目標を早く達成できる人は何が違うのか。2019年度秋の東大模試で全国1位を獲得した現役東大生の相生昌悟さんは「重要なのは目標を細分化することだ。そうすればムダな努力をしなくて済む」という――。
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■報われない努力はなぜ報われないのか

みなさんは、「努力は報われる」という言葉についてどう思うでしょうか。おそらく正しいと思う人も、間違っていると思う人もいると思います。

僕の回答は、「言葉が足りない」です。「しっかりと目的を明確化した努力は報われる」、という条件がつけば、正しいのではないでしょうか。

確かに努力は報われます。しかしこの「努力」という言葉はすごくくせ者で、ガムシャラでなんの意味もない努力では、いつまでたっても目標は達成できません。

逆に、努力の目的が明確で、「何を努力しなければならないのか」が見えているのであれば、必ず努力は報われます。自分に足りていないところや自分が到達したいと思っている部分をしっかりと把握して努力をしているわけですから、報われないわけがないのです。そして東大生は、この「目的」の作り方がしっかりしています。他の人よりも何十倍も、「努力の目的」の明確化の能力が優れているのです。

努力が報われない人や、頑張ってもなかなか知識を吸収できないと思っている人たちの共通点は、実は「ゴールが明確になっていないこと」に尽きます。

例えば、何冊も本を読んでいるのにもかかわらず、なかなかその知識が身についたような気がしない……という悩みは割と多くの人が抱えていると思います。

それは、本を読む目的が明確化されていないことが原因なのです。「どうして自分はその本を読むのか?」という目的が明確になっていないから、本から得るべき知識を吸収しないままに本を読み進めてしまっていて、最終的に何も残らなくなってしまうのです。

■読書でも必要な知識だけをインプットする

そもそも、多くの場合、「何冊も本を読むこと」自体が目的になっている場合が多いですね。手段と目的が逆転してしまうから、うまくいかないのです。

逆に東大生は、「何冊も本を読む」ことを目標にはしません。「知識を得たい」のであれば、どんな知識が欲しいのかをしっかり明確にしてから本を読むので、数ページ読んで「ああ、この本は自分の持っている知識以上の内容は教えてくれないな」「欲しい知識を得られる本じゃないな」と思ったらそもそも買いませんし、買っている場合でもすぐに読むのをやめてさっさと古本屋に売りに出します。「損だな」と思ったらすぐに切るのです。

そして、この「こういう知識を得たい」という解像度がとても高いのです。「この分野の、この領域の、こういう場面で使えるような、こういう知識が欲しいんだよな」ということを細分化して明確にしているのです。

例えば「ある分野の基礎的な知識を得たい」と思った場合、「取りあえず基礎の部分の知識を得たいわけだから、基礎じゃない部分は省いて読もう」と解釈し、応用的な内容があればすぐに切り捨てを行います。目的とは異なるのですから、当然です。このように、目的が明確なら、ムダな努力をする時間もないのです。

では、東大生は「目的を明確にする」能力をいつ身につけているのでしょうか?

これは、私は「受験の時だ」と考えます。

受験勉強は、圧倒的に「どこまで目的を明確にできるか」の勝負です。

大抵の人は「勉強して、その結果がテストで測られる」と考えていると思いますが、逆です。「テストで問われる能力を分解して、どんな勉強が必要なのかを考える」という逆算こそが受験で最も必要なことなのです。

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■「12分で7点取れるようにこの範囲の訓練をしておこう」という発想

例えば、東大生は模擬試験で毎回、各科目・各大問の目標点数を1桁レベルで明確に設定しています。

「英語の2Aの問題は自由英作文で12点の配点だから、7点獲得できればいいはずだ。これにかけられる時間は12分程度なので、12分で7点取れるようにこの範囲の訓練をしておかなければならない」

全ての大問・全ての問題で、このレベルの細かさで目的明確化を実践しています。

翻って、多くの人はテストで細かな目標点数を決めているでしょうか?

「良い点取れればいいな」と思っているかもしれませんが、その「良い点」って何点なのでしょうか? 割とこれを考えずに勉強している人って多いですよね。どの科目のどの分野のどの問題で何点取るのか明確になっていないから、ダラダラした勉強になってしまっている場合が非常に多いように感じます。かく言う私も、以前は漠然と「いい成績が取りたい」とだけ考えていて、成績が伸び悩んでいました。頑張って努力しても、目標が明確でないから成績が思うように伸びない経験をしたのです。

■目的を明確化することが、いわゆる「頭の良さ」の正体

別に東大生は、頭がいいわけではありません。ただ目的を明確化できるだけなのです。

相生昌悟『東大式目標達成思考 「努力がすべて」という思い込みを捨て、「目標必達」をかなえる手帳術』(日本能率協会マネジメントセンター)

目的を明確化することこそが、世の中で言われている「頭の良さ」の正体なのです。

ムダなことを何時間もできる人ではなく、徹底的に目的のための努力を積み重ねられる人の方が結果につながりやすいのです。

ではどうすれば目的を明確化できるのか? その回答は、「分解」にこそあると思います。つまり、何かを細かく定義することです。

「英語の試験で70点取りたい」ではなく「英語のこの分野のこの問題で何点取って、こっちでは何点取りたい」と定義する。

ビジネスの場面なら、「コミュニケーションスキルを得たい」ではなく、「営業の場面で使える、質問の能力を向上させたい」と定義する。

細かく細かく、常に分解して思考することを意識するのです。そこで大切なのは「言葉の定義」です。「コミュニケーション能力」や「思考力」や「読解力」などを目的にしても、多分多くの人は何にも努力できません。具体性がないのですから当然です。「明日から思考力をゲットするために頑張ろう!」と言っても、何をしたらいいか不明瞭ですよね。

大切なのは、言葉も分解することです。「コミュニケーション能力を上げる」のであれば、プレゼンテーションをするのか、説明をするのか、質問をするのか、それともギャグセンス・ユーモアセンスを磨くのか、状況によって全然変わってくると思います。大切なのは、このように物事を分解するスキルなのです。

ということで、「目的を明確化できるかどうか」のスキルをこそ、高めていくべきだと私は考えます。みなさんの何らかの参考になればうれしいです。

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相生 昌悟(あいおい・しょうご)
現役東大生
2000年生まれ。地方公立高校出身の現役東大生。高校入学当初から勉学に励み続けるも、思うような結果に結びつかず、努力の仕方を考え始める。最終的に、努力を必ず目標達成に導く「目標達成思考」を確立し、高校3年時に東大模試で全国1位を獲得する。その後、東京大学に現役合格。現在は自身の経験を全国の教師や学生に伝えるべく、「リアルドラゴン桜プロジェクト」で高校生にコーチングを行っている。また、noteでは「普通の東大生 ねこ」という名前で東大の過去問解説を行っている。なお「相生昌悟」は筆名で本名ではない。
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(現役東大生 相生 昌悟)