[画像] 今季J1で注目すべき移籍。選手個人はもちろん、チームにとっても絶大なプラス効果が見込める7人

愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集
移籍によって飛躍が期待できる選手(1)
J1、海外からの移籍組

 ワールドカップの興奮からおよそ1カ月半が過ぎ、J1の新シーズン開幕も間近に迫っている。各クラブとも新戦力を加えてキャンプを行なっており、現在は開幕に向けた準備の最終段階といったところだろう。

 30周年を迎えたJリーグでは、以前に比べると移籍市場も活発な動きを見せるようになった。各クラブのレギュラークラスが移籍するケースも珍しくなくなり、ヨーロッパなどに比べればまだまだおとなしいものだとはいえ、シーズンオフの移籍動向がエンターテインメント化してきていると言ってもいいかもしれない。

 今季J1もまた例外ではなく、元の所属クラブで主力として活躍していた選手が、新天地でどんな働きを見せてくれるのか。そんな楽しみが膨らむ移籍が少なくない。


今季、古巣の鹿島アントラーズに復帰した昌子源(後列中央)と植田直通(後列右から2番目)

 その筆頭と言えるのが、新たに鹿島アントラーズに加わったCBコンビ、DF昌子源(ガンバ大阪→)とDF植田直通(ニーム/フランス→)だろう。

 いずれも鹿島でプロとしてのキャリアをスタートさせたふたりは、その後、海外移籍。ヨーロッパでのプレーを経験したCBコンビが今季、(昌子はG大阪経由にはなったものの)奇しくも同じタイミングで鹿島に復帰することとなった。

 CBは日本人選手に人材豊富なポジションとは言えず、外国人選手に頼るクラブも少なくないなか、日本代表クラスのCBが、それもふたりまとめて移籍加入するケースは非常に珍しい。かなり希少価値の高い移籍補強と言っていいだろう。

 昨季の鹿島は、ボランチが本職のMF三竿健斗をCBで使わざるをえないなど、CBはアキレス腱とも言うべきポジションとなっていた。それだけに、願ったり叶ったりの補強に成功した鹿島は、最終ラインが安定することで成績も自ずと上がっていくに違いない。

 もちろん、選手個人の飛躍という意味でも、昌子、植田ともに、この移籍をきっかけに日本代表への復帰も期待したいところだ。

 センセーショナルな主力級の移籍という点において、鹿島のCBコンビに劣らない注目を集めるのは、FC東京に新加入したFW仲川輝人(横浜F・マリノス→)だ。

 右サイドを主戦場とする快足ウイングは2019年、横浜FMをJ1優勝へ導くとともに、個人としてもシーズンMVPと得点王を獲得。横浜FMの顔とも言うべき存在となっていた。

 ところが、2020年以降は自身のケガとチームの戦力アップが重なり、出場機会は減少。横浜FMがタイトル奪還に成功した昨季も、31試合に出場したものの、先発出場は15試合にとどまった。

 それでも、スピードのあるドリブル突破に加え、ボックス内での落ち着いたフィニッシュワークは優れたものを持っており、コンディションさえ整えば、まだまだJ1のトップレベルで活躍できる可能性は高い。

 ましてFC東京は、アルベル・プッチ・オルトネダ監督就任後、ボールを保持して試合を進める攻撃的なスタイルを志向しており、横浜FMから加わる仲川にとっては、自身の経験を落とし込みやすい環境だと言える。

 当然、FC東京にとっても技術と経験を兼ね備えた貴重な新戦力。目指すスタイルを浸透させていくための、起爆剤としても期待される。お互いにとってプラス効果がありそうな、相性のいい移籍補強だと言えそうだ。

 また、移籍で動く主力級の選手は、日本人選手ばかりとは限らない。

 最近ではJクラブ間で移籍する外国人選手も多く、すでにJリーグでの実績があり、日本での生活にも馴染んでいる彼らは、"計算できる助っ人"として、移籍先での活躍が期待される。

 今季で言えば、名古屋グランパスに移籍加入のFWキャスパー・ユンカー(浦和レッズ→)、ともにセレッソ大阪に移籍加入のFWレオ・セアラ(横浜FM→)とMFジョルディ・クルークス(アビスパ福岡→)が、その代表例だろう。

 ユンカーは昨季、浦和で出番を減らしていたものの、スピードあるドリブル突破と優れたシュート技術はJ1でも屈指。昨季リーグ最少失点タイだったにもかかわらず、得点力不足が響いて8位に終わった名古屋にとっては、待望のストライカー獲得となったのではないだろうか。

 シーズンを通してコンディションよく働くことさえできれば、堅守速攻を武器とする名古屋にあって、チームの救世主となる可能性は十分にある。

 一方、C大阪に加わったレオ・セアラは昨季J1を制した横浜FMのチーム得点王。先発出場は14試合と少なかったが、それでも11ゴールを量産できたのは、途中出場の短い時間でも結果を出せるだけの際立つ決定力を備えていたからだ。

 パワフル、かつ正確なシュートは対戦相手にとって非常に脅威。若い選手が多く、まだまだ経験に乏しいC大阪の前線に、頼もしい点取り屋が加わったことは間違いない。

 また、ジョルディ・クルークスは派手さこそないが、堅実にハードワークができ、中盤でのチャンスメイクにも長けたレフティだ。C大阪の中盤は層が厚いが、異なるアクセントを加えられる存在となるはずだ。

 来日したはいいが、ほとんど試合に絡むことないまま契約満了になっていく外国人選手が少なくないなか、ここに挙げた3選手は現実的で手堅い補強と言っていいだろう。

 そしてもうひとり、最後に注目選手として挙げておきたいのが、柏レイソルに新加入したMF高嶺朋樹(コンサドーレ札幌→)である。

 札幌のアカデミー(育成組織)で育ち、筑波大卒業後、2020年に"古巣"の札幌入りした高嶺は、ルーキーシーズンから主力として活躍。2020年末には(国内組だけでの活動だったとはいえ)、東京五輪を目指すU−23代表候補にも選ばれている。

 力強いボール奪取に定評があるが、むしろ彼のプレーから強く感じるのはサッカーセンスのよさ。左利きで長短のパスセンスに優れ、ポジション取りの判断も正確だ。

 本来はボランチながら、札幌ではDFを任されることもあったのは守備力に優れているばかりでなく、戦術理解度が高いゆえのことだっただろう。

 裏を返せば、やや器用貧乏的なところも見られたわけだが、柏でポジションが定まり、そこで高水準のプレーを見せ続けることができれば、日本代表も十分に狙えるはずだし、それだけのポテンシャルは備えているはずだ。

 キャリア初の移籍をきっかけに、高嶺が"どう化けるのか"を楽しみにしている。