By National Gallery

AIに関する技術開発は急速に進んでおり、文章生成や文章要約、新型コロナウイルス感染症の検出など、さまざまな分野でAIが活用されています。AIの中には絵画が本物か偽物かを見分けられるものが存在し、そのAIを用いた分析によって美術館に長年展示されていた作品が偽物である可能性が浮上しました。

Was famed Samson and Delilah really painted by Rubens? No, says AI | Art and design | The Guardian

https://www.theguardian.com/artanddesign/2021/sep/26/was-famed-samson-and-delilah-really-painted-by-rubens-no-says-ai

今回AIによって偽物であると判定された絵画は17世紀に活躍した画家・ピーテル・パウル・ルーベンスが描いたとされている「サムソンとデリラ」です。「サムソンとデリラ」は1980年にロンドンのナショナル・ギャラリーが250万ポンド(現在の価値で約660万ポンド・約10億円に相当)で購入し、その高額さから話題となっていましたが、当時から一部の専門家によって偽物である可能性を指摘されていました。



By National Gallery

偽物であると主張する専門家は、その根拠としてサムソン(男性)のつま先が途切れていることを挙げています。実際に、ルーベンスが描いた「サムソンとデリラ」の版画とされる作品を確認すると、つまさきが途切れずに足全体が描かれています。



また、ルーベンスと同時期に活躍したフランス・フランケンが描いた絵画の中に配置されている「サムソンとデリラ」も、つま先が途切れずに描かれています。このような描かれている範囲の違いや他の作品と比べた色彩の違いを根拠に、ナショナル・ギャラリーが購入した「サムソンとデリラ」は偽物であると指摘されてきました。



そして新たに、Art Recognitionが開発した絵画分析AIを用いて「サムソンとデリラ」の分析が行われました。このAIは同一画家によるものとされる作品を複数枚スキャンして筆の動きの特徴を認識し、それぞれの作品が同一画家によって描かれた可能性を割り出すことができます。

分析の結果、ナショナル・ギャラリーの「サムソンとデリラ」は「91%偽物」と判定されました。Art Recognitionの執行役員を務めるカリーナ・ポポヴィッチ氏は分析結果について「私は大きなショックを受けました。間違いがないことを確認するために分析を繰り返しましたが、結果は常に同じでした」と述べ、分析結果の正当性を強調しています。

ナショナル・ギャラリーの広報担当者はThe Guardianの取材に対して、「証拠が完全に公開され、適切に評価されるまではコメントできません」と述べています。