前方のパネルのメーターやスイッチはどれもほとんど動いていない。メーターはマイル表示。納車の日に窓ガラスのレバーが外れた。クーラーをつけると水温が上がるのでつけない。「これほどいい状態のマリブはない」(じゅんいちさん)

 ガソリン価格が高騰し、政府による補助金がなければハイオクが1リットルあたり200円を超えるとの予想もされている。一方で、1980年代のシビック、アコード、インテグラなどの中古車市場価格も上昇中。

 燃費が圧倒的に悪そうな旧車に乗るその理由を、旧車マニアのレジェンドたちに聞いてみた。

「自分で車を買えるようになったら古いアメ車に乗りたいとずっと思っていて。たどり着いたのがシェベルのコンバーチブルでした。当初の予算よりも150万円高かった(笑)」

 購入して2週間後にはラジエーターが壊れ、エンジンや足回りをメンテナンス。部品の交換など、6年かけて300万円以上の費用がかかった。

「この車でキャンプに出かけて、ハンドルがボコッと抜けたことがあります。そのときは偶然、200メートル先に解体工場があったので、そこで修理してもらいました」

 57年前の車だけに、予想外のトラブルが起こるのは日常茶飯事だという。

「雨漏りします。しかも、この幌を開閉するたびに、雨漏りする場所が変わる。いちばんひどいときは、雨がダバダバと流れてきて、左手にバスタオルを巻いて運転したこともあります」

 じゅんいちさんはキャンプ芸人としても活動しているが、支障はないのだろうか?

「山道を走って、その振動でハンドルが抜けるくらいですからね。こいつをオフロードに連れてってはいかんと、そのときに学びました。だから、キャンプ用にパジェロミニを買いました」

 車のウイークポイントを違う車で補う。これで楽しみは倍に増える。

このスタイリッシュなマリブの見た目以外のセールスポイントは?

「ないでしょう」

 じゅんいちさんは、割り切りがすごい。マリブは燃費が悪く、エアバッグやシートベルトがない。極端な言い方をすると、日産マーチのほうが性能的には上…。

「しかもね、この車よりマーチのほうが速いんですよ! 高速でも軽にガンガン抜かれます。でもね、それは便利な車を選ぶという考え方でしょう? 僕はライフスタイルとして選んでいるんです。だから車に対する価値観が違います」

 じゅんいちさんは、アメリカの古い映画に出てくる世界に憧れを持っていた。

「ハーレーやシボレーに乗ってバーで酒を飲んでビリヤードに興じる。そんなアメリカンカルチャーの映画を体現している感じです。子供のころに憧れていた車に乗る。旧車、最高じゃないですか!」

●乗っている旧車
シボレー・シェベル・マリブSS (1965)《燃費 3.6km/L》

日本に数台しかないコンバーチブルタイプ。シートベルト、ヘッドレストがない。「排気量は5700ccですが、走行距離などは不明。都内の渋滞対策としてファンを2つつけました」

じゅんいちだびっどそん
1975年2月4日生まれ 兵庫県出身 お笑い芸人として1997年デビュー。YouTubeチャンネル「ちゃんねるダビッドソン」でキャンプ動画を不定期配信中