Micronの個人向けブランド「Crucial」から、新しいエントリー向けNVMe SSD「Crucial P3 Plus」と「Crucial P3」が登場した。前者はPCI Express 4.0 x4接続、後者はPCI Express 3.0 x4接続だ。上位モデルのP5 Plusや従来のエントリーSSDであるP2との比較も交えて実力をチェックしてみたい。

Micronのエントリー向け「Crucial P3 Plus」。PCI Express 4.0 x4接続だ

Micronのエントリー向け「Crucial P3」。こちらはPCI Express 3.0 x4接続となる

Crucial P3 PlusとCrucial P3は、接続インタフェース以外は共通というエントリー向けのNVMe SSDだ。キャッシュ用のDRAMを備えない、いわゆるDRAMレスで、変わりにメインメモリの一部をキャッシュとして使うHMB(Host Memory Buffer)に対応と、最近のエントリーでは定番と言えるスペックだ。

NANDはMicron製の176層QLC NANDと見られ、コントローラはDRAMレス&HMB対応のPhison「PS5021-E21T」を採用している。ハードウェア構成はどちらもまったく同じだが、インタフェースの違いから、Crucial P3 Plusはシーケンシャルリードが最大5,000MB/s、ライトが最大4,200MB/s、Crucial P3はシーケンシャルリードが最大3,500MB/s、ライトは最大3,000MB/sだ。そのほかスペックは下記の表にまとめている。

Micron製の176層QLC NANDと見られる

コントローラはどちらもPhison「PS5021-E21T」。DRAMレス&HMB対応でエントリー向けSSDでの採用例は多い

耐久性(TBW)は、QLCと見られることから1TBで220TBとそれほど高くはないが、その強みは高いコストパフォーマンスだろう。1TBでどちらも11,000円前後という価格はエントリーではそれほど珍しくはないが、4TBになるとCrucial P3 Plusで50,000円前後、Crucial P3で45,000円前後という価格はNVMe SSDとしてはかなりの低価格。4TBクラスのSSDは、そもそもまだ選択肢はあまり多くないが、Serial ATA接続のSSDを含めても低価格な部類だ。速度よりも容量でSSDを選びたい、という人にとっては有力な選択肢になってくれる。

まずは、CrystalDiskMark 8.0.4で最大性能をチェックしてみたい。Crucial P3 Plus、Crucial P3のほか、比較用として上位モデルのCrucial P5 Plus、旧エントリーSSDのCrucial P2だ。それぞれ容量は1TB。

CrystalDiskMark 8.0.4の結果

Crucial P3 Plus、Crucial P3ともほぼ公称通りのシーケンシャル性能が出ている。さすがに上位モデルのCrucial P5 Plusには届かないが、Crucial P2からは大幅に速度アップを果たしており、順当な進化と言ってよいだろう。

次は、実際のアプリケーションを使用するPCMark 10のFull System Drive Benchmarkを実行する。

PCMark 10−Full System Drive Benchmarkの結果

Crucial P3 Plusで2,820、Crucial P3で2,737というスコアはエントリー向けのNVMe SSDとしては優秀だ。Crucial P2から2倍以上スコアアップを果たしており、アプリのレスポンスなどなど体感性能はかなり向上した。

次は、ゲームのロードや録画、インストールデータの移動などゲーム関連のさまざまな処理を実行する3DMarkのStorage Benchmarkを試したい。

3DMark−Storage Benchmarkの結果

こちらもPCMarkと同じ傾向。十分高いスコアを出しており、ゲームインストール用のSSDとして快適に使える。

次にHD Tune ProのFile Benchmarkを用いて、200GBのデータを連続して読み書きを実行したときの速度をチェックしてみよう。

Crucial P3 Plus(1TB版)のHD Tune Pro 5.75 File Benchmark(データ200GB設定)の結果

Crucial P3(1TB版)のHD Tune Pro 5.75 File Benchmark(データ200GB設定)の結果

青色のラインが読み出し、オレンジ色のラインが書き込みだ。どちらも、容量の一部をSLCとして書き込むことで速度をアップする、いわゆる「SLCキャッシュ」を採用している。200GBの書き込みでは、このSLCキャッシュが切れる様子はなかった。恐らく、容量のほとんどSLCキャッシュとして利用し、空き容量がなくなるとQLCに置き換える方式なのだろう。200GB以上のデータを1度に書き込む機会は少ないと思われるので、速度低下はそれほど気にすることはないと言えそうだ。

最後に温度をチェックしたい。TxBENCHでシーケンシャルライト(データサイズ32GB)を10分間連続して実行した時の温度とデータ転送速度の推移を「HWiNFO Pro」で測定している。どちらもマザーボード(MSI MPG Z690 CARBON WIFI)のヒートシンクを装着した状態でテストした。

Crucial P3 Plusの温度と速度の推移

Crucial P3の温度と速度の推移

Crucial P3 Plusは書き込む速度が高速なこともあって、NANDは66度、コントローラは83度まで上昇しているが、サーマルスロットリングによる速度低下は見られなかった。Crucial P3は書き込み速度が落ちるため、NANDは59度、コントローラは71度まで下がった。マザーボード標準のヒートシンクでまったく問題なく運用できると言える。

Crucial P3はインタフェースの制限もあって最大速度はCrucial P3 Plusに及ばないが、4TBのコストパフォーマンスの高さは素晴らしい。容量を求めている人には魅力的なハズだ。その一方で、Crucial P3 PlusはPCI Express 4.0 x4接続に対応しているので、PS5の増設に使えるという強みがある。手軽な価格でPS5のストレージ容量を増やしたい人にはピッタリだ。どちらもDRAMレス&HMB対応としては性能がよく、Crucialのブランド力、コストパフォーマンスのよさから新たなエントリーSSDの定番になるだろう。