「うまくいっている人のやり方をひたすらパクり続けてください」と言うひろゆきさん(撮影:中野エディット)

巷では空前の「独学」ブーム。「そこかしこにはびこるウソにダマされないで上手に生きていくには、意外と独学の力が使えるということがわかると思いますよ」と語るのは、「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」の設立者で、現在は多数の企業に携わる「ひろゆき」こと西村博之さん。

プログラミングや外国語を独学で習得した経験を持ち、「独学にパクリは不可欠」とアドバイスするひろゆきさんの最新刊『無敵の独学術』より一部抜粋、再構成し、お届けします。

パクリのすすめ

社会に出てそこそこやっていけるという人は、やるべき道筋を真似するのがうまいというだけのこと。

うまくいっている人のやり方をひたすらパクり続けてください。
その100パーセントのパクリにプラスアルファを少し足すだけで、けっこう世の中で勝てたりするのです。

「人の真似をして生きるのってむなしくないですか?」と聞かれたりもします。

そういうことを言ってくる人も、自ら、誰かがつくった日本語という言語を真似して話しているわけです。本当に真似がイヤなのであれば、日本語を使わないで生きてみるのがいいんじゃないかと思ってしまいます。

そもそも、うまくやっている人の方法をパクることなしに、独学なんてものは不可能です。

プログラミングに限らず、料理だろうとなんだろうと、世の中のあらゆるものは真似し真似されていくのが当たり前です。わざわざ「卵かけご飯は俺が発明した!」と言う人は、たぶん世の中にはいないと思います。

たとえば、「リバーシ」というゲームがあります。

このゲーム、「コマ」の色が白黒ではなくて赤と黒になっているだけで、その内容はどう見ても「オセロ」なわけですが、オセロという名前は権利で保護されているから、その名前さえ使わなければいい、と。
「数独」と「ナンプレ」でも同じことがいえます。

ゲームの仕組み自体は、誰もが思いついてしまうから、権利で独占させるのは難しいのだと思います。絵や音楽はパクったらさすがに負けますが、ゲームの仕組みは、仕組みというだけですからパクれてしまうのです。

パクリは重要。

でも、パクリをうまくやれる人とやれない人が世の中にはいます。

ありがたいことに、僕のユーチューブ動画の「切り抜き」チャンネルが増えてきていまして、今だとたぶん100チャンネルくらいになっていると思います。

古い「切り抜き職人」さんだと、4年前くらいからやっている「にーとちゃんねる」さんがいて、最初は鳴かず飛ばずだったのが、最近、同様のチャンネルが増えてきたこともあって広告が入るようになり、ようやく儲かるようになってきていると思います。

今いちばん売れているのは、始めて1年くらいの「せまゆき」さんだと思いますが、あの人は、動画を単に切り抜くだけではなく、複数の動画から切り貼りしてひとつのテーマでくくったり、いちいち字幕を入れたりと、丁寧に付加価値をつけることで再生数を伸ばしています。

ほかにも再生数が伸びている人を見ると、タイトル設定やサムネイル画像に一工夫加えるなど、うまくやっているんですね。そういう工夫を考えられるような人は、ほかの分野にいってもうまくいくと思います。

僕の動画の「切り抜き」をやめて、次にユーチューバーのヒカルさんの切り抜きをやったとしても同じ方法論は使えるでしょうし、まとめサイトでうまくやれた人は、「ガールズちゃんねる」だとか、「大手小町」だとか、ほかの分野でもそれなりにうまくやっていけると思います。

つまり、うまくやれるというのは、優秀かどうかということは関係なくて、うまくいってるところのいいとこどり、真似をできるかどうかということです。

オリジナル性で才能を発揮する必要なんてありません。

再生数が伸びてチャンネル登録数が増えているところを見れば、「こういうところを丁寧にやっているんだな」ということがわかる。それを丸パクリすればいいだけの話です。

逆に、字幕もつけない、サムネイルも凝らないような人は動画の再生回数も伸びません。表面上は似たようなことをしているけれど、うまく真似できていないのです。

真似してもうまくいかない人

僕の動画の切り抜きをする際は、「ガジェット通信」というところに「切り抜きやります」という連絡をもらうようにしていますが、連絡をしてくる人のなかで、この人はうまくいかないだろうなあ、というタイプの人がいます。

たとえば、1、2カ月くらいですぐやめてしまう人。

4年くらい前からやっている「にーとちゃんねる」さんは、ユーザーがちょっとずつしか増えず、思ったほど売り上げが伸びなかった時期を乗り越えて今があります。

そんなことは当然なのに、それが我慢できなくて1カ月くらいでやめてしまう人がけっこういます。

しかも、やめるにあたってコンテンツを全部消したりしているのです。

全部消してから次に行くというのは、オリエンタルラジオの中田敦彦さんの悪い影響もあると思います。中田さんはユーチューバーとしての活動がうまくいかなかったときに、もともとあった動画を「全消し」して、新しく「YouTube大学」というチャンネルを立ち上げて成功しました。

でも、それが成立するのは固定ファンがいる中田さんくらいのものです。
固定ファンがいないのに動画を全消ししたら、誰かが間違えてクリックしてくれる可能性も全部消えるだけです。

「無駄な努力を何度もするのは効率が悪いよね」という、普通に考えればわかることをわかっていない人がいて、そういう人はパクリもうまく続けられません。

成功話はおトク情報

他人の成功話を聞くと、「自分はこんなに苦労しているのに、コイツが成功してるのは許せない。ムカつく!」みたいな反応をする人がいます。

くやしがるのは勝手ですが、僕にしてみれば、「おトクな情報」をみすみす見逃しているという意味でも残念な人たちです。

僕はうまくいっている人を見ると、「こんなに簡単に成功できるんだ、人生楽勝じゃん!」「いい情報を手に入れた、真似しよう!」と考えます。

他人が成功している話は僕にとって、いい情報。
これを真似すればいいんだから世の中はラクだな、と思えるお手本です。

そのうえ、成功している人の「隙(すき)」が見つけられたら、「あ、この人はまだこれをやっていないから、僕がこれをやればプラスアルファになって勝てるじゃん!」ということになります。

すごくおトクな情報です。

つまり、成功している例をたくさん見ておけば見ておくほど、「こうやって成功するんだ」「成功する人ってこういう性格なんだ」「成功する人はこういう考え方をするんだ」というおトクな情報がどんどんたまっていくので、生きやすくなっていきます。

成功した人の真似をするときにはコツがあります。一気に全部を真似しようとしてはいけません。

人の動きには、喋り方に始まり、立ち居振る舞いやイントネーションなど、いろいろな特徴があります。それを一度に真似しようとすると、気にすることが多くなりすぎてしまい、うまく真似できません。


だから、まずは立ち居振る舞いだとか、言葉遣いとか、受け答えのうまさだとか、何かひとつだけを真似するようにしたほうがいい。

ちなみに僕は、新しいサービスをつくるときに規約をパクります。

2019年につくった「ペンギン村」というサービスは、規約を考えるのが面倒だったので、キングコングの西野亮廣さんがやっているオンラインサロンの規約をパクりました。西野さんがペンギン村の規約をみたら、「あ、パクってる!」と絶対にわかるレベルです。

ですが、規約には思想や感情といった表現はないので、著作物としての権利を主張するのは難しいのではないかと思います。

加えて、西野さんであれば、たぶん笑って許してくれるのではないかと思ったというのもありますが……。