自動車教習所の視点で言えば、「公安委員会が指定するカリキュラムに『燃料の給油方法』が存在しないため」というのが最大の理由です。
指定自動車教習所のカリキュラムは運転免許試験場での技能試験に準じて決定されていますが、運転免許試験場の技能試験に「燃料の給油方法」が存在しないため、指定自動車教習所のカリキュラムにも反映されていないというわけです。
そもそも、運転免許試験場の技能試験は、あくまでクルマの操作方法や法令理解に対する試験であり、クルマの利用方法やカーライフ全般に関する試験ではありません。
実際に首都圏にある自動車教習所の担当者は次のように話しています。
「在校生から『ガソリンの入れ方を教えて欲しい』という要望などを頂くことはあります。
しかし現状のカリキュラムから構成される項目的に盛り込むことは難しいのが現状です。
また様々な課題がクリア出来たとしてもガソリン車、ディーゼル車、電気自動車、燃料電池車など多岐に渡るため、中々網羅するのは難しいのではないでしょうか」
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したがって、そうした分野については、教習所以外の場所で学ぶ必要があります。
燃料の給油方法について言えば、ガソリンスタンドで教わることができます。
セルフ式をふくむすべてのガソリンスタンドでは、国家資格である危険物取扱者乙種第4類を保有するスタッフが営業時間に1名以上勤務していることが義務付けられています。
一見無人のように思えるセルフ式のガソリンスタンドでも実際には国家資格を持つスタッフが勤務しているため、燃料の給油方法についても、しっかりと教わることのできる仕組みとなっています。
同様に、自賠責保険への加入や車庫証明の取得、自動車関連税の納税といった、クルマを利用するうえで義務付けられていることに対しては、それぞれ国家資格保有者や行政が窓口となることができるため、教習所のカリキュラムからは除外されているようです。
エアコンの使い方はなぜ教えてくれない?
一方で、クルマの操作方法についても、教習所では教えてくれないことは少なくありません。
たとえば、エアコンの使い方については指定自動車教習所のカリキュラムには含まれていません。
特に、外気導入と内気循環の使い分けやデフロスターの使い方などは、教わらないと理解するのは難しいものです。
エアコンの操作方法が指定自動車教習所のカリキュラムに含まれていない法的な根拠としては、エアコンはあくまでユーザーを補助する快適装備のひとつであり、道路運送車両法などで搭載が義務付けられたものではないことにあるようです。
エアコンが搭載されていないクルマというのはほとんどありませんが、法令上は搭載されていないクルマでも公道を走行することは可能です。
同様に、現在ではほぼすべてのクルマに搭載されているカーラジオや電動格納ドアミラーなども、法令によって義務付けられたものではないため指定自動車教習所のカリキュラムには反映されていません。
さらに、近年多くのクルマに搭載されるようになった「アダプティブ・オートクルーズ・コントロール(ACC)」などの先進安全運転支援システムも、あくまでユーザーを補助する機能という位置づけであるため、具体的な操作方法について指定自動車教習所が教えるということはありません。
したがって、こうしたクルマの機能については、各モデルの取扱説明書を読むか販売店担当者からの説明を受ける必要があります。
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少子高齢化が進む昨今の日本では、運転免許取得者数も減少傾向にあります。
そうしたなかで、指定自動車教習所は生き残りをかけてさまざまなサービスを展開するようになりました。
一方、指定自動車教習所は、あくまで運転免許試験場の試験に対応したカリキュラムを教えることを主目的としており、クルマに関することならなんでも教えてくれるわけではありません。
指導員のなかにはさまざまなことを教えてくれる人もいるようですが、それらは基本的に雑談の延長であり、正式なカリキュラムとは異なることを理解しておくようにしましょう。
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