とある釣り系YouTuberの行動が、「生態系を壊しかねない」と波紋を呼んでいる。

問題となったのは、「365日釣り 【究極の釣り】Extreme Fishing」というチャンネルを持つYouTuberのリッキーが投稿した動画だ。

9月3日、リッキーは自身のTwitter上で《東北で釣って飼育していた#ライギョ 近所の川へ放流 #雷魚 繁栄してほしい》と投稿。東北で釣ったという雷魚を別の地域の川に放流したことを報告したのだ。YouTubeのショート動画も合わせて投稿されており、そこにはライギョを近所の川に運び、放流する様子が映されていた。

’21年10月に「近所の川でペンシルを投げたら!まさかの釣果 湘南【トップウォーターゲーム】」という動画を投稿しているリッキー。ライギョは湘南にある、どこかの川に放流されたのかもしれない。

中国や朝鮮半島などが原産地の雷魚は、いわゆる“外来種”。日本には、大正時代に持ち込まれ、以後全国に広がったといわれている。SNS上では、外来種である雷魚を放流することの生態系への影響を懸念し、リッキーの行動を批判する声が相次いだ。

《特定外来種でないとはいえ、外来種の放流は生態系への悪影響になるのでやめてください》
《「究極の釣り」って書いてあったけどこれって炎上とかの方の釣りなの 雷魚って言うか外来種って放流しちゃ駄目だよね…》
《雷魚を放流…外来種を放流すると生態系の破壊が心配されます…飼育するなら正しい知識を持った上での飼育をお勧めします》
《もう釣りはやるな 川はお前の持ち物じゃないんだ!》
《これはやっちゃダメでしょ》

投稿が大炎上となったリッキー。現在、当該動画やツイートを削除。またTwitterも鍵アカウントとなってしまった。

今回問題となった雷魚は外来種ではあるが、法律によって飼育・栽培・運搬・輸入・放出などについて規制されている特定外来生物には指定されていない。また、放出された雷魚は国内の川で釣られたもの。

元々国内にいた外来種を、釣り上げた地域とは違う場所に放流した場合、どのような影響が考えられるのか。環境省に問い合わせたところ、担当者より以下のような回答が返ってきた。

「特定外来生物に限らず、外来種には二次被害等が考えられます。ですから、基本的に“放出することは問題”と考えています」

雷魚は特定外来生物ではないものの、元々生息していた地域と異なる場所に放出することにはリスクが伴うというのだ。

■環境省「鮎への食害など在来生物への影響を懸念」

環境省は「外来種被害予防三原則」を提唱している。それは、こういったものだ。

1.「入れない」悪影響を及ぼすおそれのある外来種を自然分布域から非分布域へ入れない
2.「捨てない」飼養・栽培している外来種を適切に管理し、捨てない(逃がさない・放さない・逸出させないことを含む)
3.「拡げない」既に野外にいる外来種を他地域に「拡げない」(増やさないことを含む)

そのため、担当者はリッキーの件について「この三原則には則っていません」とコメント。そして、“放流によるリスク”を語った。

「外来種が定着すると、在来種を食べたり住処を奪ったりなどの影響が考えられます。雷魚の場合、鮎への食害など捕食による在来生物への影響が懸念されています」

また、元々国内に生息する生き物でも、その生物がいなかった地域に持ち込まれた場合には、「外来種」となり、それ以前からその地域にいた生物に影響を与える場合があるという。たとえばカブトムシは、元々は本州以南にしか生息していなかったのに北海道に入ってきてしまった「国内由来の外来種」なのだ。

そのため環境省の担当者は、こう話す。

「国内由来の外来種についても、非分布域や全く違うところに持ち込むのは問題になる場合があります。

例えば、外来種の問題として遺伝的かく乱というものがあります。同じ種類の生き物でも、地域ごとで微妙に異なる遺伝子を持っている場合があります。外来種と交配することで、地域独自に形成されてきた遺伝的特徴がなくなってしまうかもしれません」

たった一つの生き物でも、生態系や社会に大きな影響を与える可能性がある。釣った場所と異なるところに、魚を放流するのはやめた方がいいようだ。