by Sergey Galyonkin

現地時間2020年8月13日、App StoreやGoogle Playで配信されるアプリに課せられる「売上の30%」という高額な手数料を巡って、Epic GamesがAppleとGoogleを訴えました。この一件の行く末やEpic Gamesの勝算について、Apple対SamusungやOracle対Googleなどの訴訟を請け負った経歴を持つスマートフォンの特許と独占禁止法に関する専門家であるフローリアン・ミュラー氏と、著名Appleアナリストとして知られるニール・サイバート氏がそれぞれ分析しています。

Interview: Two experts weigh in on Epic's lawsuit against Apple | iMore

https://www.imore.com/interview-we-discuss-everything-you-need-know-about-epic-vs-apple-florian-mueller

App Storeで配信されるアプリに課せられる「売上の30%」という高額な手数料を不服としたEpic Gamesは、同社の人気ゲームである「フォートナイト」のiOS版アプリに、App Storeを経由せずにゲーム内通貨を購入できる新システムを導入しました。このシステムによってEpic Gamesは手数料を支払う必要はないとしていましたが、Appleは規約違反を理由としてiOS版フォートナイトをApp Store上から削除。これに対して、Epic Gamesは「公正な競争」を求めてAppleに対して訴訟を開始。さらに、App Storeと同率である30%の手数料を課しているGoogle Playも問題だとして、Googleをも訴えました。

「フォートナイト」開発元のEpic GamesがAppleを提訴 - GIGAZINE



Epic Gamesが今回の訴訟で求めているのは、App StoreやGoogle Playを経由しないアプリ内課金の容認です。Epic Gamesは「アプリストア間、特に決済サービスプロバイダ間の競争が消費者の利益になる」と主張し、AppleやGoogleが自社ストアに課している30%の手数料を「税金」「独占によって生まれた割合」と表現しているとのこと。ミュラー氏は「Epic Gamesの本当の望みは、『30%という手数料の引き下げ』ですが、実現のための布石としてApp StoreやGoogle PlayにPaypalのような非公式な決済手段の容認を求めている」と指摘しました。

Epic GamesとApple・Googleの訴訟は、「独占禁止法」が争点になると見られています。しかし、ミュラー氏は「Epic Gamesは苦戦を強いられるだろう」と予測。2020年8月11日にサンフランシスコの連邦控訴裁判所が、大手半導体メーカーのQualcommを「十分なライセンス料を支払わないスマートフォンメーカーに半導体を供給しないのは優越的地位の乱用だ」という連邦取引委員会(FTC)の訴えを棄却し、「非常に競争的ながらも違法な反競争的行為に当たらない」と判決を下した一件を挙げて、「独占禁止法と認定されるためのハードルは高い」と指摘しました。

独占禁止法を専門とするミュラー氏によると、この手の訴訟の多くは1〜2年で決着がつくとのこと。しかし、Epic Gamesは訴状の中で、Epic Gamesに対する特別扱いを求めたわけではなく、AppleやGoogleのプラットフォームに抜本的な改革をもたらしたいと明言していることから、取引による決着ではなく全面対決を望んでいる可能性が高いとのこと。そのため、この訴訟が少なくとも控訴審に至ると考えられることから、「決着までには5年以上かかる」とミュラー氏は見ています。



一方、Appleを専門とするアナリストであるサイバート氏は、「App Storeに関する経済的な問題」について解説しています。サイバート氏は自身の考えとして、「初年度30%という手数料は他のプラットフォームと同等であり公正なものです」と明言。ただし、手数料が次年度以降は一律で15%となる点に関しては、「契約期間に応じて15%よりさらに下がるほうが合理的」とコメントしています。

さらに、サイバート氏はApp Storeの利益率については、「一般的な想像よりも少ない」と言及。App Storeの収益は公開されていないものの、Appleの年間総売上に対してApp Storeが占める割合はごくわずかである点から、AppleがApp Storeの手数料で暴利をむさぼっているわけではないと指摘しました。

サイバート氏は、App Storeのガイドラインは収益ではなくユーザーエクスペリエンスを念頭に置いて設計されていると述べ、「App Storeは10億人というApp Storeユーザーにアプリを安全に配信するための仕組み」だと解説。Epic Gamesに対して、「自分のことしか考えておらず、消費者や独立系開発者のことを考えていない」と苦言を呈しています。

Epic Gamesのティム・スィーニーCEOは、「Appleがプラットフォーム上の制限について反省し、WindowsやmacOSを含む世界のオープンコンピューティングプラットフォーム上で享受されている自由と権利を、10億人という世界のiOSユーザーにもたらすという歴史的な改革を始めてくれると期待しています」とコメントしています。