『KOBE MELLOW CRUISE 2023』5.20(SAT)兵庫・神戸メリケンパーク内 特設会場
5月20日(土)、21日(日)、兵庫・神戸メリケンパーク内の特設会場で『KOBE MELLOW CRUISE 2023』(以下、『メロクル』)が開催された。本イベントは「音楽・アート・ファッション・フードなど様々なカルチャーをクルージングするように贅沢に楽しむ」をコンセプトに、ヒップホップシーンの新しい都市型野外音楽イベントとして、昨年からスタート。音楽に限らず多くの文化を発信してきた港町・神戸を象徴するポートタワーの麓、メリケンパークの特設会場には、日本のヒップホップシーンを牽引する豪華なラインナップが一堂に会し、2日間にわたる饗宴を繰り広げた。今回はいくつかのアーティストをピックアップし、その模様をお伝えしたい。
Kiss FM KOBE DJ 川田一輝 撮影=ヨシモリユウナ
20日(土)の初日公演には、ALI、Awich、guca owl、Jin Dogg、JP THE WAVY、KEIJU、Kvi Baba、kZm、LEX、MonyHorse、PSYCHIC FEVER、SALU、梅田サイファー、MFS(O.A.)、そしてMCにはゆりやんレトリィバァが出演。過ごしやすい五月晴れとなったこの日、会場には早い時間からたくさんの観客が集まり、会場内のフードやファッションのブースで思い思いの時間を過ごしている。メリケンパークは神戸に遊びにきた観光客はもちろん、地元民も立ち寄る、海沿いの大きな公園。時折汽笛が聞こえる園内は海風が気持ち良いし、芝生や木陰でのんびりとした時間を過ごせる”チル”感が心地よくって、開演前からリラクシンな空気が漂っているのがいい。
撮影=ヨシモリユウナ
『メロクル』ではステージを「URBAN STAGE」「SEASIDE STAGE」の2つにわけて展開。都市型野外フェスというだけあって、どちらのステージも移動距離が短いのがポイントだ。ライブが終わり次第、すぐに次のステージへ足を運ぶことができるし、ちょっとした休憩なんかも気軽に取れるので、疲労感も少なくてすむ。ずっと音楽に浸れて、最初から最後まで楽しい時間が過ごせるのも、『メロクル』のグッドポイントだろう。
ゆりやんレトリィバァ 撮影=ヨシモリユウナ
開演まで会場内を散策していると、「URBAN STAGE」からMC・ゆりやんレトリィバァの開幕宣言が聞こえる。「落ち着いていきやぁ~」、いつものゆるっとした口調が妙にツボをくすぐってくる。ゆる~い空気の中でも、会場がぱっと明るくなったのは「声出し解禁」「マスク着用は個人判断で」「アルコール販売解禁」のお知らせだ。コロナ禍以前までの当たり前の光景が戻ってきた、それだけでも観客の喜びは大きい。大きな歓声に迎えられ、トップバッターに登場したのはALIだ。
ALI 撮影=Hoshina Ogawa
数多のヒップホップアーティストがそろう『メロクル』のなか、ファンクやソウル、ラテンといったルーツミュージックをベースにした彼らの登場は稀有だし、バンド編成でのアーティストはこの日唯一の存在だ。「ハートに火をつけにきたぜ!」、LEO(Vo)が声高らかに叫ぶと、『メロクル』の名前を冠した楽曲「MELLOW CRUISE」の熱量高いパフォーマンスで観客を早速魅了していく。この日のサポートドラムにはBOBOが参加するなど、リズムのタフさは圧巻! バンドとして初めて出演した音楽フェスが昨年の『メロクル』だったという彼らは2年連続の出演に喜びもひとしおで、次々に観客の体をご機嫌に揺さぶっていく。
ALI feat.梅田サイファー 撮影=Hoshina Ogawa
ヒップホップのイベントでは客演への期待も高まるが、『メロクル』ではその数の多さは尋常ではない。それはALIのステージでも同様で「最高の仲間との曲を聴いて!」と、梅田サイファーと「FEELIN’GOOD feat.梅田サイファー」やオープニングアクトのMFSと「EL MARIACHI feat.MFS」をプレイ。「音楽は最高って伝えたい!」、ジャンルを通り越え、血を滾らせる熱いステージに大きな歓声が送られた。
PSYCHIC FEVER 撮影=ヨシモリユウナ
「SEASIDE STAGE」のトップバッターは昨年7月にメジャーデビューした7人組ダンスボーカルグループ、PSYCHIC FEVER。開場と同時にステージに駆けつけるファンも多く、その期待値は言うまでもない。1曲目「RICH&BAD」から強いビートに乗っかり、エネルギッシュなパフォーマンスで魅せると、5月17日にリリースしたばかりの新作から疾走感ある「BAKU BAKU」、ジャージークラブサウンドを取り入れた「Highlights」など、ワールドワイドに活躍するグループらしいラインナップを展開。その後も、メンバー個々の個性を打ち出しつつ、息のあったタフなダンスパフォーマンスを見せ、6月から始まる全国ツアーへ向け、意気込みを語りつつ、全9曲を駆け抜けた。
撮影=Hoshina Ogawa
梅田サイファーは「せっかく声出しOKになったんやから、黙っとかんと声出して!」とサウンドチェックから会場を盛り立てる。この日は11MC+1DJの編成で、「KING」から互いの個性をぶつけあっていくと、ご機嫌なトラックの「かまへん」では関西弁モリモリのラップで観客にアピール。『メロクル』へは2年連続の出演となる彼らだが、今年はメジャーデビューや大型フェスへの出演など、ますますグループの勢いが止まらないのはご存じの通り。すでに来年の開催を見越し、「来年も出るんで! さらに進化したオレらを見てほしい」と、「トラボルタカスタム」「アマノタオロチ」など、変化球多め&個性バチバチな格も箔も違うラップで、関西の雄たる姿を見せつけてくれた。
Kvi Baba feat. KEIJU 撮影=ヨシモリユウナ
大阪出身のシンガーソングライター/ラッパーのKvi Babaは、いつものMC+DJスタイルに加え、MC+ギターでアコースティックバージョンのプレミアムなセットも。自身の存在がよりメジャーなものとなったキッカケでもある「TOMBI」からラップと歌を縦横するメロディックなフロウを響かせる。緩やかな歌声と心和らぐリリックの「Fight song」では、オーディエンスの表情もふわっと和らぎ、リラクシンな空気が満ちていく。機材トラブルでライブが中断する瞬間があったものの、「心から聴いてもらえたら」と、アコースティックバージョンで「二つ目の家族」「ガラスの男」などじっくりと言葉を届けるメローな楽曲で観客を酔わす。ラストは「同じ会場にいるんだから。MELLOW CRUISEハイパースペシャルを」と、KEIJUとともに「Too Bad Day But…」で盛大にフロアを沸かしてくれた。
kZm 撮影=Hoshina Ogawa
kZmは1曲目「TEENAGE VIBE」からアッパーなバースで瞬時にフロアの熱気を上げる。トラックがたった1秒流れただけで観客から盛大な歓声が沸き起こるのはさすが! 「YENTOWNからきたkZmです。これはもう夏だわ…」と、五月晴れを越え、夏日の暑さとなっていた会場で衣装のセレクトを間違えたとボヤきを入れるが、そうなればもちろん次曲は「Summer Of Love」だ。ロックテイストなドラムのビートはとにかくご機嫌で、そこからの圧倒的にハイなパフォーマンスに誰もが夢中になっていく。「バグり」でフロアに乱入したと思えば、「Yuki Nakajo」でメローに攻めるなど、縦横無尽な才能をこれでもかと見せつけてくれた。
撮影=ヨシモリユウナ
会場ではライブペインティングやアパレルショップの出店、ファッションスナップの撮影などが行われていた。会場は中華街・南京町が近いこともあってか中華テイストなデコレーションも。芝生エリアには人をダメにしちゃうビーズソファのyogiboも設置され、ライブの合間の休憩にもぴったりな空間が用意されていた。
『KOBE MELLOW CRUISE 2023』 撮影=ヨシモリユウナ
フードエリアには、神戸を代表するピザ店「JESUS PIZZA」や中華店「中華とお酒Marman」、カフェ&バー「Rudiez Cafe」など多彩なジャンルの飲食店が出店。なかでも、「JESUS PIZZA」では超特大のペパロニピザとドクターペッパーとのジャンキーな組み合わせがとにかく最高だった。音楽イベントではフェスグルメは楽しみのひとつだけど、なかでも地元グルメが食べられるのは気分も良いし、イベント後半へ向けての気合も高まる。
撮影=Hiroto Yorifuji
イベントも後半、「URBAN STAGE」でのJP THE WAVYは「WAVEBODY」から重低音を効かせたトラックで会場を揺さぶる。彼のライブではおなじみ、2人のダンサーもステージを右へ左へと観客を煽り続ける。中毒性のあるバースが続く「Neo Gal Wop」やUSヒップホップな「I’M FROM JAPAN」など、頭3曲で圧倒的な存在感とスキルを見せつける彼。「バイヴス、半端ないすね。最後までオレとブチ上がれる人どんだけいますか!」とオーディエンスに声を懸けると、ビートチェンジがたまらなく快感を誘う「iina」へ。「Cho Wavy De Gomenne」ではフロアへ飛び出し、頭をループし続けるパンチラインでとことん観客を煽っていく。
JP THE WAVY feat. PSYCHIC FEVER 撮影=Hiroto Yorifuji
ライブ後半にはPSYCHIC FEVERがゲストインし、JP THE WAVYが客演として参加した「Hotline(Remix)」も披露。JP THE WAVYはダンサー出身なだけあって、一気に大所帯となったステージでもしっかりとその存在感を誇示。
LEX 撮影=ヨシモリユウナ
国内のヒップホップシーンを牽引するラッパーたちが次々と登場する『KOBE MELLOW CRUISE』だが、若手ラッパーの活躍にもやはり注目したい。なかでも、LEXは次世代の中でも群を抜いた存在だろう。「King of Everything」で観客の反応を伺うかのように客席へ飛び出すと、昂るエネルギーをぶつけるような「GOLD」、攻撃力高いフロウが頭の上からブツけられるような「金パンパンのジーンズ」と、次々にその多彩さを見せつけていく。「今日は手ぶらで帰らないように、何か掴んで帰んだろ?」と「Move」で目が離せないほど、心のひだに触れる力強いリリックを紡いでいく。「JIYU」では空を仰ぐように歌うと、のど元の蝶のタトゥーがくっきりと羽ばたくように見えて、リリックに生命力が高まるよう。
撮影=ヨシモリユウナ
「Stranger」「Romeo&Juliet」とカラフルなショートトラックを次々に打ち出し、自分らしさをアピール。「なんでも言っちゃって」では「オレの兄貴はいつも最高なんだよ」と、先ほどライブを終えたばかりのJP THE WAVYがステージに。メロディアスでセンス抜群なフロー、耳に残る中毒性高いトラック、互いをリスペクトしたパフォーマンスに観客は盛大な歓声で応えていく。ラストはマイクスタンドを使い、「If You Forget Me」をハスキーな声でメロウに聴かせ、情感たっぷりなステージで楽しませてくれた。
撮影=ヨシモリユウナ
Awich 撮影=Hoshina Ogawa
初日のトリを飾るのは、Awich。昨年の『メロクル』でも圧巻のパフォーマンスで魅了した彼女だが、今年はさらに進化した&ズバ抜けたステージで会場を沸かしてくれた。「This is my Queendom!!」、声高らかに叫ぶと「Queendom」から心がひりつくリリック、真摯にまっすぐに届けるラップスタイルに目が釘付けになってしまう。ビジュアルと圧倒的な存在感から、ただそこにいるだけで強さが感じとれる。「ヘッドライナーとして、ここに立てて光栄です。こういうフェスを大事にしていきましょう。今日は誰と帰ろ~かな~」と、客席に視線を投げかけ、「どれにしようかな」「口に出して」へと続く。ダブルミーニングが堪らないキラーチューンに、余裕綽々な表情を見せながらのフローに男も女も、誰もが彼女のステージに魅入っている。
撮影=Hoshina Ogawa
「感謝の気持ちを込めて。子どもたちへの想いを込めた曲」と、「TSUBASA」ではいちラッパーとしてのAwichとして、女性として、母として、いろんな表情を見せながら人間力に満ちたリリックを丁寧に紡いでいく。メローなステージが続くかと思いきや、続く「POISON」では、今年もMCのゆりやんレトリィバァとコラボ。どこでだってふざけまくるゆりやんだけど、肝の据わったパフォーマンスでNENEのバースを刻み、Awichにぶつかっていく。もちろん、Awichも笑いあり、涙あり、ティッシュあり(ゆりやんのギャグ)で応える相思相愛っぷりに、観客も拍手喝采。
Awich feat. ゆりやんレトリィバァ 撮影=Hoshina Ogawa
ライブ後半は客演祭り! 「GILA GILA」でJP THE WAVYが、「Remenber」でKEIJU、「Link Up」でKEIJU&MonyHorseと次々にラッパー仲間たちがステージに登場。豪華すぎるステージに観客のボルテージもこの日一番の沸点を迎えるが、我こそは!と言わんばかりの勝気なステージングを展開していく彼女。
Awich feat. JP THE WAVY 撮影=Hoshina Ogawa
Awich feat. KEIJU&MonyHorse 撮影=Hoshina Ogawa
「仲間がいま神戸に集まっていることが嬉しい。もうすぐ夏が始まる、最高の夏にするために最後ブチ上がりましょう!」とラスト「Bad Bad」で初日の『メロクル』の饗宴は盛大な花火が打ちあがるなか、終幕へ。『KOBE MELLOW CRUISE 2023』2日目のレポートもぜひチェックを!
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=ヨシモリユウナ
取材・文=黒田奈保子 写真提供=KOBE MELLOW CRUISE 2023(撮影:Hoshina Ogawa、ヨシモリユウナ、Hiroto Yorifuji)
■ 次のページでは掲載しきれなかった写真も多数公開!
『KOBE MELLOW CRUISE 2023』PHOTO REPORT
『KOBE MELLOW CRUISE 2023』PHOTO GALLERY
「SEASIDE STAGE」
PSYCHIC FEVER
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
梅田サイファー
梅田サイファー 撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
MonyHorse
MonyHorse 撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
Kvi Baba
Kvi Baba 撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
kZm
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
guca owl
guca owl 撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
「URBAN STAGE」
MC・ゆりやんレトリィバァ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
MFS(Opening act)
MFS 撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
ALI
ALI I feat.MFS 撮影=Hoshina Ogawa
ALI I feat.MFS 撮影=Hoshina Ogawa
ALI feat.梅田サイファー 撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
Jin Dogg
Jin Dogg 撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
SALU
SALU 撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
KEIJU
KEIJU 撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
撮影=Hoshina Ogawa
JP THE WAVY
JP THE WAVY 撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
撮影=Hiroto Yorifuji
JP THE WAVY feat. PSYCHIC FEVER 撮影=Hiroto Yorifuji
LEX
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ
Awich
Awich feat. ゆりやんレトリィバァ 撮影=ヨシモリユウナ
Awich feat. ゆりやんレトリィバァ 撮影=Hoshina Ogawa
Awich feat. KEIJU
Awich feat. KEIJU&MonyHorse
Awich feat. JP THE WAVY 撮影=ヨシモリユウナ
Awich feat. KEIJU 撮影=ヨシモリユウナ
撮影=ヨシモリユウナ