子どもが生まれると、ママ友とのお付き合いが始まりますが、ここに夫が加わると“家族ぐるみのお付き合い”になります。こうしたお付き合いが向いている人、不向きな人、状況に応じて…と考える人など、個々のスタイルがあります。「子どもたちが喜ぶから仕方なく…」の人もいることでしょう。

 今回は、私が知る「家族ぐるみのお付き合い」エピソードで、特に印象的だったものをご紹介します。

家族同士のお付き合いが「離婚」の背中を押した

 裕美子さん(35歳、仮名)と恵さん(37歳、同)は、双方の妊娠中にSNSで知り合いました。家が近かったこともあり、会ってみたところ意気投合。お互いに第1子の妊娠で、出産や育児のさまざまな不安を一緒に乗り越え、夫も含めて頻繁にお互いの家を行き来する間柄になりました。

 子どもを夫に預けて、2人で飲みに行くことも多くあります。そんなときはいつも、お互いの夫の愚痴を言い合っていました。裕美子さんはパキパキと行動する姉御肌、恵さんはじっくり考える慎重派で、正反対といえるくらい違うのですが、価値観は合っていました。そして、お互いの夫の性格が不思議なほど似ていたそうです。夫たちの星座が共に水がめ座だったそうで、「水がめ座の男はどうしようもない」が2人の口癖でした。

 ある日、裕美子さんは夫の借金がきっかけで、実家に子どもを連れて帰り、「こうなったら離婚だ!」と語気荒く、恵さんに話しました。これまで散々夫の浪費に悩まされている裕美子さんを恵さんは見ていたので、「離婚に向けて応援するよ」と励ましました。

 その数カ月後、恵さんにも災難が降りかかります。夫が、会社の同僚と浮気をしているという疑惑が浮上したのです。夫と同じ会社に勤める女性が、恵さんと同じ保育園に子どもを預けていて、彼女が「うわさがあるわよ」と教えてくれました。実は、恵さんの夫は学生時代から浮気癖の持ち主で、武勇伝として語るタイプ。結婚後もちょこちょこと浮気が発覚していました。

 恵さんはこれまで、子どもがまだ小さいということもあり、聖母の気持ちで浮気を許してきました。しかし今回は違います。恵さんの心をよぎったのは、裕美子さんが「離婚だ」と騒ぎ始めていることです。彼女が一歩を踏み出したのだから、自分もできる。「水がめ座のダメ男と離れてやる」と。苦楽を共にした裕美子さんと一緒なら、離婚しても子どもを育てられるという強い確信が芽生えたといいます。

 そして1年半がたった頃、恵さんから離婚報告がありました。裕美子さんの自宅に近いマンションに住み始めたそうです。一方、裕美子さんは元さやに収まっているという意外な展開です。ママ友が勇気をくれて、新しい人生を歩み始めた「きっかけはママ友」離婚でした。

夫の収入格差がきっかけで疎遠に

 麻沙子さん(38歳、仮名)と結子さん(34歳、同)は会社の同僚で、同じ時期に結婚し、出産しました。育休を取る社員がいない会社だったので、お互いに助け合い、産後も互いの家を行き来する家族ぐるみの付き合いをしていました。

 しかし、子どもの小学校受験がきっかけで疎遠になります。麻沙子さんと結子さんは4つ違いですが、共にエンジニア職で、収入に差はありませんでした。麻沙子さんの夫はフローリストで、決して収入が多い方ではありません。一方、結子さんの夫は同じエンジニアだったので、収入に余裕があるダブルインカムです。

 麻沙子さんは、子どものことを考えて受験させたいと思っていました。そのことを夫に話すと、「やりたければやればいい。でも、僕の収入が増えることはないから、生活が大変になる」と言われたそうです。麻沙子さんは、やりくりすれば大丈夫、と受験を決心。節約生活の始まりです。

 外食したり、好きな洋服を買ったりすることはできません。ランチは結子さんと、情報交換も兼ねて外で食べていた麻沙子さんですが、お弁当に変えました。一方の結子さんは、ライフスタイルは変わりません。新品の服も買えます。やがて、麻沙子さんは彼女に嫉妬するようになり、次第に疎遠になっていきました。その上、夫の経済力が足りないことにいら立ち、夫婦げんかも頻発。結果、諸所のお金が足りないと分かり、受験は諦めることにしたそうです。

 家族ぐるみの付き合いは、ママ同士だけの仲より、深くお互いの生活に入り込むものです。生活レベル、教育観、夫婦仲の良しあしが丸見えになります。そうしたことを「気にしない」タイプなら問題ありませんが、見えの張り合いや、嫉妬心の積み重ねでつらくなるようであれば、直ちに「やめる」のが正解です。こちらが気にしなくとも、先方が気にしている場合もあるので難しいのですが、察する力を磨くしかありません。そして、もし自分の夫が人見知りやシャイなタイプなら、夫の精神的負担も増えます。1つ目の裕美子さんの事例は、お互いの家族の苦しい部分を分かち合っていたので、ポジティブな結果になってよかったケースです。

 家族ぐるみの付き合いをするかしないかはパートナーとよく話し合い、深みにはまらぬよう、サラリとするのがよいのではないでしょうか。